パーカーズのハッピーなポップスがぎゅっと凝縮された自己紹介のような初のフルアルバム『POP STAR』から約半年ぶりに届いたEP『君にもらった愛』は、「パーカーズ第二章」と言っても差し支えないほどに、さらにリスナーとの距離を詰めていくような愛に溢れた作品だ。強がってしまう君の本心を包み込む“I LOVE YOU KIMI NO ZENBU”、受け取った愛をちゃんと返していきたいという思いを乗せた“旅するココロ”、自分とは違う君の個性を尊重したいと歌う“Zoo”、愛を手渡すために自分自身を好きでいることを誓う“GOOD DAY”。すべてに共通するのは一方通行ではない愛。パーカーズは豊田賢一郎(G・Vo)とねたろ(G・Cho)のふたりのソングライターを有するが、ふたりから愛をテーマにした曲が自然とこのタイミングで生まれてきたのは、バンドがツアーやイベント出演とライブを積み重ね、一人ひとりのお客さんと真摯に向き合った結果、よりリスナーに対して親身に寄り添いたいという願いが楽曲として表れたからなのではないだろうか。今作に込めた思いと、バンドの変化や今後の展望まで、メンバー全員で語ってもらった。
インタビュー=有本早季
──2024年はパーカーズにとってどんな1年でしたか?「こうやって楽しむんだよ」「一緒にやろうぜ」と言葉にしたり、誰ひとり置いていかないライブの軸が、自分の中で定まってきた(豊田)
豊田 自分たちの掲げている「POPS日本代表」っていうものをより深掘れたと思っていて。これは豊田個人の話なんですけど、ライブ中にお客さんの目をガッと見て、わからなそうな子がいたら、「こうやって楽しむんだよ」「一緒にやろうぜ」と言葉にしたり、誰ひとり置いていかないライブの軸が、自分の中で定まってきた1年でしたね。
フカツ(Dr) 2024年は初めてフルアルバムを出すっていう大きい出来事があったのと、初めてワンマンツアーを6ヶ所──前の年は東名阪だったんですけど、仙台、広島、福岡まで広がったり、JAPAN JAMとか大きなフェスにも出させてもらえて。初めてがすごく多かったので、初めてをちゃんと自分たちのものにしようっていう年でしたね。
ナオキ(G) フルアルバムを出して、今までの曲とはわりと毛色が違ったものが増えた印象があって。新しいパーカーズが見えてきた1年になったかなと思いますね。ライブに関しても、ワンマンツアーの最後の(渋谷クラブ)クアトロで銀テープ出したりとか、演出も新しくなって。今までの自分たちとまた違うステージが見えてきた1年でした。
ねたろ ナオキも言ってくれたんですけど、新しいパーカーズに挑戦できたなっていう感じがあって。たとえば“少年少女よ”とか“地獄ランデブー”みたいなロックチューンをリリースして、ライブでできることが多くなったなと思って。今までのポップスもやりつつ、新しいパーカーズに挑戦できた年だなと思っています。これからロックチューンに進んでいくっていうわけではないんですが。
──初めてのフルアルバム『POP STAR』は大きなトピックでしたよね。自分たちはこういう想いで音楽やってます、こういう幸せを届けたいんですっていう、名刺代わりと言えるような作品でしたが、今作『君にもらった愛』は、パーカーズ第二章に突入したような感じがしていて。より自分と受け手との関係性にまで踏み込んだ、愛に溢れた深みの増したEPだと思いました。
豊田 ありがとうございます!
──EPのタイトルは“旅するココロ”の歌詞から?
フカツ そこから僕が取りました。今回の4曲は「愛」がテーマなのかなって思っていて。どの曲も愛について違う触れ方をしているので。それでみんなに「愛がコンセプトなんじゃないか」って言って、“旅するココロ”の歌詞を取って『君にもらった愛』をタイトルにしました。
──じゃあ曲が揃ってから決まったんですね! コンセプトありきで書いたのかなと思うくらい、4曲のテーマがリンクしていますよね。まずねたろさんの作詞曲から触れていくと、“I LOVE YOU KIMI NO ZENBU”は新境地だなと思って。語りっぽく歌うところや「愛してるぜベイべー!」と叫ぶところもあって、豊田さんのボーカリストとしての新たな一面を引き出すような曲であり、音源だけでライブの様子が目に浮かびました。どういうところから作っていったんですか?
ねたろ まさに、ライブをイメージして作りました。“I LOVE YOU KIMI NO ZENBU”っていうワードも、聴いてくれている人を全力で肯定してあげるぞ!っていう気持ちで書いたんです。曲の根幹にあるのはメンバーに助けられた経験で、それが歌詞にも表れていると思います。
──歌詞でいうと《大丈夫が君の口癖だって気づいてる》のところがいいなと思っていて。表に出していなくても本音に気づいているよっていうメッセージが、今まで以上に心の中に踏み込んでいて、パーカーズが好きなリスナーへの応援歌のように受け取りました。
ねたろ ここはほぼ自分のことというか。自分を客観視して、そう見えているだろうなって思って書きましたね。周りにそう思われているだろうな、メンバーにもそう思われているんじゃないかなって。歌詞自体は誰かのことのように書いていますけど、結構自分の気持ちです。
──そう言われて、みなさんはどうですか?
ナオキ もっとねたろに優しくしようと思いました(笑)。
──(笑)。あと“Zoo”は、4人それぞれが歌うパートもあって、ねたろさんらしい楽しい曲ですよね。
ねたろ 絶対楽しむパート作りたいと思って。でも、それ以外はじっくり聴けるような曲にしたくて。それをミックスしたいなと思って作りました。
──前回のインタビューで、ねたろさんは自分自信と向き合って深掘りしながら歌詞を書くことが多いタイプだっておっしゃっていて。この曲で言うと、どういうところと向き合っているんでしょうか。
ねたろ 今思ったのは、“I LOVE YOU KIMI NO ZENBU”もそうですけど、意外と自分のことだなって。自分がそう思われたくない、人に嫌われたくないっていうのが、歌詞に出てきているなと。“Zoo”で言うと、他人のコンプレックスとか、自分のコンプレックを愛してあげたい、愛されたい、みたいな気持ちが歌詞に出てきたと思います。
──豊田さん曲の“旅するココロ”は「POPS日本代表」を掲げるにふさわしいポップスだなと。パーカーズらしいハモリギターも入りつつ、ライブハウスの規模に留まらない王道感を感じて、アップデートされた印象を受けたんですが、自分たちとして進化させた部分や、こだわった部分があれば聞きたいです。全然怒ってないんだけど、態度が怒ってそうな人は、蓋を開けたら寂しいっていう感情が主なのかなって(豊田)
豊田 まず作曲面では、自分の聴いてきた超王道ポップスを作ってみようと思って、わかりやすいメロディと爽やかな楽器をサウンドには取り入れて。歌詞に関しては、「つがい」「ペア」をイメージしながら、自分の経験も落とし込んで書きました。愛について考えたときに、愛する相手に教えてもらうことって、すごくあると思ったんです。自分の知らない感情や、自分が生きてきた中では気づけなかったいいところとか悪いところとか。そういうのを「ありがとう」って言葉にしてちゃんと伝えたい。それが愛でもあるし、添い遂げる人に対してはそういう感情を抱くのかなって思って書きました。
──アレンジの面についてはぜひナオキさんにもお話を聞きたいです。王道感のあるギターフレーズはどういうところにこだわって作りましたか?
ナオキ 僕自身は速弾きとかが好きなんですよ。だけどそういうのじゃなく、みんなが一回聴いたら歌えちゃうようなフレーズが、ポップスや邦楽ロックには必要だと思っていて。それを踏まえてリードのギターは作るように心がけてます。“旅するココロ”のリードギターに関しては、それが凝縮されたフレーズになっていると思いますね。一回聴いたら離れないと思うんです。一発目のオクターブで弾いているフレーズも歌えると思う。
ねたろ 個人的には、ナオキのギターフレーズは、聴いていてエモくてワクワクするフレーズだと思うんですよね。イントロとAメロの後半部分とかも、これからどうなるんだろうっていう、ギタリストとしては聴いていて次の展開が気になるフレーズだなあと思っています。
──イントロで「これはいい曲だ」って期待させるフレーズになっていると私も思います。
ナオキ ありがとうございます! イントロが少ない曲が増えてきているってよく言うじゃないですか。それに逆行しているというか。イントロで絶対に掴みたいっていう。イントロはギタリストの自分の担当だと思っているので、イントロでどれだけたくさんの人の心を掴めるかっていうのを大事にしてます。
──歌詞の話に戻ると、《怒ってないよ、寂しいの》のところが私は好きで。こういう気持ちのすれ違いってよくあるじゃないですか。それを短いフレーズで端的に表しているのがいいなと。
豊田 これは完全に僕なんです。怒ってはないんですけど、態度として、怒っているようなテンションになってしまうときがあって。なんでだろう?って思ったときに、自分、寂しいのかな?って思って、こういう歌詞ができましたね。正直、この部分って恥ずかしかったんです。自分のパーソナルな部分だから。メンヘラって言葉が合ってるのかわからないですけど(笑)。
一同 (笑)。
豊田 重いなと思って。かっこ悪いじゃないですか。でもきっと、僕みたいに感じている人もいるんじゃないかなって。今まで生きてきた中で、そういう人にも出会ったことあるし。全然怒ってないんだけど、態度が怒ってそうだよねって人もいるだろうし。それって蓋を開けたら寂しいっていう感情が主だったりするのかなって。
──全然かっこ悪くないし、共感する人たくさんいると思います。そういう会話ってよくあるじゃないですか。
豊田 「怒ってるの?」っていう(笑)。
──それを聞くことで怒らせちゃうっていう(笑)。
一同 (笑)。
フカツ 確かにね。難しいなあ。