B-DASH 「一生パンクロック」――原点回帰の傑作『EXPLOSION』完成!
B-DASHが、約3年ぶりのアルバム『EXPLOSION』を完成させた。97年結成、メロコアや青春パンク、ミクスチャーロックなど、様々なジャンルの隆盛を横目に、飄々と活動を続けているように見えた彼ら。しかし、この『EXPLOSION』は、そんな彼らが、大きな壁にぶつかった末に生み出したアルバムである。初期から貫いている、意味のない歌詞「適当めちゃくちゃ語」に、ジャンプを誘うパンクロックや、ヘッドバンギングせずにはいられないへヴィロック。B-DASH節以外の何物でもない楽曲が並んだ今作に至るまでの秘話を、鉄壁のメンバーである3人に訊いた。
僕自身が時代に追いつかなければいけないっていう迷路に迷い込んだんですよね
――約3年ぶりのアルバムですが、なぜこれくらい時間が空いたんですか? ライヴはコンスタントにやっていたのに。
GONGON(Vo・G) 前作の『E'』を出して、なんとなく、時代の流れに沿っていないんじゃないかと思ったんです。自分の感覚が10年前から止まっているんじゃないかなって。このままじゃまずいかもしれない、時代の感覚を取り入れようと思っていろいろ聴いてみたんですけど、自分には取り込めないと思ったので、とにかく何か新しいものを作ろうと、1日8小節くらいずつ作ったんですよ。流れを無視して、今日は8小節、次の日はその日の気分で8小節って作っていったら、毎日違う曲調になって。どこがサビかわからない、Aメロ、Bメロ Cメロ、Dメロ、Eメロみたいな、同じフレーズの繰り返しがないような曲が14曲もできちゃったんです。自分としてもそれがいいのか悪いのかよくわからなくて、でも変革を起こさないといけないのかなって思ってはいて。そんな時にメンバーでミーティングをして、本当に自分たちがこれをやりたいのかどうか?ってなったら、僕も疑問符が浮かんで。ライヴで再現する時も難しいんですよ。それで楽しいのかな?って話になって。その時に、元々パンクロックっていうものは簡単にできるもので、それが原点で、それが楽しいんじゃないかっていう話になって、僕はハッと目が覚めて。でき上がっていた曲を全部ボツにして、自分がライヴでやりたい曲、バンドで演奏したくなる曲、となると簡単なものがいいやと。それで最初から作り直して、3年かかりました。
――なるほど。時代の流れを気にして立ち止まったところが意外です。今までのB-DASHはマイペースというか、好きなことをやって突き進めればそれでいいというスタンスに見えていたので。
GONGON 『E'』は7年ぶりのアルバムっていうところもあったし、自分の中では最高傑作だったんですよ。だから期待が大きくて、発売されたらTwitterとかで拡散されて、流行るんじゃないかと思っていたんですね。でもCDを出したことによる手応えが、僕的にはほぼゼロだったんです。それが原因ですね。ちょっとでもいいんですけど、広がった感覚が欲しかったんですよ。今までは、自分が好きなようにやればいいんだと思っていたんですけど、好きなようにやった結果、広がらない感じがしたので、僕自身が時代に追いつかなければいけないっていう迷路に迷い込んだんですよね。でも最終的には、好きなことやろうよって、元に戻ったっていう。結局今作は『E'』の進化形になったんで。
――今まで時代性などを考えて立ち止まったことってありましたか?
GONGON ないと思いますね。
――そんなGONGONさんを見て、ARASEさんはどう思っていたんですか?
ARASE(Dr・Cho) その時期、コンスタントにデモはあげていたから、正直苦しんでいるようにはあんまり思わなかったです。ただ1日8小節を、毎日課してやっているんだとしたら、生みの苦しみなんだろうなと。それくらいにしか思わなかったので、今の話を聞いて、ああ、いろいろ大変な状態だったんだなあと。
――でも結果的には、変革も起きていますよね。レーベルもアニメ系やボカロ系のリリースが中心のEXIT TUNESに移籍して、ジャケやアー写は絵師のU井T吾さんが手掛け、ボカロヴァージョンの楽曲も制作されるという。ロックバンドが、こういうところに踏み込むことは勇気がいるとも思うのですが。
GONGON そうですね。今までと、まったく同じことを守り続けるのも大事だとは思うんですけど、やったことがないことに挑戦するのも、新鮮でいいんじゃないかと。『E'』を出したあとの、何か変革を起こさないとっていう気持ちは変わっていないので、僕は結構嬉しいですね。今までにないジャケットになったんで。
――すごく失礼な言い方ですけど……大人になりましたね。
GONGON アラフォーですから(笑)。白髪が生えるレベルですからね。
――TANAMANさんのトレードマークのヒゲにも白髪がちらほらと(笑)。
TANAMAN(B・Cho)(笑)。
――97年結成なので、もう20周年が見えていますし。
GONGON 時間の流れって不思議だなと思ったんですけど、僕らが結成15年の頃に、SEBASTIAN Xと一緒にライヴをやったんですよ。彼らは15年も続くなんてすごい!って感銘を受けてくれていて、どんな15年を積み重ねてきて、GONGONさんはどんな境地にいるのか知りたいって言われたんです。でも、僕はまさにここからファーストアルバムを出したいなっていう気持ちでいたので、15年って言葉に出すと重いけど、全然何も変わらないんだなって。気持ちとしては、15年積み重ねてきたような気がしないんですよね。でも作品ができると、やっていることは変わらないんですけど、やっぱり15年ものだなって感じはしますけどね。
久しぶりにB-DASHのCDを買う人にとっても、「B-DASHじゃん、これこれ!」って感じてもらえる
――TANAMANさんは、B-DASHを続けてきたことに対して、どう思います?
TANAMAN あんまりそういうことは考えないです(笑)。15年後どうなるかとか、考えたことはないですよね。ね?
ARASE あとで数えて、っていうことが多いですよね。
――今までずーっと、ファーストアルバムを出している気持ちですか?
GONGON 『E'』からですね。ぶっちゃけ、今が何枚目かもよくわかっていなかったんですよね。レコーディング中に「何枚目なの?」ってなった時に誰もわからなくて。
ARASE で、何枚目なんですか?(笑)。
GONGON 俺が計算したところによると、「7」なんじゃないかっていう噂が。
――噂(笑)。
GONGON 出だしでつまずいているんですよ。最初がマキシ(『ENDLESS CIRCLE』)で、次がミニ(『FREEDOM』)だったんですよね。次の『○‐マル-』でファーストアルバムって言いたかったんですけど、変な作品で、ファーストっていう感じじゃなかったんですよね。次に『ぽ』が出て、それで何枚目かすらわからなくなったっていう。
――面白い形態の作品が続いた結果ですね。
GONGON 今思うと、当時から何枚目なのか、わかっていなかったですね。ふふふふふ。
――最初から言われている「広がり」って、何枚売れたかっていう数字の問題だけではないですよね?
GONGON そういうことだけじゃなく、実感です。『EXPLOSION』から入ったファンが確実にいることを僕が把握して、その人たちにとってはこれがファーストアルバム的な意味を持つじゃないですか。その人たちにとっては、次がセカンドになると思うので。でも今回、ファンの人は喜んでくれるんじゃないかと思っていますね。久しぶりにB-DASHのCDを買う人にとっても、「B-DASHじゃん、これこれ!」って感じてもらえるアルバムになった気がしています。
――歌詞の適当めちゃくちゃ語も健在ですしね(笑)。
GONGON そうなんですよ。でも、実は全部日本語になっているんですよね。
――単語を切り貼りしたというよりは、文章が切り貼りされていますよね。
GONGON これは、毎日の生活の中で1曲できたら、そのあとは日々の中でふっと思った時に歌詞を携帯にメモして、できたら次っていうふうに作っていたんですね。
――だから《製氷機の『洗浄ボタン』を見つけたんだ》(“GET POW”)みたいな、日々の発見が出てきてしまうと(笑)。
GONGON そうそう(笑)。基本、歌詞は何でもいいんですよ。伝えたいこととか、表現したいことはないんですね。
――そこも一貫していますよね。
GONGON そうですね。だからめちゃくちゃ語でいいんですけど、自分で“ちょ”みたいなめちゃくちゃ語には飽きたんですよね。言葉になっていたほうが面白いかなって。
――だから、前よりも引っ掛かる歌詞が多いんですよね。“ALMA”の《プッチン プッチン スキャット》とか。「プッチンプリン」のCMにスキャットマン・ジョンが出ていたことを知っている世代にしかわからないかもしれないけれど(笑)。
GONGON ははははは! しかも、たまたまこれを作っている時に、また「プッチンプリン」のCMにスキャットマン・ジョンの曲が使われたんですよね。今は終わっていますけど。こういうほうが、意味のないめちゃくちゃ語よりは、自分としては楽しいですね。
――バンドはやり続けたいけれど、メッセージを届けたいわけではないと。
GONGON でも、たまたまメッセージが入っているように聞こえる歌詞もありますよ。“GIVE UP”のサビって、愛しているとは言っていないんですけど、要は相手に愛情を持っているっていうことなんだなって、あとで思ったんですね。
――《笑ってあげたい 君のため/僕がそばにいるから》ですもんね。
GONGON このアルバムの中でこの曲が一番、優しい思いが入っていると思います。自分でちょっと感じたのが、僕結婚したんですけど、カミさんとケンカしてひどいことを言っちゃったなと思った時に、たまたまこの曲をチェックしていて、《僕がそばにいるから》とか歌われると、この人味方なんだ!って思えるというか。一瞬の励ましにはなりますよね。
――自分の曲に励まされるっていう?
GONGON 言葉にはそういう力があるんでしょうね。
――そう気づいた今、もしかして次にメッセージや意味のある歌詞が出てくるかもしれないですね。
GONGON かもしれないですね。