クリーン×3、ラップ、スクリーム、シャウトで構成された6人のボーカルに、マニピュレーターを加えた編成で、活動を重ねるごとに独自の表現スタイルを深め続けている「神使轟く、激情の如く。」――通称・神激。メタルコアを下地としつつ、ラップ、ジャズ、EDMなど多彩な要素を添加し、激しい転調やテンポチェンジも盛り込むこのバンドユニットの音楽を初めて聴いた時、仰天しない人はほぼいないはずだ。そして、衝撃を噛み締めながら「かっこいい!」と心惹かれることになると思う。ライブを実際に体験してもらえればわかることだが、マニピュレーターによるリアルタイムの機材操作で放たれるサウンドの威力も圧倒的なものがある。トラックを流したり、バックバンドの生演奏で行われるライブとはまた別の形のサウンドに包まれながら、歌声を全力で響かせている神激の凄みを、ぜひこの記事をきっかけに多くの人に知ってもらいたい。2022年3月30日に初の日本武道館公演が予定されているが、あの大舞台でも凛々しい姿を輝かせることになるだろう。神激に懸ける想い、また同時リリースされる最新ミニアルバム『神楽音』、『Rebellion of Maverick』について、メンバーたちに語ってもらった。
インタビュー=田中大
シャウトがあったり、ラップがあったり、転調とかによって1曲の中でいろいろな世界に飛べるようになっているんです(よいこ)
――結成時は、どういう音楽性のユニットにするというお話でした?実久里ことの アイドルというジャンルから始まってはいるんですけど、アイドルらしいことをしようと思って始めたわけではなくて、当初からロックフェスへの出演などを目標にしてきました。だから、音楽的にもそっちに寄ったものはありました。
――アイドルのイベントでも、いい意味で常に浮いていますよね。
二日よいこ はい(笑)。自分たちでもそう感じるようになって、最近では自分たちのことを「バンドユニット」と呼ぶようになっています。自分たちはどうカテゴライズしていただいてもよくて、「好きな音楽をやってるよ」ということではあるんですけど。
生牡蠣いもこ 聴いてくださる方々の受け取り方次第なのかなと。だから、ライブを観た人が私たちを「アイドルだ」と思うならばそれでいいんです。
――つまり「神激をやってます」ということですね?
いもこ そうです。アイドルジャンルからするとちょっと異色というか、ちょっとおかしい音楽というのがあったので(笑)。いろいろ言われたりもして、「負けねえぞ!」という反骨精神を歌詞にしたこともありました。そうやって諦めずに力をつけ続けてきた中で、徐々にファンのみなさんが増えてきたんです。この体制になった今も、反骨精神はあるんですけど、感謝の気持ちが増えてきていて。それが最近の歌になっているのかなと思います。
――サウンドが非常に刺激的です。多彩な要素を融合させていて、1曲の中で激しい転調、テンポチェンジを重ねるこのスタイルを「プログレッシブミクスチャーメタルコア」と呼んでいるんですね?
よいこ はい。自分たちの音楽を名づけちゃおうと思って。シャウトがあったり、私が担当しているラップがあったり、転調とかによって、1曲の中でいろいろな世界に飛べるようになっているんです。
ことの 初期は、ちょっとアイドル寄りのサウンドのアルバムと、バンドサウンド寄りのアルバムに分けたりしていたんです。でも、それも違うのかなと感じるようになって、どの要素も盛り込んだ音楽を作るようになっていきました。あと、メンバーが(現体制に)固まったことによって、それぞれができることが明確化してきたので、それを際立たせる曲作りになっていきましたね。
――たとえば、TiNAさんはR&Bがルーツにあって、そういう要素を神激に反映させていますよね?
TiNA そうですね。加入した時は、神激に自分の歌が馴染むのか不安ではあったんですけど、やっていくうちに私に合ったパートを作っていただけるようになって、得意な部分を伸ばし続けられるようになっています。
――あまねさんは、スクリーム担当ですよね。
涙染あまね はい。ライブでお客さんを煽る声がスクリームっぽく聴こえたみたいで、神激の音楽制作の方に「スクリームをやってみないか?」って言われて、そこから始めました。スクリームに関しては独学で不安もあったんですけど、出せる音域や種類も増えてきて、今では「人間捨てて叫んでるね」って言われるくらいになりました(笑)。
――シャウト担当のエヴァさんは、ロックフェスによく行っていたんですよね?
三笠エヴァ はい。フェスもたくさん行っていましたし、もともとずっとELLEGARDENさんのコピーバンドをやっていて、ベースを弾いていました。自分の最初の将来の夢は「フェスに出たい」だったんです。「フェスに出るにはバンドを続けるのか? それとも違う形で進むのか?」と考えていた時期に、たまたまYouTubeで神激と出会って、直感的に「このグループの音楽性だったら、いずれフェスに出るすごいチームになるだろう。この音楽をやりたい!」って思ったんです。
――ラップ担当のよいこさんは、ドラムをやっていたと聞いています。
よいこ そうなんです。バンドをやって育ってきました。「将来どうしよう?」って考えたら、やっぱり音楽がやりたくて。道を探していた時に、たまたまYouTubeで神激を見つけました。ライブに行って、聴いた曲のいもこさんが書いた歌詞だったり、ライブ中のMCとかにも心惹かれて、「オーディションはしていますか?」と連絡したのをきっかけに加入することになりました。
作詞家ということにはなっているんですけど、自分はメンバーの言葉や想いを伝える「メッセンジャー」だと思っています(いもこ)
――いもこさんの書く歌詞、すごくいいですね。いもこ ありがとうございます。もともと、悩んだりした時にポエムを書くのが好きで、そういうのが今に活かされているのかなと思います。
ことの いもこは、ライブ中にそれぞれのメンバーが言った言葉や、メンバー内であったことを歌詞に入れてくれるんです。
いもこ 作詞家ということにはなっているんですけど、自分は、メンバーの言葉や想いを伝える「メッセンジャー」だと思っています。
――魅力的な音を重ね合わせたものが人の心を打つ力を帯びる、というのはロックバンドも同じですし、実際、神激はバンドマンにも愛されていますよね。
TiNA 少しずつですけど、バンド界隈のみなさんに認めていただけるようになってきたのかなと思います。
よいこ 対バンしたバンドのみなさんに、「音圧がすごい」ってよく言われるんです。
エヴァ この間、神激以外の出演者が全部バンドのイベントに出たんです。でも、私たちの音圧はバンドさんに負けていなくて。マニピュレーターさんがパラデータ(各楽器やボーカルなどをパートごとに分けたオーディオデータ)をさらにリアンプして、32bitの回線で音を出してくれているので、バンドではできない曲の繋ぎ方もできるし、箱によっては(生音よりも)いい音の時があるんです。
――ヒップホップのターンテーブルもそうですけど、マニピュレーターさんのリアルタイムの機材操作って、一種の「演奏」ですからね。
エヴァ ほんとにその通りですね。目に見えないだけで、ある意味バックバンドがいるので。神激のライブのマニピュレーターは、神激の作曲をしてくださっているクリエイターでもあるので、「このメンバーはここまでの音域が出るな」、「こういうことができるようになったんだな」っていうのが、曲にどんどん反映されていくんです。