新世代のロックバンド、シズクノメにインタビュー! 音楽を「魅せる」、稀有なバンドの結成ストーリーをひもとく

新世代のロックバンド、シズクノメにインタビュー! 音楽を「魅せる」、稀有なバンドの結成ストーリーをひもとく

しゅんのバンドが「解散した」っていう発表があって。その1時間後にはDMを送ってました(ミチヒロ)

──まず、シズクノメというバンドがどうやってできていったのかを聞かせてください。

ミチヒロモトキ(G・Vo) 俺が前にやっていたバンドを辞めて、その時にたまたまSNSで、しゅんがいろんなアーティストのカバーをしている動画がまわってきて。めちゃくちゃいい歌を歌うなあと思って、一緒にやれないかなと思ったんですよね。でもしゅんはその時、別のバンドを組んでいて。それでもいいから声をかけようと思ってたんですけど、その1〜2週間後くらいにしゅんのバンドが解散したんです。で、『解散した』っていう発表の1時間後にはDMを送ってました(笑)。

──まずミチヒロさんがしゅんさんを誘ったと。しゅんさんはそのDMをもらって、どうでした?

しゅん(Vo) いや、断りました(笑)。解散してすぐ他の人と(バンドが)できるメンタルでもなかったので。「解散後はひとりで頑張ってみたい」っていうのをメンバーと話して進めようと思っていました。でも何かの縁だから、モトキとは今後も連絡は取り合ってみようか、という感じでやりとりしていて。で、「今後しゅんさんがどういう動きをしていくつもりなのか聞きたいから、一回会って話しましょう」ってことになり。その時にも「バンドどうすか」みたいに言われたんですけど、断り(笑)。でもまあ、そのあとソロで動くにしても、自分としてもどういうことをやっていくか定まっていなかったし、モトキもひとりで活動していたから、家でどういうことをしているのかとか、いろいろ質問して。それで次は家に招いてもらって、こういう感じで曲作りしてるっていう話を聞いたりして、その帰りにもまたバンドに誘われたんですけど、断りました(笑)。

──三度目のお断り(笑)。その頑なな心に変化が訪れたのは?

しゅん 家に招いてもらった帰りに、とあるアーティストのライブに行く予定があって。それはバンドだったんですけど、そのライブで、バンドメンバーの仲よし感がすごく強くて。なぜか「あ、俺こういうのやりたいのかも」って思ったんですよね。だから、その話をすぐにモトキにして、そのあともう一回会って、俺のほうから正式に「一緒にやろう」と言いました。

──しゅんさんが組んでたバンドっていうのはどんなジャンルの?

しゅん ラウドでした。その時からYAHちゃんは一緒にやっていて。

──撮影? カメラ担当として?

YAH(Camera) そうですね。

しゅん それで、シズクノメを結成する時に、「YAHちゃん撮ってくんない?」ってお願いしたら快く引き受けてくれて、それで今はメンバーになってます。

演奏力よりも、「武道館を一緒に目指す」、そういう気力や熱意がある人を入れたいよねって(しゅん)

──ぐれむりんさんは?

ぐれむりん(Key・Cho) ネットでバンドメンバーを募集する掲示板みたいなのがあって、そこに自分のプロフィールを載せていたんです。そしたらしゅんちゃんからDMが届いて、「武道館目指してます」とか、バンドのビジョンが送られてきて。それで一度渋谷のカフェで、面接みたいな感じで会って(笑)。僕はもうその日に「入ります」と。

しゅん モトキと最初に話してたのは、演奏力よりも、「武道館を一緒に目指す」、そういう気力や熱意がある人を入れたいよねって話で。

ミチヒロ 最初からルームシェアをやってバンドを動かすっていうのは、しゅんと他のメンバーを探す前に話して決めていたので。でも初めて会った奴とルームシェアするのを決めるなんて、結構勇気のいることだと思うので、それに賛同してくれる人はあんまりいないんですよね。だからシズクノメは、それで「オッケー」って言う頭のおかしい人が集まってるというか(笑)。それだけ熱意があるし、狂ってるし、それがいいなと思ってます。

──テツさんは?

宮本 テツ(Dr・Cho) 自分は今も学生なんですけど、ずっとサークルでバンドをやっていて。でももっと本気でやりたいなと思って、ぐれむりんさんと同じサイトにプロフィールを載せていたんです。そしたら同じように連絡がきて、僕もカフェで会って面接しました(笑)。ルームシェアのこともあって、少し考えたんですけど、やっぱり「入ります」と決断して。自分の場合はまだ音楽歴も浅いんですけど、今の時代、動画の担う役割がすごく大きくなってきていて、音楽は耳だけじゃなく目でも楽しむコンテンツだなと思っていて。そういう意味でもシズクノメはそこに強いバンドだし、YouTubeで広く知られるバンドになったし、自分に合っているバンドに入れたなって感じです。

──カメラ・撮影担当がバンドメンバーにいるのも非常に新しいし、シズクノメの強みですよね。これは最初から、ビジュアル的展開も重要視してやっていきたいという考えからだったんですか?

しゅん そうですね。YouTubeで活躍したいねって話をモトキとしていて、投稿するにあたってiPhoneとかで撮るよりは、しっかりカメラマン的な人がいたほうが伸びるんじゃないかという考えで。YAHちゃんには前のバンドの時もMVやライブ映像を撮ってもらってたんですけど、「YAHちゃん、ちょっとYouTubeに投稿する動画とかも撮ってくんないかな」ってお願いして。最初はメンバーとしてじゃなくて外注で頼んでいる感じだったけど、「もうYAHちゃんメンバーでもいいじゃんね?」みたいな(笑)。

──カバー動画がきっかけで話題になって、結成から2年も経っていないのに、すごい勢いでバンドの名が知られるようになっていきましたよね。バンドを結成した時には、こうした展開は思い描いていました?

ミチヒロ バンドとしては「(結成から)五年後武道館」を目標に掲げていて、じゃあ1年後にはこれくらいにはなっていたい、って話はしてたんですよね。そこがスタートラインというか、「これくらいには最低限なっていたいよな」みたいな。でも、結成して半年くらいは思っていたようには伸びなくて。

YAH いかなかったねー。

ミチヒロ だからみんな焦ってたもんね。それもあってずっとミーティングして。俺たちは自分たちのオリジナル曲をアーティストとしてやりたいっていうことがもちろんいちばんにあるんだけど、そのために「知ってもらう」ことから始めなければというところで、YouTube活動に力を入れてたんですよ。それでようやく少し知られるようになってきて、全員ほっとしました。

──オリジナル曲としては、まず“ワンナイトスタンド”が最初に公開されましたよね。あれを最初に公開しようとしたのは?

ミチヒロ 自分で作っている時は全部いい曲だと思って作ってますけど、“ワンナイトスタンド”はメンバーに聴いてもらった時の反応がよかったんですよね。だから満場一致で。

しゅん そもそも、最初にどんな曲を作るかモトキとふたりで話していた時に、「ファンを巻き込みたいよね」と言っていて。だから手拍子とかシンガロングとかは入れたいねって話してました。それが予想以上にいいものができて、「めちゃめちゃいいね!」って。

YAH 僕が初めて聴いたのは、(ミチヒロとしゅんと)初めて3人で会った時なんですよ。その時は渋谷のパスタ屋さんで(笑)。そこで初めて楽曲を聴かされて、それが“ワンナイトスタンド”だったんです。それで「めちゃめちゃいいじゃん! このバンド撮らせてよ」って言って。

──その後もオリジナル曲としていいものができあがっていって、活動にもドライブがかかるこの時期に、コロナ禍でライブが難しくなったというのは想定外だったと思うんですが、今年4月に初ワンマンをオンラインで行いましたよね。ライブはやはり早くやりたかった?

ミチヒロ それはありましたね。予定ではワンマンは1年早くやっているはずだったし。「結成1年後にはワンマンライブをやる」っていう目標は、バンドを組んだ時から決めていたので。

──そういうバンドとしてのロードマップは、結成時にある程度詳細に描いていたんですね。

ミチヒロ そうですね。「五年後武道館」もそうですけど、俺らはやっぱりライブが肝にあるんですよね。だから武道館でのライブをいいものにするために、いいライブをガンガンやっていこうと決めていたので。

──それができない状況になってしまって。

ミチヒロ 悔しかったねえ。俺らは決めた目標は絶対にやり遂げたいと思ってやってきたから、それができなかったのも悔しいし、シズクノメを知ってくれている人も増えてきて、やっとライブを観せられるというか、やっとアーティストとしてのオリジナルをしっかり観せられる機会だったから。

しゅん やっぱりいちばん最初にやるライブは、お客さんの前でやりたいという気持ちが強かったです。最初、オンラインライブをやるかやらないかで言えば、僕はやらない派だったんです。ちゃんと伝わるかなあって。でも、みんなで楽曲をレコーディングしていくうちに、「いや、俺らだったら大丈夫かな」みたいな自信が出てきて。いざ、初のオンラインライブの日を迎えたら、思っていた以上に(お客さんが)観にきてくれていて。じゃあ次、ちゃんとみんなの前でできる時にはもっと成長していたいなって、モチベーションが上がって。

宮本 うちにはカメラマンがいるし、映像はこれまでやってきた得意分野だし、うちの持ち味を活かしたライブができたなって、終わってからは思えました。オンラインだったことで、本来なら観にこられなかった地方の方や海外の方にも、初めての演奏をお披露目できて、同じ時間を共有できたことはいいことだったなと思っています。

ぐれむりん “ワンナイトスタンド”や“ジューンブライド”も、みんなで声を出し合ってひとつになるようなライブをするっていうイメージがあるので、そういう意味では悔しい状況ではあるんですけど。でも本当、いろんな人が観てくれて、YAHちゃんが撮ってくれた映像がよかったので、今思えば満足できるライブになりました。

YAH 俺はオンラインライブでも絶対成功するなって思っていました。みんなの映り方も、音源も、いいものが全部揃っているから、きっといいものになるって思っていて。で、ライブのあと、自分たちでも観たんですけど、やっぱりすごくいいなって。だから悔しかったけど、経験としてやってよかったです。

次のページ『単純的希望』は、俺にとってやっぱり「ライブは希望だ」っていうところがあるんですよね(ミチヒロ)
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