2008年に大阪でスタート、2014年を最後にいったん終わるも2017年に再開、2019年で10回目の開催を迎える『KOYABU SONIC』。そもそもは、「自分がやっている音楽ユニットが大阪サマーソニックに出してもらえなかったから」という理由で、小籔千豊が周囲のミュージシャンや芸人を巻き込んで立ち上げたこの「コヤソニ」は、何故に、参加者にも出演者にも深く愛されるフェスとして定着し、3日間に規模拡大し、ここまで継続しているのか。その趣旨、ポリシー、信念などについて、小籔に訊いた。
インタビュー=兵庫慎司
僕がめっちゃおとぼけビ~バ~に影響されて作ったのが、如実にわかる新曲があります
──今年の出演アクトについてうかがいたいんですが。まずPerfume、2回目ですけど、最初の時はどんなふうに口説いたんですか?
「ただ一方的に好きやったので、前からオファーし続けてたんです。最初は2011年かな? 一回オファーして、無理やった時に、ラジオでPerfumeさんとしゃべる機会があったんすわ。そん時に、『来月KOYABU SONICですよね。私、観に行こうと思ってるんですよ』ってかしゆかさんが言ったんです。で、ふたりが『いいよねえ』、僕『はあ?』ってなって。『いやいや、出てください。言うときますけど、オファーさしてもらってます』『ええー?』って……あとできいたら、スケジュールでNGやったらしいんですけど。その時、放送で、『マネージャーさん、こういうのんてね、本人こう言うてるけど結果無理、とかあるんですよ。お願いしますよ』って言うたんですよ。それからもずっとオファーしてたら、2年前に出ていただけて。でも、スケジュールを見たら……コヤソニの次の日から、海外やったんですよ、Perfume。東京とニューヨークとロンドンで──」
──ああ、ひとりずつ3ケ国でパフォーマンスした時。
「そうなんです。そやのに、おっそい時間まで打ち上げにもいてくれて。さすがに申し訳ないので、毎年オファーするのはやめて」
──でも、2回目があったということ自体、すごいですけどね。
「ねえ? 僕、去年の横浜アリーナを観に行ったんですよ。そしたらもうエグかって! オファーするつもりやったんですけど、もうビビってまうくらい、すごかったですね。ご本人らに会うたら、むちゃ謙虚やし、全然イキってないし、その変わらない感じで一瞬錯覚してまうんですけど、ライブ観たら『うわあ』ってなるんですよね。終わって楽屋行くの、緊張しましたね」
──だから今年、でかいほうの究極がPerfumeだとすると、逆にインディーなほうの究極が、おとぼけビ~バ~かなと。
「ああ。僕、自分がバンドを組むってなった時から、勉強しようと思ってYouTubeむっちゃ観てたんですよね。で、好きなんばっかり観ていては勉強にならないので、知らないのも観ようと思って、『2015年 ブレイクバンド・ランキング』とか観ていくなかで……『関西 バンド』で調べた時に、おとぼけビ~バ~の名前も出てきて。ラブホの名前やん(関西を中心に展開するラブホテルのチェーンからバンド名を取っている)、変なバンドなんかな、と思って、観たら『あ、めっちゃ好き!』ってなって。そっからおとぼけビ~バ~ばっかり聴いてて、この人らのライブ行きたいな、でも僕、薄利多売で毎日仕事があるので行けない、『どうすんねん、コヤソニ出てもらおう』っていう。吉本新喜劇ィズの新曲にも、僕がめっちゃおとぼけビ~バ~に影響されて作ったのが、如実にわかる曲があります(笑)」
地元の人が集まる小さい居酒屋、でも一流素材、いっつもおんなじメンバーでおんなじお客さんっていう雰囲気を重視してる
──それから、常連の……カジヒデキ、曽我部恵一、スチャダラパー、ホフディラン、TOKYO No.1 SOUL SETって、小籔さんのルーツがよくわかる顔ぶれですけど。この人たちは毎年出てほしいというのは強くある?
「そうですね。僕、このフェスを大きくしたいという気持ちはまったくなかったので。同じメンバーが毎年出てくれるのが目標やったんです、最初。それでも、全員が毎年は無理で、『ごめん、今年はフェス出えへんねん』っていう人もいらっしゃるので。それで枠空いてまう、たまたま知り合ったミュージシャンがおる、出てもらおか、っていう。それで出る人が増えてきたから、『じゃあ野外でやろう』とか、『2日にするしかない』『3日にするしかない』ってなっていっただけなので」
──邦楽のフェスって、顔ぶれが毎年固定化していってしまう、というのが悩みだったりするんですけども──。
「僕は固定化したいんですよ。よそのフェスの場合は、音楽を見せてると思うんですよ。でも僕の場合は、音楽とお笑いももちろんあるんですけど、雰囲気と、常連感っていうか……よそのフェスがミシュランの三ツ星だったり、大型飲食チェーンやったりするなら、僕は商店街の、地元の人が集まる小さい居酒屋、でもネタケースに入ってる魚と貝は一流、なんでか言うたら、俺、知り合いの漁師から直で買い付けてるから、っていう。一流素材、でもいっつもおんなじメンバーでおんなじお客さん、っていう雰囲気を重視してるので」
──TOKYO No.1 SOUL SETが観られるもめずらしいですよね。
「ああ、去年の年末、リキッドルームでやってはりましたけどね」
──そう、年末のリキッドは恒例で続けてたけど、あれも2018年で最後にします、と。
「ああ、じゃあレアなんですか……いや、ソウルセットさんに関しては、毎年あたりまえのように出てくれはります。3人とも、もうめっちゃよくしてくれはるんで。しかも今のソウルセットのアー写、僕、撮らしてもらったんです。最初は断ったんですけど『いや、ええからええから』って。で、撮ってる時に、『3人でカメラ覗く感じ、どう?』って向こうから提案されて。それで撮って、『これやと、顔がわかって空が飛ぶか、空がわかって顔が飛ぶかの二択になるんです』って見せたら『あ、顔が飛ぶのええやん』って。でもすごいことですよね、ソウルセットを観れるのはコヤソニだけ、っていうのは」