【インタビュー】帝国喫茶が語る、新作『帝国喫茶Ⅲ ストーリー・オブ・マイ・ライト』。彼らの「光の物語」はなぜこれほどリスナーの心に「届く」のか?

【インタビュー】帝国喫茶が語る、新作『帝国喫茶Ⅲ ストーリー・オブ・マイ・ライト』。彼らの「光の物語」はなぜこれほどリスナーの心に「届く」のか?

“ビフォア・サンライズ”は勇気のいる歌詞でした。でもそれくらいの覚悟ができたなっていうのと、やっぱりバンドって夢とかロマンだと思うので、そこはずっと大事にしていきたい(杉崎)

──アルバムのタイトルやコンセプトが見えたのはどの段階でした?

杉浦 全12曲が出てからですね。アルバムタイトルをどうしようか悩んでいた時に。

杉崎 それぞれが帝国喫茶に向き合って、メンバー同士も向き合ってきた中で、自然とひとつの方向に定まってきたのかなと思います。

アクリ 日常に寄り添った曲たちだと思うし、その日常の中にある思いが3人それぞれのストーリーとして描かれていて、その中に私たちの「光」があるなあって。

杉浦 アルバムはいつもそういう作り方です。4人でツアーを回ってスタジオに入って、ずっと同じ景色を見ている中で、それぞれの視点で曲を書いたとしても、それは帝国喫茶が歌いたいことになっていくんだと思っています。やっぱり僕が「同じ感覚を持っている」と思って誘ったメンバーたちだから。

──そのタイトルやテーマを受けて、アクリさんがアートワークを手がけるということですね。

アクリ そうですね。1作目と2作目はわりとわーっと描いたんですけど、今回はタイトルが決まってからどういうものにしようかとメンバーと話し合って。暗めの背景に輝いている本がふわふわと浮かんでいるんですけど、12曲の物語があって、その物語を開いてくれた皆さんに光が灯るように、皆さんの心に寄り添えるようになってほしいという思いで描きました。いろんな物語があって、それが1枚のアルバムになっているというイメージでしたね。

──アルバム最後の“ビフォア・サンライズ”は杉崎さんの作詞・作曲ですが、これは帝国喫茶がこの4人で歩んでいくという、とてもポジティブで力強い曲になりましたね。

杉崎 まさにバンドと向き合っていく中で感じていることを曲にしました。

──曲が進むにつれてテンポが変化していく構成ですが、曲を作った段階からイメージしていたものですか?

杉崎 そうですね。いろんな面がある、いろんな楽曲があるというのが帝国喫茶らしさのひとつだと思うので、1曲の中でもいろんなストーリーがあるということを表したくて、テンポを何段階も変えていきました。まずはバンドの中の一個人、僕だけじゃなくメンバー一人ひとりのことを思い描いて、その個人が4人集まって初めてこのバンドなんだというのを2つ目のブロックで描いています。そこからじゃあバンドとしてひとつの塊になったとき、今度は帝国喫茶としてお客さんにどう向き合うかというので、それがいちばん表れるのがライブなんですよね。なのでライブ感の強いアレンジと演奏にして、それをギュッとひとつの曲にしました。

──ほんとにライブで聴くのが楽しみになる曲です。

疋田 ライブに来てくれるお客さんにも、一人ひとりがしっかり持っている「光」を再確認してもらえるのが“ビフォア・サンライズ”だと思います。夜明け前、何かが起きる瞬間のこのわくわくする感じ、キラッと光る場所に向かっていくぞというのが、《僕らフォーピースバンド》と歌う歌詞にも表れていて。

──そこに続く《燃えつきるまで輝き続ける光》という歌詞などは、バンドとして非常に強い決意の表明だと感じられました。

杉崎 そうですね。結構勇気のいる歌詞でした。でもそれくらいの覚悟ができたなっていうのと、やっぱりバンドって夢とかロマンだと思うので、そこはずっと大事にしていきたいなと思ってます。

──逃げずに、はぐらかさずに書いた曲だという気がします。

杉浦 最初に聴いた時、今いちばん必要な曲だなあと思って。ライブでは杉崎は後ろのほうからすべてを見ているんですよね。メンバーとお客さんが全部見える唯一の人間。バンドが何をしてお客さんがどう反応するかっていうのをすべて見てる人が書いた曲だから、4人がひとつにまとまってひとつのメッセージを伝えていくのが帝国喫茶だということがちゃんと1曲に表現されてるんですよね。「バンドやろうぜ」ってほんとに「なんとなく」誘ったところから始まって、今こうした覚悟を持った曲をこのアルバムの最後に書いてくれたことがボーカルとして嬉しいし、この曲ができて“なんとなく”も説得力が増したというか。タクティのソングライターとしての成長もすごく感じるし、これから歌っていくのが楽しみな曲です。ちゃんと伝えていかなきゃいけない曲だなと思っています。

アクリ イントロがめっちゃ好きなんですよ。そこから3部構成でテンポが変わっていくのもわくわくするし。この曲、レコーディングする前から早くライブでやりたいと思える曲でした。

【インタビュー】帝国喫茶が語る、新作『帝国喫茶Ⅲ ストーリー・オブ・マイ・ライト』。彼らの「光の物語」はなぜこれほどリスナーの心に「届く」のか?

聴いてくれる人、ライブに足を運んでくれる人がいたからこそ「届けたい」と思えたし、バンドをひとつにする機会を与えてくれた(杉浦)

──この曲だけじゃなく、疋田さんの作った“sha na naなjourney”もそうだし、ライブバンド讃歌というか、帝国喫茶に対してそれぞれが抱く「光」がすごく表れていますよね。そういう思いがそれぞれから自然に出てきているのが興味深いです。

杉浦 制作している期間にツアーを2本回れたのも大きくて。お客さんが観に来てくれて、帝国喫茶の音楽を聴いてくれる人がいると実感したからこそ、もっと伝えるためにはって、それぞれが考えて作ってきたんだと思います。それで4人がひとつにまとまらないと伝わらないということに行き着いたんですよね。そこから4人の会話ももっと増えたし、そういうバンドの動きやストーリーも含めて伝わったらいいかなと。


──あと “ハル”なんかも今の帝国喫茶だからこその曲かなと思います。杉崎さんはやっぱり、「杉浦さんが歌う」ということをイメージして作っているような気がして。

杉崎 確かに。自分で歌うなら恥ずかしくて書けなかったかも。

──《「あのね 私、桜の妖精なの」と君が笑った》という1行目にグッと引き込まれるんですよね。

杉浦 でも、タクティはこれまでも物語がしっかりあって、頭の中にあるファンタジーな部分、ロマンチックな部分を表現する曲が多くて、そういう意味では今回もいい曲だなって素直に思いました。そこは自分で言うのもあれですけど、自分にはロマンチックな部分もあるので(笑)、これはむしろ歌いやすいですね。タクティの曲は歌いやすいんですよ。

──ここの杉浦さんの歌唱がすごくいいです。不思議な歌詞なのにその情景がふっと自然に浮かびますよね。

杉崎 そうですね。この情景をいちばん伝えられるのは絵でも文章でもなく、歌だっていう感覚があります。

──素晴らしいアルバムができました。このあと、アルバムを引っ提げてのライブも決まっていますが、どんなツアーにしたいですか?

杉浦 やっぱり「どうやったら届くか」ということを考えて作ったアルバムなので、これがどんな形で受け取ってもらえるかも楽しみです。やっぱり聴いてくれる人、ライブに足を運んでくれる人がいたからこそ「届けたい」と思えたし、バンドをひとつにする機会を与えてくれたわけですし、自分たちが音楽をやる理由をくれたのは、そういう聴いてくれてる人たちがいるからなんですよね。その人たちにライブでお返しできたらいいし、帝国喫茶を知らない人にもちゃんと届くように、もっと突き詰めて「どうやったら伝わるか」を考えていきたいなと思います。


帝国喫茶のインタビューは3月31日発売の『ROCKIN'ON JAPAN』5月号にも掲載!

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