【インタビュー】TikTokで圧倒的な支持を得るシンガー・tsunaとは何者か? 心の痛みもキラキラも等身大で詰め込んだデビューEP『フィルター・スケルター EP』から、その魅力をひもとく

【インタビュー】TikTokで圧倒的な支持を得るシンガー・tsunaとは何者か? 心の痛みもキラキラも等身大で詰め込んだデビューEP『フィルター・スケルター EP』から、その魅力をひもとく

ギターを持って朝早くに学校行って、人が通らない廊下でギターと歌を練習していて。たまたまその動画を投稿したらすごくバズってびっくりしました

──小5でミクチャに動画投稿を始めた、そのきっかけはミュージカルだったという話ですが。

「そうですね。小4のときに劇団四季の『美女と野獣』と『サウンド・オブ・ミュージック』を観てハマりました。そのときに、お客さんじゃなくてあっち(ステージ)に行きたいって思ったんです。それで母に『ミュージカルやりたい』って言って。地元にミュージカルサークルがあって、そこに入らせてもらいました。2年に1度、小学生から高校生まで、所属している100人くらいで作る大きな舞台があって。脚本もすべてオリジナルで、役者に合わせて毎回先生が書いてくれる本格的なものでした。バレエやタップも習って、すごく本格的な活動でした」

──厳しかったですか?

「かなり(笑)。小学生くらいまでは楽しくやっていたんですけど、中学生くらいからすごく厳しくなって。高1の頃がいちばん厳しくて、裏方とかも全部やらなければいけないし、毎回泣いていましたね」

──でも、「もう嫌だ」とか「辞めたい」みたいな気持ちにはならなかったんですね。

「はい。厳しくしてもらったからこそ、高3で卒業するときはすごく感動したし、同期の人たちとも仲良くなれたし、続けてよかったなあって思いました」

──そこからミュージカルのアクターを目指す方向にはいかなかったんですか?

「ミュージカルはずっと興味があるんですけど、小さい頃から歌が大好きで、歌手になりたいって思っていたし、ミュージカルをやりながら歌の活動もしていたので、自分としては歌の道に進むことしか考えていなかったです。でも今でも、在籍していたミュージカルサークルからお誘いがあって先輩枠で出演したり、そういう関わり方はしているので、ミュージカルから離れて寂しいとかはあまりないですね」

──歌の投稿もずっとやってきていて、TikTokに投稿するようになってからはどんどんフォロワーが増えていきましたよね。ギターはどういうきっかけで始めたんですか?

「中2か中3のときに弾き語りをしている人の姿を見て、私もやりたいと思ったのが最初です。祖母の家にギターが1本あって、それをもらいました。しばらく放置してたんですけど、入った高校が軽音部が強くて、休み時間はみんなギターを弾いてたりして。それで『私もやっぱやりたい』って思ったんです。だから毎朝、学校に早く行ってギターを練習するようになりました。軽音部に入部してたわけではないんですけど」

──投稿した動画がバズって、フォロワーが増えていくという状況についてはどう思っていました?

「自分が中2くらいの頃にTikTokのアプリが使われるようになって、その頃に私もアプリを入れて、最初のほうは観る専門だったんです。でも1度だけ歌をあげてみたらそれがバズって。でもフォロワーは2000人くらい止まりでした。それからフォロワー数は5年くらいほぼそのままで。でも『歌ってみた』投稿は続けていて、それで増えるも減るもなかったんですけど、高2の終わり頃、みんなが受験勉強を始めたくらいのタイミングで──私は大学受験をするつもりはなくて、音楽をやろうと思っていたから──ギターを持って朝早くに学校に行って、人が通らない廊下でギターと歌を練習していて。たまたまその動画を投稿したらすごくバズってしまって、めっちゃびっくりしました。それをずっと続けていたら今のようになったという感じです」

──純粋にtsunaさんの歌を聴いて心を動かされる人が増えたということだと思うんですけど、そのことについてはどう感じていましたか?

「ちょうど高校時代がまるっとコロナ禍だった世代で。高1のときの行事はギリギリ全部できたんですけど、もう高2からはダメで修学旅行もなかったし、高2、高3は何もできなくて。なのにオリンピックはやるとか、ほんとそれが嫌でした。『なんで?』って。動画ではそういう気持ちをぶつけようと思っていました。誰かに感動してほしいというよりは、それがちょっとでもバズれば世の中に届いたりしないかなって。修学旅行、行きたいなっていう気持ちでした(笑)」

──同世代の物申したい気持ちを動画にぶつけたという感じ?

「でも結局オリンピック観ちゃうんですけどね(笑)。だから別にコロナ禍で病んだとかはなくて、コロナ禍だっていろんな遊び方ができるじゃないですか。友達ともリモートで話したり、楽しかったから全然いいんですけど。高3の頃は受験生だったのもあって、みんながちょっと疲れていて。コロナ禍だからほんとはダメだったけど、お昼を一緒に食べながらいろんな話を聞くんですよね。受験生の悩みとか、美容の専門を目指してる子の大変さとか。それを自分にも当てはめて歌詞を書いたりしていて、それが今につながっていると思います」

最初に自分でデモを10曲作って、今回楽曲を作ってくれた方たちに聴いてもらったうえで制作していったので、すべて私の気持ちです

──「Rakuten Music所属 第1弾 次世代メジャー・シンガー発掘オーディション」に応募したきっかけは?

「ずっと歌手になりたかったから音楽の専門学校に通っていて、この2年間で自分のことを応援してくれる場所を探したいなと思っていて。友達は東宝のオーディションを受けたりそういう活動を始めていたから、自分もやらなきゃと思って、いろんな情報を見ていたんですけどよくわかんなくて(笑)。で、先生に教えてもらって、このオーディションを受けることにしました」

──最終的にファイナリストにまで残って。

「オーディションで歌うのは2曲ともカバーだったんですけど、その期間中にサイトに飛んで聴いてくれる人のために、自作曲も“泣想”とかをあげていたり。それを観て応援してくれる人も増えたと思います」

──オーディションの結果としては準グランプリでしたが。

「悔しかったです。ああ、ダメだったかあって。1位と2位って輝き方が違うから悔しいって思ってました(笑)」

──そしてついに『フィルター・スケルター EP』という作品がリリースされます。収録された3曲が、それぞれにtsunaというシンガーの魅力を表現するものになったと思います。

「この作品は、最初に自分でデモを10曲作って、今回楽曲を作ってくれた方たちに聴いてもらったうえで制作していきました。だから提供曲ではあるんですが、すべて私の気持ちを汲み取ってもらってできあがった曲です」

──ああ。tsunaさんの感情や思いを表現していると強く感じられる曲ばかりなのは、そういうプロセスを経ているからなんですね。

「そうなんです。もう、すごい!と思って。自分だったらこんな歌詞にできなかったし、曲もほんとにすごくて。“ONOMATOPÉE”なんてタイトル、絶対自分だったら思いつかない。自分の作った曲をきっとちゃんと聴いてくれたから、こういう言葉を入れてくれたのかなって。だから感情移入はすごくしやすかったです」

──表題曲“フィルター・スケルター”はほんとにtsunaさんの感じていることそのままだと感じられました。

「自分が小中高とずっとSNSで発信する中で、高校時代にはインフルエンサーみたいな子も結構いたのでそれほど特別視されることもなかったんですけど、小学生の頃とかは、小学生がSNSをやることをよく思わない人もいて。それで何かをされたというわけではないけど、そういう見方をする人もいるんだなあって思い出しながら作った曲があって。その曲を聴いてくれたプロデューサーの西岡和哉さんや、nicaさん(作詞)、黒須克彦さん(作曲)がこんなふうに仕上げてくださって。『ああ、確かに私が言いたいのはこれだ』と思える歌になりました」


──歌はどんなふうに表現しようと?

「歌詞を大事に伝えたいなと思いました。今SNSをやってる人は少なからずアンチにも遭遇するだろうし、そういう人にも届いてほしいなって。悲しいときに音楽を聴く人って多いと思うんですけど、そういうときにちょっとでも強い気持ちになってほしくて。だから悲しく歌うんじゃなくて、『大丈夫だよ』『私は強い』みたいな、ほんとは悲しいけど強がる感じで、疾走感とリズム感を意識して歌いました。《こんなもんじゃないんだって 叫びたくて/カメラ回した》っていうところは、自分もTikTokとかに動画を投稿する中で、『私たちの世代はこんなことを思っているんだよ』っていうことを伝えたくてカメラを回しているから、ここは深く考えずにそのまま歌うことができました」

──TikTokでの投稿では、同世代のみんなが思っているだろうなということを表現していきたいという思いがあるんですね。

「最初は自分の思っていることを投稿してたんですけど、コメントに『コロナ禍で休校になって、明けてからも怖くて学校に行けていません』とか、そういう子がめっちゃいて。私自身は友達大好きだし学校大好きだから、学校に早く行きたいほうだったんですけど、学校が好きじゃない子から、コロナ禍を機に『今まで頑張って行ってたけど、一回休んじゃったらもう行けなくなった』とか、『行事ないならつまんないし』みたいなコメントが来るようになって。そうそう、私たちの高校なんて、修学旅行の代わりに3日間実力テストがあったんですよ。もう最悪。休校にしてくれたらいいのに。で、TikTokでそういう発信をするとコメントとかDMとかでみんなそれぞれ感想や状況を教えてくれるから、そういうのを受け取って、みんなの思いを私が歌にしようという気持ちでした」

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