これぞ至高の境地

yanokami『遠くは近い』
2011年12月14日発売
ALBUM
yanokami 遠くは近い
矢野顕子とレイ・ハラカミのユニットの2作目。完成直前にハラカミが急逝、彼のマックからサルベージしたデータをもとに完成した“Don't Speculate”から始まる9曲。矢野のヴォーカル入りと、ハラカミによるトラックをzAkがミックスしたインスト・アルバムが同時発売。
 
矢野の自由奔放な個性と、ハラカミの繊細にして唯一無二な音色が、妥協することなくがっぷり四つに組んだのが前作なら、こっちはふたりの個性がゆるやかに溶け込み、もう少しゆったりと聴けるものになっている。どちらかといえばハラカミが一歩引いて矢野をたてているような印象もあるが、そのぶんハラカミの、全体を見渡しバランスをとるプロデュース感覚の巧みさが際だつ。これがきっと、ふたりが目指した境地だったのだろう。
 
カヴァーが多いのが目立つが、荒井由実もオフコースも坂本龍一&デイヴィッド・シルヴィアンも、完全にyanokamiの世界になっている。とりわけローリング・ストーンズの“ルビー・チューズデイ”の美しさとキュートさにはクラクラくる。これが最後だなんて思いたくない、素晴らしい作品集だ。(小野島大)
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