理想的な前進

デス・キャブ・フォー・キューティー『コーズ・アンド・キーズ』
2011年06月08日発売
ALBUM
デス・キャブ・フォー・キューティー コーズ・アンド・キーズ
『トランス~』でのブレイク、メジャー移籍、前作『ナロー~』で初の全米1位達成……と、DCFCにとって00sは発展・拡張のディケイドだった。そうした変化の数々を経て、10年代第1弾となる本7th。演奏集団としての成熟と結束を軸に、新たなソニック・ランドスケープを開拓してみせた、見事な1枚である。

「エレクトロ寄り」との前情報があったように、アレンジの主体はピアノとヴィンテージ・シンセ。そこにコーラス、エフェクト、ストリングス他、異なる質感の音を混ぜ込みながら、繊細でアトモスフェリックな空間が形成されていく。本作の影響源のひとつであるイーノの傑作『アナザー・グリーン~』を思わせるM1、M3、M6など、ギターをほとんど使わないミニマルで現代音楽的な楽曲がある一方で、絶品なギター・リフがリードするトラックが適所に配されていて、両者のバランスも完璧。「ギター・ソロ」「派手なドラムの見せ場」といった青臭いエゴが介在しない静かな場所で、ひとつのヴィジョンに向かって4人がハモることで生まれた、1+1+1+1の総和以上の何か――この時点の彼らにしか作れない、新たな傑作だ。(坂本麻里子)
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