インタヴュー

──でも、あれだけの熱狂を前にして、3人揃ってパンクロックを演奏したわけで。「やっぱりここには何かがある。これなんだ!」っていうものはやっぱり掴めなかった?

「まったく逆ですね。もう最後の曲では、アンプ蹴り倒しに行こうかと思いましたもん。『AIR JAM 2011』のDVDを見てもらうと、アンプのほうに向かってる瞬間ありますよ。みっともないからやめようと思って蹴らなかっただけで、それくらい苛々してましたね。リアルじゃない自分が嫌だったのかなあ?」

──たとえば「日本のために俺たちは集まった」っていう言葉には、すごく感動したのと同時に、すごくリアルだと思ったんですよ。もちろんそれをポジティヴな言葉として受け取るんだけど、もしかしてKen Yokoyamaのエクスキューズでもあるのかなと思って。今こういう状況だから、俺はここに立ってるんだっていう、そういう陰の部分が、あの言葉にはあると思ったんだけど、それは違う?

「両方あります。あの言葉自体が美化されてるけれども、ポジティヴな部分と自分に対するエクスキューズの両方ありますね。だから2011では、そうやって大袈裟なことを言っちゃったけど、2012はもっと自分のために無邪気に楽しんでもいいのかなあと思って、素直にステージ上で言えたんですよ」

──でも今の話を聞くと、完全に引き裂かれているよね。「やって当然でしょう」と思う自分と、「なんだこれ?」って思う自分とに。

「はい、そうなんです」

──それが横浜のステージ降りた瞬間のあの表情からもわかるよね。

「うん。だからあれを最初のシーンに持ってきて『これ、大丈夫かな?』と俺は思いましたもん。あれだけの人が熱狂してくれた、その裏で黙っとくべきなのに、こんなシーンを使っていいの?って。でも監督はわかっていたと思う。それまでに築いてきた関係、交わしてきた会話で僕がどんな人間かわかっているし、どんな気持ちでその日に向かっているっていうのも、監督自身がわかっていたから。でもいいとこを撮ってくれたなと、今は思います」

──で、そういう震災から『AIR JAM』、ハイスタの一連の出来事も含めて、このドキュメンタリーは進んでいくんだけど、最後に、今までの流れを全部ひっくるめた上で、今、横山健は何を考えてステージに立っているのかということをしっかり語ってますよね。

「(笑)はい」

──要するに、2011年以降の2年間を経た上で、自分がステージに立ってるのは結果を発信するためではなく、問題提起なんだと。この言葉は、今のKen Yokoyamaが出した結論として、すごく大きいと思うんだよね。

「そうですねえ。震災があって、復興の問題、原発の問題でいろんな人がいろんな発信をするじゃないですか。で、すごく誤解や分断を生んでいるけれども、それって剣を先っちょだけ突き合わせてるからだと思うんですよね。言葉尻だけを捉えて。で、僕もね、そういうことできなくもないけれども、ライヴっていう場所を考えると、今日ここから何が生まれるかっていうことのほうが気持ちいいんですよね。お客さんに対してこれこれこういうことだから、おまえらもこうするべきだって言うのではなく、たとえば国旗なり、あと原発の話なり、そういうものを持ってきて、『さあ、それで君らはどうするか、考えることがあったら教えてくれ、それで俺も変わるから、新しいものを作っていこう』っていうのがライヴだと思うんです。それはもうライヴしていく中で徐々に、理屈じゃなくそう思ってますね」

──それは3・11以降、いろんな意見の相違とか衝突があり、何が是か非か、みたいなことがすごく表面化して、そんな濃縮された日々の中で辿り着いたひとつの結論っていうことですよね。

「そうです、ほんとに3・11以降ですよね。どこか……自分もキャッチしたい気持ちがあるんですよね。お客さんからね? 自分の作り出したムードでお客さんが雰囲気を作ってくれる、その雰囲気を自分がキャッチして次の自分の楽曲や発信法につなげていきたいんです。だから僕もなんていうのかな、生身の人間としては……逆にマイルドになってきてるのかもしれないですよね。ライヴっていうのは曲を演奏してお客さんを乗せて、照明ピカーッとやって終わるものじゃないんですよ。もっといろんなものを、お客さんとキャッチボールできる場所。そういう捉え方に変わってきてますね」

──という手応えがあり、いろんな意味を読み取れるドキュメンタリーですよね、これは。

「うん」

──美味しかったです(笑)。

「ああ、ありがとうございます。その言葉は監督が喜ぶと思います」

──「俺、横山健のことを全然知らなかったんだ」っていう。

「そうっすかあ? へえ~?」

──ドキュメンタリー1本で、知ったような気になるなよって言われるかもしれないけど、でもそう思わせたっていうことは作品としてすごいってことだよね。

「そうですね、うん」

──あらためて自分で観てどう?

「いや、全部自分のことすぎてわかんないんですよ(笑)。自分で観たら『こん時の髪形ダサいなあ』とか、そんくらいなもんですよ、『なんで俺、こん時こんなギャグやっちゃったんだろう。寒いわぁ』とか。でもインタヴュー部分はちゃんと自分の言葉で話せたなあと思います。で、話の一番冒頭に戻っちゃうけど、前半と後半でまったく質感が違うものを奇跡的に映像で収めることができたから。そういった部分では監督に感謝してるし、そこは本当に嬉しいですね」

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