バンドが一皮剥けようともがき、試行錯誤を重ねる姿にとても魅力を感じる。ここ最近の音速ラインはまさにそういう時期にある。叙情的な日本語詞と哀愁漂うメロディから成る切なさの黄金率を一度壊して、「今」前を向いて生きるためのロックを追求した前作『音速の世界』、それに続く最新作『Alternative』は、その方向性により強い決意と確信をもって進んでいるようだ。震災後の作品であるということも大きい。福島県在住の藤井敬之(Vo・G)は震災後、支援プロジェクトを立ち上げ、今もなお継続的な活動を行っている。だからこそ今作は一層リアルに、ざらついた感情のままに世界と折衝していくロックのかたちを表現したアルバムになったと思う。現状を打破する欲求と焦燥感を一切隠さない雄雄しいモードで幕を開ける1曲目 “Birthday”から、続く“ピカソ師匠とダリ先輩”では骨太のベースラインが印象的な力強いロックで《いかさまだらけの世界にサヨウナラ》とただ一つの真実を希求する。困難な現実に正面から向き合った時、音速ラインはこんなにもタフに闘えるバンドだったのだ。(秦理絵)