今秋、いよいよメジャーデビューを果たすThe SALOVERS。本作はいわゆる「プレデビューアルバム」の位置づけで、新曲2曲、過去の2枚のミニアルバムから4曲が収録されている。デビューミニアルバムに入っていた代表曲“サリンジャー”は新録ヴァージョンとして生まれ変わっている。何といっても、聴きどころは2つの新曲だろう。古舘のアジア志向が炸裂した“オールド台湾”と、彼の詩情と文学性がよく表れた“曇り空”。このバンドの魅力のふたつの側面が、うまくプレゼンテーションされていると同時に、明快に「先」を標榜している。“オールド台湾”で歌われる《理想の国》台湾はいうまでもなく「ここではないどこか」の象徴だろうし、“曇り空”では《僕はまだまだやれるのさ/それはまるで自らに祈るように》と自分自身を鼓舞するような言葉が聞こえてくる。そうなると“サリンジャー”新ヴァージョンの止まらない疾走感も頼もしい。前作にあたるシングル『ディタラトゥエンティ』で高らかに「生」の叫びをあげた古舘が目指す「先」には何があるのか。その景色を、早く見たい。待ってるよ。(小川智宏)