音というやつは形を持たないながらも、確実に人間の精神に作用を及ぼす。しかし、音色の種類によって得られる心理状態は結構変わるのが面白い。歪んだエレキギターの爆音は、無敵になったかのような熱い昂ぶりを呼び起こす。パイプオルガンの音を聴くとコテコテの仏教徒であったとしても、どういうわけか聖なる気持ちになる。そして、音圧の効いたシンセサイザーを大音量で浴びた時、我々が辿り着くのは圧倒的な多幸感だ。美しい朝日を見た時のようなあの光溢れる感覚は、他の楽器ではまず得られない。そういうシンセの音色を活かし、清々しい胸の高鳴りを生むダンスミュージックを届けてくれるのがCTS。彼らはCircle（Vo）、Triangle（Syn）、Square（DJ）による覆面ユニットだ。メジャー1stとなる本作は、彼らがこれまでにリリースした曲を凝縮し、新曲も加えたベスト盤的1枚。iTunesダンスチャート1位になった5曲は勿論、他の曲も最高にワクワク出来る。フロアユースであると同時に極上の歌モノでもある彼らの音楽は、クラブミュージックファン以外も魅了し得る洗練されたポップスだ。（田中大）