矢沢洋子が新バンド結成! ガールズバンドPIGGY BANKSって何者?

PIGGY BANKS

並み居るロック豪傑も唸らせる女性ロックヴォーカリスト:yokoこと矢沢洋子。ソロアーティストとしてのみならずトーキョーキラーなどでディープなプレイを聴かせるギタリスト:keme。そして、激情型ベースサウンドで圧巻のグルーヴを描き出すベーシスト:akko(ex.GO!GO!7188)――そんな3人が描き出す、この上なくワイルドで楽しいガールズロックの極致=PIGGY BANKSの真価が、4月6日リリースの1stアルバム『タイムスリラー』には高密度で詰まっている。一度は地元・鹿児島に戻っていたakkoをはじめ、まったく別の道を歩んでいた3人は、いかにして2014年にバンドを結成し、ロックンロールも歌謡もバラードも衝動の赴くまま快活に咲き誇らせるに至ったのか? その「ピギバンマジック」の核心について、yokoとakkoにじっくりと語ってもらった。

インタヴュー=高橋智樹

1回目のライヴが楽しかったので、「次も」「じゃあ次も」ってなって、「じゃあ曲を」「アルバム出したいよね」ってなっていった(yoko)

――yokoさんはこれまでもTHE PLASMARSとのバンド編成での活動も行っていますけども。今回、新たにPIGGY BANKSを立ち上げたきっかけは?

yoko THE PLASMARSの時も、リリースもありましたし、ライヴもやっていたんですけど、スタジオミュージシャンのみんなとやっていたものだったので。「バンドをやりたいな」っていう感情が大きくなってくる時期が、2年ちょっと前ぐらいからあって。その頃に、ギターのkemeちゃんが「私、ギター弾くよ」って声をかけてくれて、「え、ほんと!」っていう感じだったんですよ。その時に、akkoちゃんがまた別のバンドで東京に来てて、私も観に行って――もともと知り合いではあったので、「お久しぶりです!」みたいな感じで声をかけて、で……「ベース弾いてくれませんか?」みたいな(笑)。

――めちゃめちゃ直球ですね(笑)。

yoko そのあとにひとつ、イベントの予定が決まっていて、「今回はPLASMARSじゃなくて、女だけのバンドでやってみたいなあ」っていう、ほんと思いつきではあったんですけど。せっかくギターもkemeちゃんがそう言ってくれてるし、「せっかくだからakkoちゃんに声かけてみよう。声かけるだけならタダだ!」みたいな感じで。

akko (笑)。

yoko だから最初は、バンドでずーっと動いていくっていうよりも、パーティーバンドっていうか、「その日限り」みたいな感じで始めたのがスタートですね。

――でも、kemeさんから声をかけてくれたっていうことは、「バンドやりたい!」っていうオーラはバリバリに出てたんでしょうね。

yoko そうですね(笑)。akkoちゃんが東京にいた時には、お酒の席とかでも何度もお会いしてるんですけど、その時は私自身、そこまで「バンドやりたい!」っていう感情はなかったと思うんですよね。

akko で、久しぶりに会って、ぶっ込まれた!みたいな感じだったので(笑)。でも、むしろ私もすごく、バンドしたいオーラがあった時だったので。「いいよ!」って。

――え、即決ですか?

yoko わりと即決だったと思います。

akko お互いに、いいタイミングだったね、バンドしたい気持ちがね。

――音楽面で「こういうバンドにしよう」的なイメージはあったんですか?

yoko いや、当初は――もちろんオリジナル曲もないし、「やろう!」って決めてから2ヶ月後にはライヴ、みたいな感じだったので。単純に、東京と鹿児島で距離もあったので、そんなにスタジオに入れるわけでもなかったので。とりあえずPLASMARSの時の曲とか、カヴァーを基本的にやるっていうことで。名前も「PIGGY BANKS」ってつけてなかったぐらいなので。どういうコンセプトでとか、そういうことはあとから考えていった感じで。最初の年はライヴ自体も3本ぐらいしかなかったし……ただ、1回目のパーティーバンドとしてのライヴが楽しかったので、「次も」「じゃあ次も」ってなって、「じゃあ曲を」「アルバム出したいよね」ってなっていって。去年はアルバムを出すっていう目標をひとつ持ちながら、いろいろライヴをしていった感じですね。

――ただ逆に言えば、2ヶ月後にライヴが決まってて「とにかく一緒にバンドやりたい!」っていうだけだったら、もっと頻繁にスタジオに入れる人に声かけようとか、現実的な側面で選ぶっていう選択肢もあったと思うんですよ。「akkoさんと一緒にやりたいけど、鹿児島はちょっと遠いなあ」っていう判断もあり得るだろうし。

yoko ああー。でも、距離は確かに今もあるんですけど、「遠いから、じゃあ別の誰かで」っていうことはなくて。kemeちゃんも私も「絶対akkoちゃんじゃなきゃ嫌だもんね!」みたいな感じで。月に何度も東京に来てくれてるので、申し訳ないなあと思いつつ。

akko いやいや、とんでもねっす。ありがとうございます(笑)。

――yokoさんもakkoさんと一緒にやりたかったし。で、akkoさんも、そこまで言ってくれたことを意気に感じたわけですね。

akko いや、めちゃめちゃ嬉しかったですね。鹿児島に帰ってから、しばらく何もしてなくて。「でも、やっぱり私バンドやりたい」と思って。最初は「鹿児島でメンバー見つけて……」とも思ったんですけど、それもちょっと違うなと思って。でも、また東京で、しかも通いながらやるって、「できるのかな?」っていうのもあったし。とりあえずみんなに、「またバンドでベース弾きたいんで、何かあったら声かけてください!」って先輩に電話したりとかして……でも、先輩がだいたいベーシストだから、言われたほうもなんか微妙みたいな(笑)。

yoko (笑)。

akko でもとりあえず、そのオーラを出そうと思って。東京にいたらまだ会って話もできるけど、鹿児島にいるから、とにかく言いまくろう!って。そしたら、たまたまkemeが鹿児島にツアーで来て、「バンドやりたいんだよね」って言ったら、kemeがもう一個自分でやってるトーキョーキラーっていうバンドで「じゃあ私、頑張って呼びます!」って言ってくれて、「ああ、すごい嬉しい!」と思って。で、東京に通い始めて、2回目ぐらいのライヴの時に、今度はyokoちゃんが声かけてくれて。そうやって、わざわざこっちに呼んでまで一緒にやりたいって言ってもらえた――必要としてもらえたっていうことが、ものすごく嬉しかったので。「これは行くしかない!」と思って。

yoko でもやっぱり、ピギバン始めてから、akkoちゃんと一緒にいる時間も増えていってる中で――先輩たちがakkoちゃんを見て「ああakko、帰ってきたんだ!」ってすごく喜んでて。やっぱり、akkoちゃんはベースを弾いてないとダメなんだなと(笑)。

akko そうやって人に必要としてもらえるのが音楽しかない、っていうのに改めて気づいて……何もしてなかった中で、「特にいいとこねえな自分」みたいな(笑)。そんなに料理が上手いわけでもなく、掃除が得意なわけでもなく、「なんかいまいちパッとしないな私」みたいなことはすごく思ってたので。でも、「やりたい」と思っても、実際に「できる」かどうかは別だったりするじゃないですか。それが……ねえ、縁があって、できたので、すごく嬉しいです。

この3人が集まって何ができるか?っていうのは――悩んでもいるけど、それが楽しいんですよね。「私、バンドやってる!」みたいな(笑)(akko)

――yokoさんから見て、「akkoさんと一緒にやりたい!」と思った最大のポイントは?

yoko ……改めて訊かれると、なんでだろう?(笑)。とりあえずPIGGY BANKSを始める時に「女性がいいな」っていうのがあって。もちろん、他のベーシストの女性の先輩もたくさんいるんですけど、そこはでも直感と縁と――私が結構人見知りだったりするので、まったく縁がない人とか知らない人は抵抗があったし。逆に、スタッフさんに訊いたりして、メンバーを「集めてもらう」みたいなのだと、それってPLASMARSと変わらないじゃんっていうのがあって。とにかく、PIGGY BANKSはバンドだから、っていうのを特にこだわっていたので。そういうところで言うと、akkoちゃんは大先輩だし、自分も憧れてるところもあったので。普通、憧れてる相手ってなかなかバンドに誘ったりしないのかもしれないですけど――。

akko ふふふふ。

yoko そこはウワッと声をかけさせてもらって。でもほんとに、さっきも言ったように、タイミングだったりとか、ご縁だったりとか、そういうことなんだなあと思いましたね。

――そうやって「自分でゼロからバンドを作る」っていう形で、yokoさんの初期衝動的なものが出てたのかもしれないですね。

yoko 普通のテンションだったら「いやあ、でも結構無理でしょ」みたいな感じで諦めてたことが、ピギバンの場合はもう、最初からやる気に燃えていたというか。そのためだったら、わりと図々しいことも、不可能だと思えることも、どんどんやらなきゃいけない、みたいな感じではあったと思いますね。

――だから、ヴォーカルがいて、ギターがいて、ベースがいて、ドラムがいて、っていうだけの問題じゃないと思うんですよね。運命共同体としてのバンドっていうロマンに、自分の全部を注ぎ込んでみたい、そこから生まれるものを聴いてみたい、っていうものがあったんだろうなと。で、それはyokoさんだけじゃなくて、akkoさんにもあったんだろうなと思うし。

akko そうですね。本当にゼロからやろうっていう感じだったので、まっさらなところから。自分としてもそうだし、バンドとしてもそうだし。この3人が集まって何ができるか?っていうのは――悩んでもいるけど、それが楽しいんですよね。「私、バンドやってる!」みたいな(笑)。

――その充実感が、もう音符のひとつひとつから滲み出てますよね、このアルバムは。

akko 嬉しい(笑)。

yoko 今回、初めてのことが多くて――歌は今までも歌ってきてはいるんですけど、自分たちでゼロから作ったり、アイデアを出したりするのが、恥ずかしながら初めてだったりしたので。全部の過程とか作業が新鮮だったのもあるけど、楽しかったですね。だから、1曲1曲、あえて遊んでみたものもあるし、もちろん真面目にちゃんとやった部分もあるんですけど。ピギバンがまた次の作品とか、いろいろ新しいところでライヴをしていく中での、ちゃんとしたきっかけになる作品が――広がるための作品ができたなと思いますね。

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