【インタビュー】自分の音楽を心の拠り所にしてほしい――変幻自在の新世代アーティスト・MONONOKE、創作源にある「不安」と、メジャーデビューへの想いを語る

【インタビュー】自分の音楽を心の拠り所にしてほしい――変幻自在の新世代アーティスト・MONONOKE、創作源にある「不安」と、メジャーデビューへの想いを語る

「自分がよければすべてよし」という言葉がめちゃくちゃ嫌いで。それが音楽や歌詞に出ているんじゃないかなと思います

──“17才”でもアイデンティティや自尊心について歌っていると思うんですけど、今はそれらに対してどういう想いや考えがありますか。

「僕の今の音楽の作り方としては、曲の言葉にあまり自分を乗せないようにしていて。MONONOKEの曲は、主人公に代弁してもらってるというのが第一にあります。遠回しに自分とリンクするものもあるし、自分が感じたこともあるんですけど、曲には必ず主人公がいて。僕のアイデンティティみたいなものは乗せないというのがポリシーではありますね。それは、単に恥ずかしいんだと思います。今後は変わってくるかもしれないですけど」

──自分の中でアイデンティティが定まりきってないから、とも言えるのでしょうか。

「いろいろな視点で考えちゃうんですよね。『自分がよければすべてよし』という言葉がめちゃくちゃ嫌いで。『他の人がこう思ってるなら』っていうのがあって『自分』がある気がしていて。悪く言うと、あまり自分がないんだとは思います。生活の中でそういう考え方をしているので、それが音楽や歌詞に出ているんじゃないかなと。音楽を作る時は曲先行なんですけど、曲は生活の中で生まれていて、自分が感じたことが曲になっているんですよね。言葉に関しても音やリズムが大事だと思っていて。だから『主人公がいる』とは言ったんですけど、最初はあまり考えすぎずに言葉をバーッと書いて、あとから『こういう人なのかな』と思って続きを作っていくというのもあります」

──考え込みすぎずに音から感じたものを大事にしているからこそ、メロディにハマった言葉を書くことができているということですよね。ちなみに“トーキョー・ジャーニー”の《ラララ》の部分は、サカナクションの“アイデンティティ”のオマージュでもあったりしますか?

「ああ! 無意識的にあるかもしれないですね。サカナクションはもう本当に影響を受けまくっているので、作る時に多少入ってくるのはあると思います。“トーキョー・ジャーニー”でいうと、僕が『こういう要素が出てるな』と思ったのは、電気グルーヴの“Shangri-La”で。デモの時は“Shangri-La”っぽい雰囲気を僕的には感じてました。《ラララ》は、翻弄されてるけど居場所を見つけて、みんなで和やかにやっている感じが最後にあればいいなと思って選んだ感じでした」

──全体のアレンジの方向性としては、近未来的なものを感じさせつつも、懐かしさや人肌の温度感もある、そのバランスが絶妙だなと思いました。実際、どんなことを考えていましたか。

「80年代のアニメの中の東京って、ネオン街みたいにキラキラしていて、そのイメージと80年代のファンクとか電気的なサウンドは合いそうだなと思って。“トーキョー・ジャーニー”はESME MORIさんにサウンドプロデュースしていただいているんですけど、自分の良さとESMEさんの良さがうまく生きたものになったんじゃないかなと思います。僕がいちばん好きなところはラスサビ前の間奏ですね」

──1ヶ所にとどまらせてくれないような、カオスな心情を表しているサウンドスケープですよね。

「目まぐるしい、ぐるぐるする感じ。渋谷のスクランブル交差点で翻弄されながら、キョロキョロ彷徨っているイメージが間奏に出ていて、それを最初に聴いた時は『“トーキョー・ジャーニー”という曲が生きた』と思いました」

メインストリームとアンダーグラウンドの両立。それがMONONOKE第1章の目標かなと思います

──自分の歌声に関しては、どんな特徴があると思っていますか。世の中に対する諦観や焦燥感みたいな成分と、それでも希望を求めようとする成分のバランスも絶妙な声質だなと思って。

「本当ですか。確かに100%明るいっていうわけじゃない。それは無意識的なのか、潜在的なのか、そういう音楽を作るようになったからなのか……。活動当初は、他の人にボーカルを頼もうかなとか思っていたくらい自分の声に対して肯定的じゃなかったんですけど、曲を作っていくうちに自分の声に慣れてきて、自分の声を生かせるものってなんだろうと考えるようになって楽しくなれたというか。10代なので、声が結構変わるんですよ。2年前とかでも全然声質が違っていて。その不安定さがアルバムのコンセプトにも生きていたのはあると思います」

──“トーキョー・ジャーニー”でメジャーデビューし、この先どんなアーティストでありたいですか。MONONOKEさんが理想とするアーティスト像とはどんなものでしょう。

「かっこいいことを言うわけじゃないですけど、メジャーというものは通過点だと思っていて。ここから始まるというよりかは、『Supply/Demand』から始まっていて、その勢いが“トーキョー・ジャーニー”にある、みたいな。これからも自分の良さと世間的なトレンドみたいなもののバランスを探り合って、いい音楽が作れたらなと思います。メインストリームとアンダーグラウンドの両立みたいなものを、これからMONONOKEでやっていけたらいいなとは思ってますね。それがMONONOKE第1章の目標かなと思います」

──YMOも電気グルーヴもサカナクションも「メインストリームとアンダーグラウンドの両立」をやってきた人たちですよね。

「そうですね。掛け合わせつつ、多くの人に楽しんでもらえる音楽を作るという、先人たちがやられてきたことを僕もやりたいなと思います」

──トップチャートに入る音楽性を変えていきたい、というマインドもありますか。

「僕は基本的に『勝ち負け』みたいなものを音楽の中でするのがすごく嫌なので、そのことはあまり意識してないです。他の人の心の中でMONONOKEという音楽がずっと残ってくれるような活動をしたいなと思います。『変える』というよりかは、安心して聴ける場所に、MONONOKEはなりたいです」

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