2019年12月に結成された2002年生まれの4人組バンド、chilldspot。海外のトレンドと呼応するメロウなネオR&Bをベースにしたサウンドが注目され、Spotifyの「RADAR: Early Noise 2021」に選出。約1年前、1stアルバム『ingredients』をリリースしたタイミングではほぼライブ経験がなかったが、その後様々なフェスやイベントに出演し、ベクトルがぐっと外に向いた躍動感あるサウンドに進化を遂げてきた。半年ぶりの3rd EP『Titles』を完成させた4人の発言からは、コロナ禍で音源先行で支持を集め、徐々にライブモードにシフトチェンジしていくという今の新世代アーティストの姿が見て取れる。
インタビュー=小松香里
デジタルになってから効率はすごくよくなりました。ベースのフレーズをLINEで送ったら、「もうちょっとこうしてほしい」ってリクエストが来たり(小﨑)
――半年ぶりの3rd EP『Titles』収録の5曲は最近作った曲ですか?比喩根(Vo・G) ほぼ最近作った曲です。“shower”だけ2年前、高校3年生ぐらいの時に作った曲ですね。
――“shower”はchilldspotの代名詞的な音数の少ないネオR&Bですが、他の曲は結構な新機軸だと思いました。
比喩根 今はUKオルタナティヴの曲を結構聴いていて、それに引っ張られて作った曲が今回は多い印象があります。あとは、サーシャ・スローン、レックス・オレンジ・カウンティ、マギー・ロジャース、ホリー・ハンバーストーンとかエド・シーランとかを聴いてますね。今回プロデューサーさんを中心にアレンジした曲が多いんですけど、そのプロデューサーさん自体がそっち系のサウンドが好きで。ただ、“shower”はメンバー中心でアレンジしましたね。
――メンバー同士の連携が洗練されていってる手ごたえはありますか?
比喩根 前はスタジオに集まって制作してたんですけど、スタジオだとみんな一斉に演奏しているから、いいのか悪いのか客観的な判断ができなかったところがあったんです。録音環境もそんなにいいわけではないし。それで前のEP『around dusk』あたりから、データでやりとりするようになりました。
玲山(G) 1個1個の楽器の音を細かくクリアに判断できるようになりましたね。それで、打ち合わせとかしなくてもパッてスムーズにまとめられるようになった。
小﨑(B) デジタルになってから効率はすごくよくなりました。たとえば、僕がAメロのベースのフレーズを入れてみて、それをギターの玲山に「これどう?」ってLINEで送って、「もうちょっとこうしてほしい」っていうリクエストが来て、やり直して送るみたいなやりとりがスピード感を持ってできる。とてもスムーズですね。
――“shower”は、《酔ってるのか踊ってるのか/もう分からないそれでも》という歌詞もありますが、ファジーな情景がメロウなサウンドと共鳴し合っています。
比喩根 この曲は確か最初コードがあって、それに合うような歌詞を書いていったんだと思うんです。ひとりの女の子にハマる男の子みたいな。それってあまりいいことじゃないってわかってるんだけど、じりじり沼ってしまってる。爽やかさもあるんだけど、そこにねとっとしてるフレーズを入れたくて、最終的にこうなりました。
――一方、ブルボン「アルフォート ミニチョコレート」のCMソングの“Sailing day”はかなりポップで前向きな曲ですね。
比喩根 この曲がいちばん悩みました。レコーディング2日ぐらい前まで歌詞が決まらなくて。CMサイドから事前に伝えてもらっていたイメージを超えることがなかなかできなかったんです。この歌詞は、最初明るすぎるかな、軽すぎるかなっていう不安はあったんですが、たまにはこういう理想郷みたいな世界を描いた曲があってもいいんじゃないかなって思って。“Like?”もそうですけど、すごく純粋で本質的な幼さを書けたのかなと思いました。
(ライブでは)曲を認知されてるのがわかった瞬間がいちばん嬉しいかもしれない(ジャスティン)
――前回インタビューした1年前は、まだ全然ライブをやっていないと言ってましたが、そこから「ARABAKI ROCK FEST.」や「JOIN ALIVE」、先日の「SUMMER SONIC」を含め、たくさんの聴き手を目の当たりにする経験を重ねてどんなことを感じていますか?ジャスティン(Dr) そっか、1年前か。
比喩根 まだ1年前なんだ(笑)。
小﨑 ライブをやることで改めて自分たちの曲に自信が持てますね。たとえば“Groovynight”のイントロで沸いてくれたりするのが嬉しい。ちゃんと聴いてくれてるんだなって。
ジャスティン 確かに、曲を認知されてるのがわかった瞬間がいちばん嬉しいかもしれない。フェスで時間が空いたからなんとなく観に来たんじゃなく、好きで来てくれてるのが伝わってきます。
――そういうライブで得る感覚って、曲作りに影響はありますか?
比喩根 ばちぼこあるよね。
ジャスティン ばちぼこ?(笑)
比喩根 半年前にリリースした2nd EPの『around dusk』はまさしくライブを意識して作った曲が多いです。“line”とか“your trip”とか。“music feat.LINION”はお客さんと一緒に空間を楽しめるような乗りやすい曲を意識しましたし。これまではいい意味でも悪い意味でも曲調がバラバラだったのが、最近は温かみがあって盛り上がれるようなものになった気がしてます。