2022年の晩夏にリリースされた“スターマイン”は、その突き抜けたお祭り感に多くのリスナーが圧倒され、季節を越え、年をまたぎ、現在もロングヒットを記録中。ダンス&ボーカルグループとしてのスタイリッシュな雰囲気とは裏腹の強烈な和のグルーヴを持つこの曲は、今後普遍的な夏曲として愛され続けていくものになるだろう。Da-iCEとしては“CITRUS”の大ヒットに迫る勢いで、本格的なサマーシーズンを前に今年もさらなる盛り上がりを見せそうだ。その“スターマイン”も収録されたDa-iCEの新作アルバム『SCENE』が完成。これまで以上に多様性に富んだサウンドアプローチと、どこか懐かしさを感じさせるJ-POPや歌謡曲のフィールが融合し、Da-iCEの歌の強みが存分に表現された素晴らしいポップアルバムとなった。この新作アルバムについて、メンバー全員にじっくりと語ってもらう。
インタビュー=杉浦美恵 撮影=三川キミ
(“スターマイン”は)今年こそ花火大会で歌いたい。あと、夏の甲子園でブラスバンドバージョンで聴けたら嬉しいです(花村)
──Da-iCEのネクストフェーズを感じさせる、様々な魅力が詰まったアルバムができあがりましたね。工藤大輝(Performer) 今までのDa-iCEにない曲も多くて、でも非常にバランスのいい作品になったと思います。ファンの人たちにとっても久々のフルアルバムだし、最近の有名な曲からファンになってくれた方にも、僕らの新しい一面を見せられるアルバムになったかなと思います。
和田颯(Performer) 聴いていて楽しいアルバムですし、新しい中にもどこか懐かしい感じもする一枚になりました。
岩岡徹(Performer) またさらに振り幅が広がりましたよね。これは無限大の可能性を感じるアルバムだと思っています。
大野雄大(Vo・Performer) ほんとに自信を持って人にすすめられるアルバム。Da-iCEにはまだまだこういう面もあるんだよって、あらためて名刺代わりになる一枚ができたかなと思いますね。
花村想太(Vo・Performer) 最近Twitterとかで「昔好きだった」みたいなコメントをよく見るんですよ。特に、JO1やBE:FIRSTとかと一緒にイベントに出たりすると、「Da-iCE昔好きだったから久々に観れてよかった」とか。そんな中で、このアルバムを聴いてもらえたら、「Da-iCEってやっぱりいいなあ」って思ってもらえると思うので、このアルバムを引っ提げてまわるツアーには、そういう人たちも戻って来てくれたらいいなあと。
──『SCENE』というタイトルはどこから?
工藤 いくつかテーマはあったんですが、『SCENE』というのがいちばんしっくりきたんです。僕らはいつもライブのことを考えながら曲を作っていて、ツアーでアルバム全曲やるとして、「いろんなシーンを見せる」っていうのはリリース後のライブのテーマとしてもすごくしっくりきたんですよね。
──まず昨年の夏の終わりに“スターマイン”のリリースがあって。あの曲は明確に多くの人を巻き込みたいという意志を持って作られたポップソングでした。そして1年経ってまたいろんなところで耳にする、息の長いヒットになっていますよね。
工藤 そうですね。去年、本来ならもっと夏のおもしろ施策とかいろいろ絡めてやっていけそうだったんですけど、リリースがズレ込んで夏の終わりになってしまったので。まあ、今年あらためて、いろんなテーマソングにしてもらったりしているし、結果オーライだったんですけど。“CITRUS”の動きに近いというか、シーズンまたいで聴いてもらえる曲になったというのは嬉しいです。こういう曲があればフェスとかでもしっかり戦えるし。
花村 でも今年こそ花火大会で歌いたいですよね。あと野球場でもみんなで歌えたらいいなあって。夏の甲子園でブラスバンドバージョンで聴けたら嬉しいです。高校生の皆さん、ぜひよろしくお願いします(笑)。
──ばっちりイメージできますもんね。アルプススタンドで鳴ってるのを。
花村 かっとばせー○○! ♪一発じゃ足りないのかい──ってね。
大野 めっちゃ合うよね。
花村 ブラスバンド用のスコア作ってバラまきますか(笑)。
大野 去年の夏の終わりのリリース時には、正直「もっと早く」って思ってた部分があったんですけど、逆に、今年から夏祭りとか花火大会は解禁になるところがたくさんあるので、そう思うとほんと結果オーライでしたね、“スタマ”は。
工藤 “スタマ”……。
花村 その言い方初めて聞いたけど(笑)。
大野 すみません。僕も今初めて言いました(笑)。なんか、言い慣れてる感出したくて。本家は“スタマ”って言うんだ?みたいな。
花村 いや、僕たちずっと“スターマイン”って言ってますけど(笑)。
──(笑)。工藤さんは“スターマイン”がここまで刺さる曲になるというのは、予想できていましたか?
工藤 もちろん刺さったらいいなと考えて作りましたけど、ここまでいろんな人に聴かれるようになったというのは嬉しい誤算で、子供達が楽しく踊ってくれたりとか、さすがにそこまでは計算していなかったので。二次、三次の波及が、僕らの手を離れたところで起こるというのを間近で見ていて、すごくありがたいなと思いますし、こういうことができるのも、ダンス&ボーカルグループの中でも僕らぐらいだろうなという自負はありました。
──“スターマイン”はダンスパフォーマンスもとにかくパワフルですよね。
和田 最初はほんとにすごく辛かった記憶が(笑)。
岩岡 この曲に限ったことではないですけど、12年間ずっと、新曲はいつも振り付けが大変なんですよ。もちろんかっこいい振り付けをありがたく頂戴しているんですけど、この曲もめちゃくちゃ大変でした。でもだんだんと消化できてきて、楽曲が持つ楽しさもライブではしっかり表現できているので、みんな互いに成長できているなと感じる曲でもありますね。
Da-iCEの場合、曲を作る時から振り付け師の顔が浮かんでダンスのイメージができているものは、すごくいい曲になる確率が高いんです(工藤)
──それをさらに上回るのが“Funky Jumping”のダンスで。大野 あれはきつい(笑)。
和田 ライブでも終わったあとのMCほどしんどいことないですよね。
──“Funky Jumping”は大野さんも花村さんもしっかりダンスで魅せながらの歌唱。正直、どうですか?
大野 やっぱり歌って踊るって楽しいなあと……あの……正直、辛いっす(笑)。ほんとに僕、すごく難しいなとあらためて思いました。ダンスプラクティスを撮る時はダンスに集中できるので楽しいんですよ。でも歌が入るとどうしても呼吸がブレる時があるので悔しいところもあるんです。Da-iCEを結成して13年目になりますけど、そのバランスを研究し続けてきて、そういう意味では終わりのない楽しいチャレンジが続いているんだなと思いますけどね。
花村 この曲は僕が歌詞を書いたんですけど、作詞の時点で頭の中にはKAZtheFIREがいて。カズくんに振り付けしてもらったらめちゃかっこいいだろうなあって思っていたんです。結構スワッガーな感じというか、オラオラ系かつセクシーな振り付けをする人なので。この楽曲はカズくんをイメージしながら書いてた部分もあります。
工藤 Da-iCEの場合、曲を作る時から振り付け師の顔が浮かんでダンスのイメージができているものは、すごくいい曲になる確率が高いんですよね。“スターマイン”もそうでしたし。
──その作り方ってすごくDa-iCEらしいというか、ならではですよね。
工藤 そうですね。いろんな振り付け師さんがいて、この曲は誰がいいかってすぐに想像がついて。ダンス&ボーカルグループならではかもしれません。
──アルバム1曲目のタイトル曲“Scene”は、作曲が花村さんで、作詞が岩岡さんと花村さんですね。
花村 アルバムもライブも1曲目はお客さんの期待度が高くて、どんなに静かな曲で始めてもテンション高くスタートできるものだっていう話を、前に徹くんとしていたことがあって。その話を思い出して、1曲目をなるべくテンションを上げずにスタートしてみたらどうかなって思ったんです。それで1曲目の1番を書き上げて。徹くんと話していたことを思い浮かべながら書いた曲だったので、徹くんにもジョインしてもらおうということで、2番以降を作るタイミングで、徹くんの歌詞のイメージとか、どういう流れにしたいかというのを聞いてから、1番から全部書き直していきました。
岩岡 最初、想太の中には「これまでのDa-iCE、今のDa-iCE、これからのDa-iCE」と、「いろんなシーンがある」っていうのがテーマとしてあったんですよね。それって小説みたいな感じだなあって思って、そのイメージと当初のテーマを合体させたらちょうどいいのかなあと。
──アルバム1曲目としては珍しいテンション感ですよね。
花村 そうですね。じわじわ上がっていくのがDa-iCEっぽい。
工藤 洋楽っぽくていいよね?
大野 SEで始まっていきなり曲バーンじゃなくて、曲でもまだじわじわくる感じで。
工藤 そう。あの感じがすごく好き。
(“ダンデライオン”は)まだまだこんな場所で立ち止まっていられなくて、僕らは挑戦し続けていきたい、止まらず行きたいっていう歌詞の内容と、僕自身の歌にチャレンジする想いとがリンクしている(大野)
──“ダンデライオン”は、ドラマ『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』の主題歌で、これも花村さんが作詞と作曲を手がけています。この曲は花村さんと大野さんのボーカルのかけ合いが印象的で、そのDメロからラスサビへの流れはすごく引き込まれるものがあります。花村 この曲は雄大くんの歌がいちばんおいしく響く感じを想像しながら作った曲で。なので、Dメロ頭からは雄大くんの歌声がバンッて入ってきてほしいっていうのがあって、ここにいちばん時間をかけました。Dメロが長くなってもいいから、とにかくドラマチックに展開していく方向性がいいということをチームにお願いして。
大野 それは今初めて聞いたんですが、そのいちばん時間をかけてくれたところが、僕の中でもいちばん光る場所ではあるんですけど、いちばん怖い部分でもあって。橋に喩えると、めちゃめちゃ細い、ほんとに綱渡りみたいなところを渡っていくみたいにプレッシャーのかかる部分でもあるし、でもいちばん気持ちを込めたいところでもあるし。ただ気持ちだけを込めて舞い上がってしまったら絶対に渡れない細い綱。今までのDa-iCEの曲の中でも、自分がボーカリストとしてさらに挑戦しないといけないと思わされた楽曲でした。まだまだこんな場所で立ち止まっていられなくて、僕らは挑戦し続けていきたい、止まらず行きたいっていう歌詞の内容と、僕自身の歌にチャレンジする想いとがリンクしているので、より気持ちが込もる楽曲になりました。
花村 Dメロの《折れそうなら/手を取るから》っていうところ、ここを雄大くんに歌ってほしいと思ったのは理由があるんです。『Da-iCE music Lab』で、「誰かがグループを辞めるって言ったらどうしますか?」っていう質問があって、それに対して雄大くんが「首根っこをつかんで離しません」って言ったんですよ。それがすごく頭に残っていて、ここに入れようと思ったんです。
──ああ、確かにここ、すごくグッときます。続いて“Chase”について。とてもスタイリッシュなドラムンベースですが、これもどこか懐かしい感じもありますよね。
花村 イントロとか特にね。
──これは工藤さんがm-floの☆Taku TakahashiさんとJazzin’parkの栗原暁さんとともに作った楽曲ですが。
工藤 トップラインはほぼほぼ僕が作っているんですけど、Takuさんとやるなら、m-floのあのサウンド感でいきたいなと思ったんです。でもm-floの“come again”みたいな2ステップのアプローチはTakuさんもたくさん手がけているので、話し合う中で、今回は2ステップ以外でニュアンスをつけたいとお願いして。そこでドラムンベースみたいなものにしましょうと。Takuさんは個人的にすごくリスペクトしているアーティストのひとりなので一緒に曲作りできること自体が嬉しかったですね。
──あと、和田さんが作詞を手がけた“H?NTO”という曲も面白いですよね。タイトル表記は、最初文字化けかと思ってしまいましたが、いろんな意味を含んでいそうです。
和田 これはみんなに訊かれますね。
花村 これは「ヒント」なの? 「ホント」なの?
和田 あ、やっぱそこ気になります? 読みは「ヒント」なんですけど、ここを「?」にすることで歌詞の最後にあるように「ホント」にもなるし、「ヒント」と読むならほんとはここには「I」が入るわけだから、「I(愛)の真相とは?」ってことなんですよね。でも「I」が「?」になっていることで「真相はわかんないよね」っていう。
──面白い。この曲はどういうふうに作っていったんですか?
和田 今回は、PARIS on the City!っていうバンドのボーカルの明神(ナオ)くんが楽曲提供で来てくれて、同じバンドに小林ファンキ風格っていうふざけた名前のギタリストがいるんですけど(笑)、僕と高校の同級生なんですよ。というところで小林くんには編曲に入ってもらって。歌詞は最初に明神くんが送ってくれたものに対して、ふたりでどんどん修正を入れながら作っていった感じです。いい意味でDa-iCEっぽいなと思えた曲で、最初に聴いた時から、ふたりの歌声がすごく想像できたんですよね。
大野 最初に感じたほんのりあたたかい世界観は残されつつも、抑揚がつけやすいアレンジになったから、R&B色がより出やすくなったというか。すごくナチュラルに聴きやすいんだけど、歌ってみたら実はめちゃくちゃテクニックを必要とする箇所が詰まっているという(笑)。
──大人っぽいグルーヴが心地好い曲です。
花村 自身もバンドをやっているアーティストさんじゃないと作れない曲だなと思いましたね。
大野 ブレスの位置まで計算されてると思います。
──なるほど。その対極にあるのが“コメディアン”だったりするのかなと思うのですが。これはボカロPのてにをはさんが、作詞も作曲もアレンジもすべてを手がけていて。
工藤 1曲、ボカロPさんにお願いしたいというのがあって。てにをはさんは今すごく勢いがある方で、快諾していただけて嬉しかったです。やっぱりメロの作り方がボカロPならではですよね。歌ってない作り方というか。僕らみたいに歌ってメロを作る人じゃなくて、音符を弾いてメロを作る人の曲だなって。その感じは僕らには作れないので面白いです。
想太と雄大の、しっかり歌謡っぽい歌の良さというのは、他のダンス&ボーカルグループの歌唱では表現できないものだと思うので、そこを見せたかったんですよね(工藤)
──そして“ハイボールブギ”がまた攻めた楽曲ですよね。展開が読めない面白さがあって。これは工藤さんの作曲で、映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』の主題歌でもあります。工藤 映画のタイアップのお話をいただいて、Jazzin’parkのおふたりと一緒にスタジオに入って作ったんですけど、その時にはもう自分の中でリファレンスや方向性が明確だったので、それをお伝えして作っていったという感じですね。スローになった時の歌謡曲感と、テンポが上がった時のバーレスク感、どちらも表現したいので曲中でテンポを変えるということでまとまっていったんですけど、想太と雄大の、しっかり歌謡っぽい歌の良さというのは、他のダンス&ボーカルグループの歌唱では表現できないものだと思うので、そこを見せたかったんですよね。そのうえでしっかりダンスでも魅せられる曲にしたくて。歌詞のテーマ的にグラスを持ってダンスをするっていう画が浮かんでいたので、振り付け師のOguri(s**t kingz)くんにも、こういう小道具を使ってこういう構成にしたいっていうのは前もって伝えました。これもビジョンがしっかりできていた曲でしたね。
和田 このダンスも最高です。めっちゃ楽しいですね。結果、s**t kingzって天才の集まりなんだなって思いましたよね。毎回新しいアプローチや構成が出てくるんで。
岩岡 ほんとこれ、死ぬほどいいっす。曲と振り付けが結婚してますよね。
──そしてラストの“Answers”まで全12曲。12年というひとまわりの節目を経て、このアルバムがまた新たなスタートとなるわけで。いろんなシーンを見せるという意味もあると思いますが、ダンス&ボーカルのシーン、J-POPのシーン、そういうシーンごと巻き込みながら進んでいくという気概を表す作品にもなったと思います。
工藤 ありがとうございます。それ、そのまま使わせてもらっていいですか(笑)。
──あはは。どうぞどうぞ(笑)。これからのDa-iCEも楽しみにしています。
“ダンデライオン” MV
●リリース情報
7th ALBUM『SCENE』
〈収録曲〉
1. Scene
2. Funky Jumping
3. ダンデライオン
4. Chase
5. Pioneer
6. スターマイン
7. 絢爛なフィナーレ
8. H?NTO
9. 濡れたバラード
10. コメディアン
11. ハイボールブギ
12. Answers
●ツアー情報
「Da-iCE ARENA TOUR 2023 -SCENE-」
2023年6月3日(土)【千葉】幕張イベントホール16:00/17:00 ※SOLD OUT!!2023年6月4日(日)【千葉】幕張イベントホール14:00/15:00
2023年6月17日(土)【宮城】ゼビオアリーナ仙台16:00/17:00
2023年6月18日(日)【宮城】ゼビオアリーナ仙台14:00/15:00
2023年7月1日(土)【愛知】日本ガイシホール16:00/17:00
2023年7月2日(日)【愛知】日本ガイシホール14:00/15:00
2023年7月22日(土)【大阪】大阪城ホール16:00/17:00
2023年7月23日(日)【大阪】大阪城ホール14:00/15:00
2023年8月11日(金・祝)【福岡】福岡国際センター 16:00/17:00
2023年8月12日(土)【福岡】福岡国際センター 14:00/15:00
2023年9月2日(土)【東京】国立代々木競技場 第一体育館16:00/17:00
2023年9月3日(日)【東京】国立代々木競技場 第一体育館14:00/15:00 ※SOLD OUT!!
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企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部