【インタビュー】常に心を揺さぶり続けるPK shampoo。純粋だからこそ時に破天荒なヤマトパンクスがその真摯なスタンスと新作『Pencil Rocket Opera E.P』について語る

【インタビュー】常に心を揺さぶり続けるPK shampoo。純粋だからこそ時に破天荒なヤマトパンクスがその真摯なスタンスと新作『Pencil Rocket Opera E.P』について語る - photo by 吉岡來美photo by 吉岡來美

何かを歌にして人に聴かせようとする時、自分の中でいちばんじゃないモノを出すのって、ちょっと違和感があるというか

――そして、久々の新作が完成しました。

「1年半以上、経ちましたね。僕、全然曲を書かないんで」

――それは書きたくない? 書けない?

「書こうともしてない、ですね」

――スタートラインにも立ってない(笑)。

「そこが根本にあります(笑)。大学のレポートでも夏休みの宿題でも期限が過ぎてから『なんとかなりませんか?』って言いに行くタイプなんで」

――となると、今回の曲たちはどういった段階で生まれたんですか?

「この曲たちは、前のマネージャーが飛んでリリースできひんかったとか、いろいろあっただけで、わりと結構前からあったんですよ。“SSME”もそうだし、“新世界望遠圧縮”は再録、“S区宗教音楽公論”も上京したタイミングに作ったんで1年ぐらい前にはあって。(リリースとしては)1年半かかってるけど、純粋に新しく書いたのは“落空”だけなんで」

――冒頭を飾る“SSME”は音像もメロディもPK shampooらしい1曲ですけど、具体的なイメージがあって作り始めたんですか?

「作ったのが前すぎて覚えてないんですけど、確か七夕の曲にしようと思って。意外と七夕って雨じゃないですか。織姫と彦星も会えたかわからんみたいな部分もあるし、その前日の話にしよう、っていうところから書いたんやと」

――内容としてはロマンティックなラブソングだなと。

「でも、ダメでもええやん、みたいな曲なんですよね。“SSME”という言葉はスペースシャトルメインエンジンのことなんですけど、ロケットの打ち上げって、大体が失敗じゃないですか」

――すごく悲しいことをサラッと言いますね(笑)。

「僕は月に着いてどうのこうのっていうのも好きなんですけど、どっちかと言うと、そこへ向かうまでの熱意みたいな部分に惹かれるというか。それこそ、宇宙飛行士さんのトレーニングとか、技術者たちの失敗、ネジ1本からいろいろあるわけじゃないですか。宇宙とか星とか、それは対比として置いとくのはいいんですけど、下町の工場の話のほうが惹かれるし。何かに向かって走っていくことの素晴らしさというか、飛んでみようとすることの尊さですかね、言いたかったのは、たぶん」

――“S区宗教音楽公論”は《西武新宿、死のうと思った》という強烈なフレーズから始まりますけど、上京のタイミングで生まれた曲なんですね。

「結構、(曲に)地名を使うんですけど、東京へ行っていきなり渋谷とか言い出すと『ガチか、コイツ?』ってなるじゃないですか(笑)」

――いきなり染まったのか、と(笑)。

「だから、僕とかバンドで上京してきた人が行くところって、渋谷区か新宿区、下北沢がある世田谷区、高円寺とかの杉並区、そこらへんをSで括って、S区としたらそこは避けられるし、まがまがしい雰囲気も出るかなと思ってやってみましたね」

――都会をモチーフに曲を作る場合、街に対しての苛立ちや戸惑いをぶつけがちじゃないですか。でも、この曲は郷愁の念を感じさせつつ、すごく自分自身を問い詰める感じがするんですよ。

「まだ東京のことはそんな知らないんで、『東京』って曲を書くんなら(大阪へ)帰る時でいいかなと思うし。それに、何かを歌にして人に聴かせようとする時、自分の中でいちばんじゃないモノを出すのって、ちょっと違和感があるというか。たとえば、僕はゲームが好きやから詳しいです、って言えるかもしれんけど、自分自身のことのほうが絶対に詳しいはず。だから、自分の話にならざるを得ないというか、なるべきやなっていう僕の考えなんですけど」

ここまできたら全員続けてるだけでええ感じになってるよね、みたいな部分があって。よくも悪くも、そういうギラギラ感はなくなったかもしれない

――実際、PK shampooは世の中や社会へじゃなく、自身の想いを歌いますよね。

「それに世の中のことや社会問題とかを、これは誰かを批判してるわけじゃないんですけど、歌にするのってズルやと思うんですよね。正当な手続きを踏んで社会には訴えかけるべきやと思ってて」

――なんでそこだけ大真面目なんですか?(笑)

「ハハハハ(笑)。なんか、政治とかを訴える時に自分の才能で誤魔化すのは違う気がしてて。ズルじゃないですか、そんなん、って(笑)。だから、それを言いたいなら僕は選挙に出る、っていうタイプ。そうやってる人が悪いっていうわけじゃなくて、僕はそうしない、っていうだけですけど」

――ヤマトさん、選挙に出たいって思ったことあります?

「僕は40歳になったら出るって言ってますけどね。僕は権力がほしいんで(笑)」

――そんな展開も期待したいところですけど(笑)、権力がほしいと言いながらこの曲のタイトルにも公論ってつけてるじゃないですか。公論って、ザックリと言えば「みんなの意見を取り入れましょう」ってことですし。

「宗教と公論って相対してていいなと思うんですけど、僕はどっちも好きで。閉ざされた熱狂も開かれた議論も。で、“SSME”の時の話ともつながりますが、どっちにしようかなって考えてる時間が僕は好きなんです。そういう話を最大の極限値にしたら宗教と公論なんかな、って。揺れ動く悩みの極限を歌ってみたら、それが上京するタイミングやったんで、東京の話みたくなってしまいましたけど」

――“落空”は酒を飲みまくってクダを巻いてる人が作ったとは思えないほど、ロマンティックなスローナンバーです。

「そうですね(笑)。歌い方が歌謡曲っぽいって言われることが多くて、極限まで歌謡曲っぽくしてみようかな、っていう感じで。京都にいる友達のジャズギタリストと一緒にアレンジやって、ジャズやブルースのノリを取り込みつつ、オルタナっぽいロックバンドに落とし込むっていうテーマで作り始めました」

――メロディの動きだったり、ちょっとズレただけで破綻しそうなアレンジだったり、バランスがものすごく繊細な曲ですよね。実験的な気持ちもあったり?

「そう言ってしまえば、実験的なのかもしれないです。ただ、あんまりイキってるわけじゃないんですけど、あんまりロックバンドの歴史とか知らないし、洋楽もほとんど聴いてないんで、これが実験なのか車輪の再発明なのか、よくわかってなくて。だから、ちゃんと音楽の歴史もさらいつつ、実験的なモノも作ってみたいなと思いましたね。これは実験の実験というか、実験にはこういう楽しさもあるんだよっていう、キッザニアみたいな意味合いでやった感覚に近いです」

――“新世界望遠圧縮”を再録した理由はなんだったんですか?

「3年前にリリースした当時、バンドとして勢いが出てきて、お客さんも倍々で増えていってたんですけど、その発売日に緊急事態宣言でタワレコが全部閉まったんですよね。悔しい部分もあったし、ツアーも延期とかキャパ半分とかでやりはしましたけど、そこをちゃんとやり直したいという意味合いを込めました」

――ツアーを繰り返す中で生まれた曲だと思うんですけど、ツアーやライブの意味合いは当時と今で変わってきてます?

「あのころって、多少なりとも『掴みに行くぞ!』っていうか、どっかにそういう気持ちがあって。あと、ちょっと人気があるバンドや世の中の音楽シーンに対して『なんで、あんなバンドが売れんねん』みたいなことを友達と言い合ってたり。それはそれで悪いことやとは思わないんですけどね、若さの特権というか。そこからコロナとかを越えて、今となってはここまできたら全員続けてるだけでええ感じになってるよね、みたいな部分があって。よくも悪くも、そういうギラギラ感はなくなったかもしれないです」

――それこそ、バンドをやってる意味合いにも変化が生まれたようなところも?

「最初にも言ったかもしれないですけど、バンドメンバーって、始めた当初はちょっと他人行儀というか、そんなに仲よくない奴やったんですけど。今となっては、ホンマに親友とか兄弟とか、そういうモノにだんだんなってきて、どうでもよくなったというか。諦めたとか捨て鉢になってるわけでも嫌いになったわけでもなく、本当の意味で純粋にやれてる。いい意味でどうでもよくなってますね」

――そういった中で、目標みたいなモノはありますか?

「政治家ですね」

――そうきますか(笑)。バンドとして単純に売れたいとか、大きな会場でやりたいとかは?

「そんなんは全然ないです。まあ、必要なんやろうなっていうのはありますけど、続けていくためには。やってて楽しいがとにかく第一優先で、あとは結果がついてくればいいかな、みたいなところですね」

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