7月にリリースされた5曲入りEP『レター・レファー』でもすでにこの変貌は存分に予感させていたが、前作『ザ・エンピリアン』から約3年半ぶりとなる今作での、覚醒かトリップかすら定かではないほどの異世界ぶりには思わず戦慄を禁じ得ない。「ギタリスト=ジョン・フルシアンテ」の面影を求めてこの世界に踏み込んだ人間を、本人曰く「プログレッシヴ・シンセ・ポップ」の異次元へと片っ端から誘うエクスペリメンタルなサウンドが凝縮された作品。生ドラムのフレーズを小節単位でカットアップしてランダムにつないだようなリズム・パターンと、エレクトロ/ヒップホップ/ドラムンベースなどのトラックを組み合わせて作り上げたその音像から伝わってくるヴァイブは至って朗らかで親和的なものだが、そこには満面の笑顔をたたえたケンタウルスやキメラを連想させる異形の美とでも言うべきスリルも同時に備わっている。安易な構築美や安定へ向かうのではなく、むしろミュージシャンとしてのアイデンティティを解体し遠心分離した果てに何が残るか自ら見定めようとするかのようなシビアな探究心が、その響きから滲んでくる。(高橋智樹)