never young beach、これまでのイメージを一新する4thアルバム『STORY』完成。音への取り組みの変化、言葉への新しいこだわりを訊いた

今の世の中、運命を掴み取ろうって言ってる人が多いなって思って。別に掴み取らなくてもいいし、なるようになるし、その中でどう楽しく生きるかっていうのも大事


――そういう精神性、文化の変化に安部くんの中でシンクロする部分もあるってこと?

「そうですねえ。なんか……人に対しても音楽に対してもフラットにいたいなとか。もちろん感情が動いたときに歌詞ができたりするんですけど、それをどう直接的じゃなく、ユーモアだったりとか、『そっち』だけに加担しないような言い方にできるかなっていう。すごく怖いことだなって思うんです、最近ゼロか100かみたいになってきて、世の中結果論だけになりすぎている感じがするので。音でも迫力とか音圧だけじゃなくて繊細なよさがあったりとか、もしかしたらアレンジが寂しいって思われるかもしれないけど、倍音の余白だったりとかにおもしろさや気持ちよさがあるとか。とにかくフラットにいきたいなっていう。そういうものを細野さんの作品とかからもすごく感じてて。飄々としてるっていうか」

――まあ、細野さんは熱く何かを言ったりはしないもんね(笑)。

「そうそう、だけど奥にものすごく熱いものを感じる瞬間があったり。それは音と言葉とか、細野さんの生き方で教えてくれるっていうか。それを受け手が感じたりすることが大切なのかなと思うので」

――なるほどね。今までの安部くんの歌詞は、わりと「ここへ行こう」とか「こっちに向かおう」みたいなニュアンスが多かったように思うんですけど、今回は言ってしまえば「どこでもいい」っていう感じになっていますよね。

「ああ、そうですね。だから、僕はこう思ってるし僕の正解はあるけど、僕と真反対の考え方を持っている人にもかっこいい人はいるかもしれないし。自分がどの道をどう選んで、それを正解だと思って生きていくかってことだと思うんで。みんなも思うようにやって、みたいな。受け手の人によってどう聴こえるか、ふとした瞬間に聴こえ方が変わったりするアルバムかなと思いますね。今までは確かにドンって言ってる感じがあったんですけど、今回はスルメを噛むかのように――(笑)」

――いや、ほんとそう。

「ふとしたときに、僕もたぶん今後聴こえ方が変わっていくし、時が経っていくごとに『こういうふうにも聴こえるな』とか、そういう余白のある言葉とアレンジになっているかなと思います」

――このアルバムって、ある種の人生観とか態度の表明だと思うんです。象徴的だなと思ったのが、“Let’s do fun”と“STORY”で《運命》って言葉が出てくるじゃないですか。運命って言葉を、これほど意味もなく使うっていうのはなかなかできない(笑)。

「(笑)やっぱりパンチのある言葉だと思うし、ドラマチックな言葉ですからね。確かに僕も、生きている中で運命っていうものはあるなと思うし、人と会っていく中で運命が動いてるんだなっていうのも感じるし。それは自分たちのひとつひとつの選択がつくっていくものだと思うんです。たまには落ち込むときもあるけど、それも運命の中のただのひとつで、それはそこから上がっていくためのものかもしれないし、でも上がったらまた下がるし。それの繰り返しなんだっていうのを、どううまく、劇的なドラマチック感もなく言えるかなと。使ったことなかったし、今までの僕だったら使えなかったんですけど」

――運命は「掴み取る」ものだったり「切り拓く」ものだったりするじゃないですか、ロック的には。そうじゃなくて「そこにある」っていう感じがおもしろいし、真理だなと思うんですよね。

「今の世の中、運命を掴み取ろうって言ってる人が多いなって思って。別に掴み取らなくてもいいし、なるようになるし、その中でどう楽しく生きるかっていうのも大事だっていう。掴み取るぞ!って前向きにいきすぎた結果負荷がかかることもあるし、それはじつは前向きなのかな?って。それももちろんひとつの正解ではあると思うんですけど、全体のバランスとしてそっちにすごいスピードでいってしまってるなという。僕は今ありがたいことにメジャーで活動させてもらっているので、その中で『こういうやり方もありなんじゃない?』っていうのを伝えられたらいいなって」

(このアルバムは)いちばん未来志向かもしれない。フラットなアルバムだけに、10年後とか20年後に、自分でいちばん聴けるアルバムになってるかも


――このアルバムに“魂のむかうさき”という曲があって、この曲すばらしいなと思うんです。《大体のことは どうでもいいのさ》ってなかなか言えないですよね。そこに込められたものって、ここまで話してもらったことにつながっていると思う。

「まあ、僕が今まで話してきたこともどうでもよかったりするし、ひとつの僕の側面でしかなくて。人間いろいろな面があると思うので、こんなこと言ってるけど楽しけりゃいいやとか、これ楽しい、この曲好きだなっていうだけでやってる部分もありますから。大体のことはどうでもいいし、なるようにしかならないなとも半分思うし。でもそんな中でもみんな生きていくし、楽しいことも悲しいこともある。そうやって世界は続いてきたわけで、結局気持ちいいところとか、自分の魂が本当に思うところに向かうしかできないから、すべて受け入れていこうよっていう」

――それがつまり安部くんのいう「運命」ってことなのかなと。それを肯定するこの曲があることで、アルバム全体がポジティブになる感じがしますよね。だから、たとえば“明るい未来”みたいに直接「未来」って言葉を使ってはいないけど、このアルバムはすごく未来志向だと思う。

「そうですね、確かに。いちばん未来志向かもしれない。もともとアルバム・タイトルも『タイムマシン』にしようと思ってたんですよ。フラットなアルバムだけに、10年後とか20年後に、自分でいちばん聴けるアルバムになってるかもなって思って。そういう気持ちもあって、“タイムマシン”っていう曲も作ってたんです。今までもそういうつもりで作ってましたけど、いちばん普通に作れたので、これが未来形のアルバムなのかもしれないなと」

――そう思います。だって、アルバムの最後に“Opening”というトラックが入っているわけですから。

「でもこれ、それこそティン・パン・アレーとかも英語のセリフがある曲があったりとかするじゃないですか。あんなかっこよくできてないんですけど、あれをやりたいなとか、バンド紹介をしたいなとか、SEで使いたいなとかいうのがあって。それで阿南が元を作ってくれたんです。じゃあどこで入れるかって考えたときに、いちばん最初はテンション高すぎるかなと思って(笑)。じゃあ短いからケツにもっていって、アルバムが銅鑼の音から始まって、最後に“Opening”が入って、短いアルバムだから最初に戻ってもう1周聴けちゃうねみたいな。それがずっと続けばいいなと。そういう適当な理由で入れたら、思いのほかみなさんが『次なるアルバムに向かっていく感じもしますね』とか言ってくれて、いいかもしれないなって思ってます(笑)」

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