三月のパンタシアの最新作『ブルーポップは鳴りやまない』。音楽と小説で描き出す「ブルー」をひもとく最新インタビュー

三月のパンタシアの最新作『ブルーポップは鳴りやまない』。音楽と小説で描き出す「ブルー」をひもとく最新インタビュー

イメージを言葉で伝えるのがあまり得意じゃない。だったら文章にして物語でプレゼンするほうがやりやすいなって

──まず、2018年に「ガールズブルー」の企画をスタートさせたきっかけについて、最初にお訊きしておきたいんですが、どういう背景で生まれた企画だったんですか?

「三パシはインディーズ時代から楽曲でもライブでも、物語性を大切にしていて、2018年の春くらいに、より物語とかストーリーと連動させた夏企画ができたらいいねっていうところから、じゃあ、小説があって、その先の主題歌として楽曲があるような制作をしてみようということになったんです。そこで『どういう物語があるか考えてきて』と言われて、スタッフはみんな、漠然とした作品のテーマとか、箇条書き程度に『こういう感じ』っていうものを持ってくると想像していたみたいなんですけど、初回からかなり物語の内容を細かく書き込んだプロットみたいなものをみあが持っていったのに驚いたみたいで(笑)。それを会議で共有した時に、『もうここまでイメージができているなら、自分で書いてみたら?』と。それがきっかけになりました」

──会議でイメージをプレゼンする段階でプロット的なものに落とし込めているというのは、やはりみあさんに書く才能があったからだと思うんですよね。

「私自身が、イメージを言葉で伝えるのがあまり得意じゃないので(笑)。だったら文章にして物語でプレゼンするほうが、私にとってはやりやすいなっていうだけだったんですよね。でも結果として、三パシはこのスタイルで制作していってみようということになりました」

──今回は9編の物語が文庫本として初回生産限定盤に付く仕様なんですが、この短編集がすごく読み応えがあります。前作と比べても、より文章に躍動感があって、ストーリーにもすごく引き込まれて。ご自身では、前作と比べて、書き上げた時の手応えに変化はありましたか?

「前作は初めて文章を書いたということもあって、まだこれは小説になってないんじゃないかって思いながら、小説と詩の間のようなものを書いていた部分もあったんですけど、今回は読み物として、新しい部分を感じてもらえるんじゃないかなと思います。あと今回の自粛期間のほとんどを小説の推敲をする時間に充てられたので、時間をかけた分、精度も高くなってるんじゃないかなと(笑)」

「ブルー」な気分をポップミュージックに昇華して表現することを、さらに極めたアルバムにしたかった

──小説も、それにともなう楽曲も、今回のアルバムでは、より切なさや青春感、寂しさなど、様々な感情が、いろいろな「ブルー」のグラデーションで描かれているように感じました。より多様な「青」を表現して、タイトルにある「ブルーポップ」という言葉に着地したのはどういう流れだったんですか?

「三パシは前回もそうだったんですけど、アルバムを出すと決めた時に、最初にタイトルを決めるんです。前作の『ガールズブルー・ハッピーサッド』で、女の子のブルーな感情、憂鬱な気持ちとか、青春の青さ、未熟な青くささとか、そのブルー感を、世の中の人に知ってもらえたかなっていう実感があって。なので、それをもっと浸透させられたらいいなと思っていたんです」

──音楽でより多様な「ブルー」を表現していけたらと?

「そうですね。前回のアルバムを継承しつつ、新しく進化した『ブルー』を見せられたらいいなと。だから『青』か『ブルー』という言葉は引き続き、絶対入れたいと思っていたんです。それでふっと、星野源さんがご自身の音楽性のことを『イエローミュージック』という言葉で表現されているのを思い出して。ブラックミュージックにルーツがあって、それを継承したオリジナルの音楽に対して『イエローミュージック』と名付けられていて、それがすごくいいなと思ったんです。じゃあ、三月のパンタシアの音楽はなんていう言葉で表現できるんだろうって考えた時に、ああ、『ブルーポップ』だなと。これまで三パシが表現してきたブルーな気分だったり、日常の中に潜む気だるさだったりを、ポップミュージックに昇華して表現することを、さらに極めたアルバムにできたらいいなという思いと、その音楽がリスナーの中でずっと鳴り響いていたらいいなという思いで、『ブルーポップは鳴りやまない』というタイトルにしました」

次のページ“たべてあげる”は、これまで三パシが描いてきた青春真っ只中のドキドキ感とは違う、もう少し広義的に見た愛の話
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