吹きさらされた魂

マニック・ストリート・プリーチャーズ『ナショナル・トレジャーズ』
2011年10月26日発売
ALBUM
マニック・ストリート・プリーチャーズ ナショナル・トレジャーズ
マニックスの20年の歴史は、階級闘争の歴史であると同時に、アイデンティティ探しの旅であり、長らく続くモラトリアムな青春の彷徨そのものだった。アルバム毎に大仰でセンチメンタルなメロドラマ性と、冷たく鋭い攻撃性の両極を往還してきた彼らの「揺れ」は、いわば、未だ自分探しを続けているような不安定な自我のあらわれだったと言える。リッチー・エドワーズの<失踪>という中途半端なフェイドアウトによって、彼らのアイデンティティはいつまでも確立されず、宙ぶらりんになった「彼ら自身」はどこにも回収されず、寒風に吹きさらされたままだったのだ。そしてリッチーの残した詩をアルバム化した『ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ』は、そうしたアイデンティティ模索の旅に決着をつけるものだった。そうしてマニックスは未来に向かった。本作は、その足跡である。
 
朗々と響くメロディ、大仰でけれん味たっぷりの曲想、やたら壮大なアレンジ、コブシの回った泣き節たっぷりのヴォーカル……そのすべてが記憶にこびりついて離れないのは、彼らの旅が、私たちの旅でもあったからだ。(小野島大)
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