日常に入り込んだ、みんなに共感してもらえるようなミニアルバムになった(船津)
──“Hallelujah”はMVも公開されていますが、実際に福岡まで行って撮影したそうで。
工藤 前作、『10億ミリのディスタンス』の10億ミリって福岡と東京の距離なんですよ。昔の福岡にいる自分たちと今の東京にいる自分たち、その架け橋にできたらという意味合いも大きかったんですけど、今回の“Hallelujah”は《天神駅前》というワードが出てくるということで、その空気感を撮りたかったんですね。やっぱ合成とかだと出せないものってあるじゃないですか。そういうのも届けたくて。「見放題2017」の次の日が撮影だったんですけど、大阪滞在時間は5時間ぐらいで移動して、天神駅前へ行って撮ってきました。
──それほど今作に懸けているということですね。歌詞について、手応えはいかがですか?
船津 僕としては1作目や2作目になかった、日常に入り込んだ、みんなに共感してもらえるようなミニアルバムになってるかなと。場所や聴く人を問わずにたくさんの人に届くんじゃないかなと思ってます。
──1曲目の“アンダードッグ”で《大ヒットの“ラブソング”》に対して刺激的な思いが綴られている中で、今回の6曲は、形は様々ですがどれも恋や愛の気持ちを含んでいて。自分たちの曲というのはどこが違うと思います?
船津 単純な「好きだよ」とか「愛してる」を歌いたいんじゃなくて、「こういうことがあってあなたがいてくれるから俺らは前に進めます」とか、意味のある恋愛、意味のある愛情表現、そういうものを掘り下げていったら、ただの「好きだよ」にはならないんじゃないかなと思うんです。
──「好きだよ」の前後というか、虚無感や喪失感みたいなものもちゃんと書いてるじゃないですか。それが日常のリアルだし、聴く人に届く要因じゃないかと感じます。
船津 そうですね。まあ抜本的に物語として書いてるというのがあると思うんですけど。その中で歌としてリアリティを出したいなという。
──あとみんなが共感するという意味では、“Hallelujah”の《天神駅前》って、場所を限定しちゃうと一見共感につながらなそうですよね。
船津 なぜそのワードを出したかというと、このバンドを組む前にずっと歌ってた場所なんですよ。個人的にすごく大切な土地なんです。音楽が始まった土地。リスナーにそれが伝わればいいなと思って。
──そこが素晴らしいと思うんですよ。天神駅に行ったことがない人でも、地元や大切な場所というのはあるはずで、だからこそ伝わるんじゃないかって。
船津 はい。ただ具体的に書くというのはメリットもデメリットもあると思うので、あまりコアに掘り下げすぎないようにしたくて。そこから先は考えてほしい部分もあって。せめて場所くらいはということで書きましたけど。
全体的に肩の力を抜いて、遊んで作れた(川崎)
──川崎さんは改めて今回の制作はいかがでしたか?
川崎 歌詞やメロディのことはわからないですけど、いろいろやれましたし、全体的に肩の力を抜いて、遊んで作れたような気はしますね。気持ちよく作れたなって。
脇屋 それはありますね。今までは「ちゃんとしたのを作らなきゃ」ってよくわからないプレッシャーがあったんです。でもなんか吹っ切れたというか。「好きなことをやっちゃおう!」みたいな、みんなそうだと思うんですけど一番自分を出せて、それがうまくまとまったなと。
川崎 前作はA面的な曲を投げまくってたんです。投げ狂ってたんです(笑)。“幻影少女”ができるまでに豪速球を投げまくってたんですけど、最終的にカーブを投げたらそれだったみたいな。「そうそう、それだ!」って、スポッとストライクが入った感じで。そういう意味で“Hallelujah”は流れもタイミングもよかったのかなと思います。うん、改めて、やっぱり作ってて楽しかったですね。スタジオがいつもと違ったのもあるし、お互いに「こう弾いたら?」とかLINEをしまくったりしたし。
脇屋 けっこう突いてくるんですよ。アレンジやギターができて送ったら、返ってくる返事がすごい的を得ていて。よっぴーの赤ペンが入ることがけっこうありました(笑)。
──結成から約5年じゃないですか。そういう意味でバンドのムードがいい方向へ向かっていたりします?
川崎 作り方も変わったしね。
脇屋 だんだんまとまってきたというか。1作目で役割分担が見えて、2作目でだいたいこうだなってなったのが、今回でまとまったなと。
船津 音楽って僕らをつなぐものではあるんですけど、基本は人対人で。スタジオで出音が悪いなと思ったら「昨日飲み過ぎた」と言ってきたり(笑)。
工藤 最近多いよね。
川崎 え、俺の話?(笑)
船津 そういう部分までわかるようになってきて──。
川崎 この間だけでしょ?
工藤 いや多い気がするんだけど(笑)。
船津 ちょっと! 喋ってんだから(笑)。そこまで気にし合える4人なので、今の感じで、「おい大丈夫か?」みたいなのをやり合いながら長くやっていけるんじゃないかなと。今回のツアーファイナルで渋谷クラブクアトロに挑戦させてもらうんですよ。前回WWWを埋められたときに、たぶん4人とも燃え尽きちゃった瞬間があるかと思うんですね。でも「これじゃいかんばい」と思って。僕はこのバンド、まだまだそのとき以上のものを掴めるんじゃないかと思うんです。クアトロを成功させて、その次のステージも。ひとつの作品を作ることに対して肩の力が抜けたところもわかりますし、でもギラついたところもありますし。会場の大きさというより、やっぱりみんなが知ってるバンドになれればなと思います。
川崎 まあ僕らは各駅停車のバンドなんで。急行もたまには乗りたくなるんですけどねえ。
脇屋 比喩が多いな今日(笑)。
川崎 小田原行くのに新宿から各停に乗るようなもんで。
工藤 それ小田急線限定じゃん(笑)。
川崎 まだ下北くらいかな。
脇屋 全然序盤やん!
川崎 まだまだ長い長い(笑)。でも本当に地道に、一歩ずつって感じだと思うので。
船津 そうだね。何回も何回も心がベコベコになりながら進んできたバンドなので、けっこう強いと思います。だからクアトロも全然怖くないなって。
工藤 常にチャレンジしてる感はありますよね。クアトロも背伸びして決めた部分ですけど、そこへ行ったらまた違う景色が見えると思うし。ちゃんと自分たちの足で登っていきたいと思いますね。