ばってん少女隊、前代未聞のアルバム『九祭』を語る。今日までの悔しさ、アイドルであることを背負って磨き上げる覚悟

ばってん少女隊、前代未聞のアルバム『九祭』を語る。今日までの悔しさ、アイドルであることを背負って磨き上げる覚悟

楽曲の振り幅は(前作の)『ふぁん』から大きく変わったけど、軸みたいなものは変わってない。ただかっこいい尖った曲たちをやっているだけじゃないから(春乃)

――今回のアルバムって、これまでの7年と3枚のアルバムでやってきたことから大きく変わっているわけじゃないですか。ここまでの路線変更を決断するには相当な勇気と覚悟がいると思うんです。それだけ「変わらない」より「変わる」ほうがいいという判断だったのだと思うんですけど、そこに迷いや怖さはなかったですか?

上田 いや、結構怖かったです。そもそも“OiSa”ができた時は、明るくて楽しいバンドサウンドの楽曲の中に“OiSa”がポツンってあっただけで、ここまで振り切るのはすごく勇気がいることでした。ばってん少女隊を前から応援してくださっている方の中には明るくて元気いっぱいのバンドサウンドが好きな方ももちろんいらっしゃると思うし、ライブでそういう楽曲が聴きたいという方もいらっしゃるのはわかるんですけど。アルバムって一生かけて一枚しか出さないものじゃないし、ばってん少女隊の今を残すことを考えると、ベストな形なのかなって思います。

春乃 尖ってる楽曲ばかりだなって思うんですけど、私たちは九州のことが大好きでもっともっとみなさんに知ってほしいんだという想いが込められていて。楽曲の振り幅は(前作の)『ふぁん』から大きく変わったけど、軸みたいなものは変わってない。ただかっこいい尖った曲たちをやっているだけじゃないから、そこは自信を持てるというか、ぶれてないなと思います。それは大きいなって思いますね。

――これだけ複雑な音楽をやりながらも歌がちゃんと自分たちのものになってるし、なんならこれまでのアルバム以上にメンバーのことを近く感じられた気がしたんですね。それはもちろん6人の表現力を上げる努力の成果でもあると思うけど、6人の本気の想いが音楽の軸になっているからというのもありそうですね。

瀬田 アルバムの各県の楽曲たちは、それぞれメンバーが受け持っている担当県について「この県はこういうイメージで、こういうところが好き」ということをスタッフさんたちと話をして。すごく尖ってはいるんですけど、各県の雰囲気がそのまま曲になった感じで、それぞれにメンバーの思い入れと愛がすごくあるんですよね。

――なるほど。どんなことが曲に昇華されたのかを知りたいので、それぞれ自分の担当県についてどんな話をしたのかを聞いてもいいですか。

 “御祭sawagi”は熊本県八代市の、九州三大祭りのひとつでもある「八代妙見祭」をイメージしている曲です。お祭りに出てくる言葉が歌詞に入っていたり、サビの《ばってん!ばってん!》とか熊本県の方言も入っていたりするので、一曲で熊本をイメージするものになったなって思います。ラップもあってかっこいい感じになっていて、熊本に合う曲だなと思ってます。

蒼井 “さがしもの”は佐賀県の「インターナショナルバルーンフェスタ」をテーマにしているんですけど、会場の《佐賀の嘉瀬川の河川敷》とか、バルーンフェスタに関する言葉がそのまま歌詞に入っていたりして。バルーンフェスタは和のお祭りとはまた違う大会で、それがワールドミュージックの明るい曲になっています。バルーンフェスタでは、佐賀の青空に気球がいっぱい浮かぶんですよ。そんな光景、普段見られないじゃないですか。だから気球が上下するみたいにみんなで上下になるかわいい振り付けがあったり、イントロはステップも速かったり、耳でも視覚でも楽しめる楽曲だなって思います。ただ「気球に乗って楽しい」とかじゃなくて、「広い視野で見てみようよ」「上を目指していこうよ」みたいな熱いメッセージも込められていて、大好きな曲です。

春乃 “和・華・蘭”の担当は私なんですけど、長崎県の歴史とか文化についてディレクターさんと深く掘り下げました。江戸時代に鎖国していた時も長崎だけ港を開いてオランダや中国と貿易していて、「長崎って国交の街だね」というキーワードが出てきて。それに関連する歴史的な建物が今も長崎の至るところに残っているので、町を歩いてても、中国っぽいお寺やヨーロッパ風な建築が出てきたりするんです。そうやっていろんな文化が入り交じった場所だということを話していたら、届いた曲が本当にそのままで、「あの日話したことがすべて盛り込まれてる!」ってびっくりするくらいでした。上り坂下り坂が激しい街の情景とか、景色と文化の両方が描かれているのがポイントかなと思います。《和華蘭文化》で韻を踏んだり言葉遊びをしていたりするのもすごくいいなと思って。「わからない」の意味で「わからん」って私たちがよく使う方言でもあるので、そこも掛かっているのがすごく好きです。

上田 “沸く星”は、個性派揃いの楽曲の中でもいちばん個性的というか(笑)。大分県と聞くといちばんに温泉が出てくるから、最初はわざと温泉以外のことを言っていたんですけど、結局温泉をメインにして作ろうとなって。あと、今大分県が宇宙開発に力を入れていて、大分県の温泉旅館や観光施設で「ワレワレハウチュウジンダ」って言うと割引が効く「宇宙人割」があったりするんです。宇宙人UのInstagramとかで宇宙人が温泉に入っていたり大分の料理を楽しんでいたりする画像が出てくるんですけど、「こんなに合ってないことあるのかな」って思うくらい、合ってない感じが逆に面白くて(笑)。そういうミスマッチさというか、噛み合ってるように感じない部分をまとめちゃおうということで、この楽曲ができました。サビは温泉のゆったりしたイメージがあって、ヒップホップっぽい部分は《宇宙》《Space Ship》という言葉も歌詞に入っていたりして、そのギャップも楽しいんじゃないかなと思います。

瀬田 “Bright & Breezy”は、宮崎県がすごく自然豊かできれいな場所というイメージがあって。「日本のひなた」というキャッチフレーズがあるくらい、日照時間が長くて、その分暖かくて、温和な地なんですね。だから野球やサッカーのキャンプ地になっていたり、たくさんの方がスポーツをしに来るような県で。しかも海がすごくきれいで、フェニックスという木があったりして、リゾート地的な雰囲気もあるのが宮崎県で。この曲を聴いてもらうと宮崎県の良さをわかってもらえるんじゃないかなって思います。

希山 “南風音頭”は、最初スタッフさんとお話しした時、鹿児島県も自然がすごく豊かで、きれいな海があるんですよって言ったら、「こんなにきれいな場所があるとは知らなかった」というふうにびっくりしていて。私が実際に鹿児島へ行った時、地元の方がすごく温かくて優しくて。それもお話ししたら、温かくてついつい踊りたくなっちゃうような楽しい雰囲気の曲になりました。《桜島》《与論》《天文館》《しろくまかき氷》とか有名なものもたくさん歌詞に出てくるし、サビの《もいしょれ/めんしょり/ゆーうもちゃや》も「何言ってるんだろう?」って思う方がいらっしゃると思うんですけど(笑)、奄美の「いらっしゃい」の方言を使っていたりして。鹿児島の温かくてゆったりした雰囲気のいいところがたくさん詰まっている曲だなと思います。

すごく自信のあるアルバムができたので、たくさんの方に聴いてもらいたいし、「九州と言ったらばってん少女隊だよね」って思ってもらえるような存在になりたい(希山)

――それぞれが県や曲について語る口調がすごく熱くて。その熱量が各曲の根底にあるし、それぞれが思う県の魅力や雰囲気が歌詞だけでなく音にもしっかりと変換されていることがわかりました。

春乃 スタッフさんと九州各県をモチーフにした曲を作りたいよねっていう話を、1年半くらい前に、本当にチラッとしたんですよ。そこから2年は経ってないくらいの期間だったので、こんなに早く実現するんだって思ったし、その時は「宮崎はチキン南蛮でしょ。鹿児島はお芋でしょ」くらいの本当に軽い話だったから、こうやって形になってすごく嬉しいなって思います。こんなに素敵なものに仕上がって、その言葉を拾ってくれたスタッフさんにも、曲を作り上げてくれたクリエイターのみなさんにも、本当に感謝です。だからこれをかっこよくライブで届けたいなというふうに思います。

上田 九州7県を回る「九州7ツアー」をやって、そのあとにアルバムを作ったので、私たちの中でも繋がってるというか。九州ツアーをやらずにアルバム制作に至っていたら、各県への思い入れもまた全然違ったのかなって思いますし。

春乃 今年九州ツアーをやって、それぞれ県担当を決めて、その県のことをもっと知っていこう、アピールしていこう、という活動をしたうえでのアルバムだったので。

――突拍子もなく今回のアルバムコンセプトに辿りついたわけではなく、ちゃんとそういったグループとしてのストーリーがあるというのが重要ですよね。音もストーリーも強固な楽曲を揃えたアルバム『九祭』を持って、ばってん少女隊としてどういう動きをしていきたいのかを、最後に聞かせてもらえればと。

上田 せっかく“OiSa”とかでたくさんの方が知ってくれたのに、そこを離しちゃうのはもったいないなって、自分たちでもすごくわかってるというか。ここを逃すともう本当に次はないんじゃないかなって思うので。これらの楽曲も通して、もっとたくさんの方の心に残せたらいいなと思います。

希山 すごく自信のあるアルバムができたので、たくさんの方に聴いてもらいたいですし、いろんな方に「九州と言ったらばってん少女隊だよね」って思ってもらえるような存在になりたいなと思います。

春乃 “OiSa”くらいから和の文化――曲、言葉、服とかを貫いてきて、「ばってん少女隊だから見られるもの」が少しずつできあがってきていると思うし、『九祭』でそれが強くなったと思います。これを機にもっとたくさんの人に知ってもらいたいですし、ライブでも私たちにしか見せられないものを見せられるようにしたいなと思って、来月の中野サンプラザの準備を今始めているところです。

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