2014年7月5日、この日は9回目のデビュー記念日前日だった。つまり、日付が変われば10周年への一歩が始まるメモリアルな日にこの京セラドーム公演は行われた。そのことへの思いはライヴ中のMCでTAKUYA∞は何度も話してくれる。
そして、スクリーンが上がり、半円形のドームの中程――2階のような位置と言えばいいか――のステージに立つ6人が姿を現す。1曲目は“GOLD”。TAKUYA∞のこの日最初のひと言――「バッコリいこうぜ!」――を会場は最高のテンションで迎える。メロディを一緒に口ずさんでいる克哉(G)、集中した表情でギターかき鳴らす彰、信人&真太郎のリズムセクションは弾むようなビートをたたき出す。そして、誠果が何度もモニターに写される。このライヴの根底に流れる「6人」感が会場全体に行き渡っていく。「始まったぞー! 京セラドームでUVERがボッコボコに暴れてるところを観たいってやつが何万人いるんだ!? バッコリあがっていこうぜー!」というTAKUYA∞のMCに続いて披露されたのは“KINJITO”。凄まじいアジテーションとしてのパワーを持った楽曲だ。ラストのサビ前、誠果のサックスが大歓声を浴びている。
ここで、恒例の真太郎のMCに突入。「みなさん、グローブ持ってきましたか、ここ野球するところなんですよ――僕はグローブ忘れました。バットとボール2個しか持って来ませんでした。女性はちゃんとキャッチャーミット持って来てますよね、縦に構えた……」――すると、TAKUYA∞が「そのバットもボールも出させねえからな!」とツッコミを入れる。という最高の雰囲気のなか、真太郎は「そんなUVERworldに誠果が戻ってきました!」と叫び、次なるブロックへとなだれ込んでいく。
Tシャツを脱いだ真太郎がドラムソロを叩き出す。そこに絡むTAKUYA∞の口笛――“7th Trigger”である。TAKUYA∞が歌い上げるヴァース部分では大きなハンドクラップが巻き起こり、“ace of ace”“浮世CROSSING”の合唱によって、会場はいよいよ一体感を増していく。時にオーディエンスを指差し、時に天を指すTAKUYA∞のアクションが完璧にきまっていく。曲の流れ、メロディの流れに導かれるように繰り出されるそのアクションの美しさはこの日、やはり特に際立っていたように思う。
“REVERSI”“LIMITLESS”が終わったところで、TAKUYA∞のイヤモニが不調なようでスタッフが背中から配線を変えようとする――と、「おい、やめろよ(笑)」とむずがるTAKUYA∞。「タオル回した曲(ENERGY)あたりからこれ(イヤモニ)がつぶれててさ、聴こえなくてさ……俺、ずっとひとりだったんだぜ」という言葉に会場が沸きに沸いている。続いて、“23ワード”。会場のスクリーンがモノクロの映像に変わり、どこかセンチメタルでノスタルジックな空気が漂い出す。曲間、TAKUYA∞は無数のハンドウェーブを眺めながら、「歌えないやつは心の中でどうか歌ってくれ!」「まだまだカッコいい姿、見せてやるからな!」と言った。
「とっても楽しいんだよ、今。曲を作っても、ツアー回っても、とても楽しい。インディーズ時代の、結成した時に戻ったみたいにツアーを回れてる。楽しいからさ、移動とかもレンタカー借りてさ、俺運転してんだよ。ほんとだよ? でもさ、それが楽しいんだよ。だからさ、楽しいものを守りたいからさ。今日も素敵なライヴにしなきゃって思ってるんだよね」といって映し出されたのは信人。穏やかな笑いが会場に広がる中、「みんなもいるでしょ、君が哀しい顔をしたら哀しんでくれる人、いるでしょ。大切な人をを哀しませないためにも、今日最高に笑って過ごしましょう。俺たちの始まりの合唱」。そして“Ø choir”の立ち上がりの言葉をTAKUYA∞が歌い出す。スクリーンには街の風景が映し出され、そこにひと言ひと言、歌詞が現れる。これが本当に感動的だった。「それぞれの大切な人の代わりはいない」「人生が100年だったとして、70億人なら、ひとり一秒ずつ出会ったって全員には出会えない」――このメッセージを攻撃的にではなく、ひとりひとりの悩みや現在を包み込むように伝えようとするのが今のUVERworldである。そして、『Ø CHOIR』とはそういうアルバムなのだと思う。
「京セラドームでライヴができるはずがないって言われたけど――成功した途端、手の平を返す者たちに告ぐ――俺たちが“NO.1”」。ここからが本当のクライマックスである。言うべきこと、歌うべきこと、届けるべき思いだけが詰まった時間になっていく。
続く、この日の21曲目は、“CORE PRIDE”だった。ファイティングモード全開のイントロが鳴り響き、TAKUYA∞がリリックを絡めていく。ガッと天を指差すTAKUYA∞の指先をモニターが見事にとらえる。ラストのメロディをいつの間にか会場中が大合唱している。この「熱さ」「思い」を共有できる4万人というのは、まさに「Crew」と呼ばれるにふさわしいとしかいいようがないだろう。そして、“ナノ・セカンド”だ。会場を揺らすデジタルビート、4万人のジャンプ。《本気は痛みを厭わない》というフレーズが4万人の本気を打ち抜いていく。濃く、深く、熱い空気、歌詞のひとつひとつが、全開になった心にそのまま飛び込み、そして残っていく。そんなほぼ放心状態のオーディンエンスにTAKUYA∞は語りかける。
「ありがとうございました。まだまだこれから始まる俺たちの、6人での旅、チームUVERworld。新しい時代に足跡をつける、俺たちがUVERworldだ! よろしく!」。この日、TAKUYA∞が叫んだ最後の言葉は、そんな10年目の「宣言」だった。
さらに熱く、JAPAN9月号でも書きますので、そちらもぜひ読んでください。(小栁大輔)
■セットリスト
01.GOLD
02.KINJITO
03.Don’t Think.Feel
04.UNKNOWN ORCHESTRA
05.CHANCE!
06.7th Trigger
07.ace of ace
08.浮世CROSSING
09.ENERGY
10.IMPACT
11.REVERSI
12.LIMITLESS
13.23ワード
14.Ø choir
15.THE OVER
16.Massive
17.Wizard CLUB
18.6つの風
19.Born Slippy
20.NO.1
21.CORE PRIDE
22.ナノ・セカンド
23.7日目の決意
24.MONDO PIECE