《VAMPSは、2017年12月をもって活動を休止します。理由は、活動にオーバーヒートが生じ、冷却期間が必要だと感じたためです》――VAMPSオフィシャルサイトに掲載されたアナウンスに、僕は大きな驚きと衝撃を受けた。が、それは「あまりにも突然の発表だったから」だけではない。活動休止発表の1ヶ月前、アルバム『UNDERWORLD』を携えて回ったツアーのライブDVD/Blu-ray作品『VAMPS LIVE 2017 UNDERWORLD』についてのインタビューで話を訊いたHYDEとK.A.Zは、確かに「その先」へ向けた意欲とビジョンを語ってくれていたからだ。しかし、以下のふたりの発言は同時に、「オーバーヒート」と形容されたこの1年間の過酷な闘いぶりと、彼ら自身をそんなハードワークへと突き動かした原動力をもリアルに物語っていると思う。オフィシャルサイトの《平熱にもどり、再開の目処がたったら最恐に復活したいと思っていますので、その際は応援よろしくお願いします》という言葉を胸に、今はただ、VAMPSのさらなる快進撃の時を待つこととしたい。
インタビュー=高橋智樹 撮影=山川哲矢
アメリカツアーでは日本で起こらないようなことが当たり前に起こる(K.A.Z)
――去年(2016年)はフェス出演3本を除けば、基本的には国内外のツアーに明け暮れた1年だったわけですけども。今年は4月にアルバム『UNDERWORLD』をリリースして以降、アメリカツアーの後でそのまま国内ツアーに突入、しかもツアーの公演とフェス/イベントのスケジュールが入り混じった、かなりカオスな1年でしたよね。VAMPSくらいのキャリアと規模感のアーティストになると、ツアー期間とイベント期間でスケジュールを分けるのが普通のように思うんですが?
HYDE いや、フェスはフェスで全然違う感覚なんで。ずっとツアーが続くよりも、そういうのが入ったほうが刺激的だし。普段は自分たちのファンに囲まれてるけれども、そういうグレーゾーンの人がたくさんいるようなところでやるのも、自分たちのためになるというか。その後のツアーにも活かせるというか。
K.A.Z 大変な部分もあるんですけど、たとえばワンマンでやる時とは違う、いろんなバンドのファンが来てて、その前でやるっていうのは、逆に新鮮味がありますよね。観たことない人に観てもらういい機会だし。もちろん、それで好きになってくれて、次からライブに来てくれる人もいるわけであって。
――この秋にもアメリカツアーを回ったばかりですが、DANZIG、DEAFHEAVENと行うはずだった初日公演がいきなりキャンセルになるという。
HYDE 結構なドタバタでしたよね(笑)。「どうなんのかなあ?」って。挙げ句に4日連続になって。
――9月22日・24日・25日・26日と西海岸を回って、その次が28日にシアトルの予定だったところが、22日のキャンセル分が27日に急遽開催されることになりました。
HYDE しかも、2日間かけて移動するはずだったのが、1日でやらないといけなくなって……何時間だっけ? 4時間ぐらい遅刻したよね?
スタッフ 3時間遅れでしたね。
HYDE 「3時間遅刻して、これ定刻に始まるのか?」と思ったら……始まったね(笑)。
――しかもその後、中南米を回っている時、10月5日のメキシコ公演が、地震のために国からストップをかけられるという。
K.A.Z 地震があったのはメキシコの南の方で、自分たちがいたのはもうちょっと北の方だったんですけど。ただ、結果的に1本キャンセルになって。楽しみにしてくれてた人もいたし、すごい残念だったんですけど……でも、もうトラブルとかは常に起こるっていう感じなので。ここ数回、アメリカツアーをやってて、日本では起こらないようなことが当たり前に起こったりするから。そこは慣れてきますね。
――去年の11月にもアメリカを回ってますし、この1年足らずの間に3回アメリカを回るって、傍目にはめちゃめちゃハードなスケジュールに映るんですけども。そのハードさも含めて楽しめている感じですか?
HYDE そうですね。楽しめるというか――2017年の1年間っていうふうに考えると、この1年のために11月のツアーがあったし。今年2回アメリカを回るのはそんなに多くない、むしろ現地のバンドからすると少ないくらいだし。それを日本人がやるわけだから、これでもまだ少ないとは思うけどね。
うちらも海外バンドのようなタフさを身につけていかないといけない(K.A.Z)
――この1年って、VAMPSにとっていろんな境界線を超えてきた時間だったと思うんですよね。日本と海外――特にアメリカですよね――の境界線もそうだし、ホーム:ワンマンとアウェイ:フェスの境界線もそうだし。そういう枠組みに関係なく、VAMPSがより強靭な訴求力を備えていくために重要な1年間だったような気がするんですけど。
K.A.Z でも考え方によっては、海外のバンドって――ツアーをやるとなったら、アメリカでもツアーを回って、ヨーロッパでも回って、日本にも来たり、いろんなところに行くじゃないですか。だから、ツアーの期間とか、もっと長く取ってたりするし。でも、日本のバンドって、日本だけを回ってますよね。そう考えると、むしろ日本のバンドの方が異質かなと思うんですよ。
――確かに、海外のバンドは1枚アルバムを出したら、そのワールドツアーで普通に2〜3年かかったりしますからね。
K.A.Z そうですね。だから、外に出ようとするバンドがそれだけ少ないのかなと思うし。たとえば、海外のバンドが普通に来月日本に来るよとか、ジャパンツアーを回ってからまた次の地域に行ってとか……やっぱり、タフさがあると思うんですよね。うちらもそういうタフさを身につけていかないといけないと思うし。音楽をやる上で、どこの人に聴いてもらいたいっていうふうに限定はしてないし。世界のいろんなところで聴いてもらって、ワールドツアーでどんどんのし上がっていって頂点を獲るバンドもいるし。それがあるべき形なのかなって。