歌の贈り物

ベンジャミン・ギバード『フォーマー・ライヴズ』
2012年10月17日発売
ALBUM
ベンジャミン・ギバード フォーマー・ライヴズ
デス・キャブ・フォー・キューティーが長期ツアーを消化したばかりのタイミングで、ベン・ギバード初の本格的なソロ・アルバムが到着した。とはいえオールタイム・クォーターバック、ポスタル・サーヴィスなど折につけ「課外個人活動」に手を伸ばしてきた人でもあり、本作の基本姿勢はバンドにマッチしないため保留のままになっていた楽曲群を整頓する……というもののようだ。

そのジャッジは大正解で、空間やムードの高まり~緻密なテクスチャリングが個性のひとつであるバンドでの音作りよりも、ストレートかつオープンなアプローチの似合う楽曲が揃っている。書かれた時期が異なることもあり、モノローグからマリアッチまで楽曲のスタイルは多彩だ。しかしメインの方向性になるのはジェイ・ファラーとのケルアック・コラボ企画(09年)で聴かせたカントリー・フォーク味、そしてビートルズを源流とする英国調のメロディ&ハーモニー・リッチな美ポップのふたつで、言い換えれば王道ということ。常に「曲」を重視してきたコンポーザー/シンガーとしてのベンの古典的な資質を思えば悪かろうはずがないし、④でエイミー・マンが清麗な歌声を添えているのも嬉しい。(坂本麻里子)
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