透き通るメロディ、極彩色の想い
黒沼英之『instant fantasy』
2013年06月19日発売
2013年06月19日発売
MINI ALBUM
昨年10月の1stアルバム『イン・ハー・クローゼット』でも、その珠玉のメロディメイカーぶりと、焼け切れそうなほどピュアな熱量に満ちた想いを綴った歌詞世界を印象づけていた新鋭・黒沼英之のメジャー・デビュー・ミニアルバム。愛する「君」との暮らしの風景の中で《君の悲しみも僕を強くする》と無敵感ばりばりに心を躍動させまくる“ふたり”。「君のダメなところと僕のを合わせてお守りにしよう」と言えたらよかった、という「もうそばにいない君」への想いと後悔をエレピの切ない響きに託した“ラヴソング”。凛としたロック・バラードのアンサンブルに乗せて《どうしようもない僕でごめんなさい》と歌い上げる“どうしようもない”。どこまでもパーソナルな視点で歌われる楽曲群がしかし、ポップ・ミュージックとしての普遍性と強さを兼ね備えているのはひとえに、日常を切り取る彼の視線の鋭さと確かさ、そして音楽の力で人間の痛みをネガポジ反転させていこうとする決意の揺るぎなさに他ならない――ということが、ストリングスの響きとともに雄大に響く“夜、月。”の歌声から伝わるはずだ。(高橋智樹)