NANO-MUGEN FES.2014(1日目)@横浜アリーナ

NANO-MUGEN FES.2014(1日目)@横浜アリーナ - ASIAN KUNG-FU GENERATIONASIAN KUNG-FU GENERATION
「2年ぶりの『NANO-MUGEN FES.ということで、皆さん盛り上がってますかー!』」という、ASIAN KUNG-FU GENERATION・山田貴洋(B・Vo)&伊地知潔(Dr)による前説で幕を開けた「NANO-MUGEN FES. 2014」は、今年も素晴らしい出演ラインナップを揃えて横浜アリーナで2日間開催。MAIN STAGE / ELECTRIC STAGE / SIDE STAGEと、隣接した3ステージが稼働して次々に熱演が繰り広げられる。前説コンビも慣れたもので、潔によればほとんど打ち合わせもせず、場所取り禁止や体調管理などの注意事項アナウンスを散りばめながら、まずはユルユルとしたムードでスタートしたこの初日である。

NANO-MUGEN FES.2014(1日目)@横浜アリーナ - KANA-BOONKANA-BOON
土曜日午前中ののんびりしたムードを一変させるように、この日のトップ・バッターを務めたのは初出演のKANA-BOONだ。フル・アルバムで言えばまだ一枚しか発表していないバンドであるにも関わらず、アリーナをいきなりグレイテスト・ヒッツ・ライヴみたいなムードに叩き込む楽曲の粒ぞろい感と人気はさすが。「海外のバンドとこうして一緒にやらせて貰うのは初めてで、パンフレットを見るとアーティスト名の横に出身国が書いてあって。おおおカッコいい、って思ってたら、グッドモーニングアメリカ[JP]ってなってて(笑)」と飯田祐馬(B)が笑いを誘い、谷口鮪(Vo・G)は8/27リリース予定のニュー・シングル“生きてゆく”が前日にマスタリングをフィニッシュしたことを伝えながら、鮮烈さと力強さをメキメキと向上させているバンド・サウンドに乗せてこの曲を披露し、朝一番のアリーナを沸かせてくれた。
NANO-MUGEN FES.2014(1日目)@横浜アリーナ - It's A MusicalIt's A Musical
海外勢の一組目となるIt’s A Musicalは、スウェーデン人のエラ(Vo・Key)とドイツ人のロバート(Vo・Dr・Vibes)の2人による男女ポップ・デュオ。ハーモニー・ヴォーカルとオルガン、ヴァイブラフォンが織り成す柔らかいデイドリーム・ポップで、場内を満たしてくれる。“The Nap”の演奏を一度トチって笑いながら仕切り直し、最後にはハート・マークのハンド・サインを掲げるエラの姿が何ともキュートだった。

NANO-MUGEN FES.2014(1日目)@横浜アリーナ - TEGAN AND SARATEGAN AND SARA
今度はアジカン・喜多建介(G・Vo)&後藤正文(Vo・G)のコンビが登場。長いこと出演をオファーし続けていたティーガン・アンド・サラの参加が遂に実現したこと、更には「NANO-MUGEN FES. 2014 AFTER SHOW」として単独公演(7/14、@代官山UNIT)も決定していることについて「ナダ・サーフに続く、やったぜシリーズ」と上気して語るゴッチである。一方の喜多は会場内に新設した「Ken’s CAFE Sunday in Brooklyn」について語り、話題のティーガン・アンド・サラのステージへと繋いでゆく。カナダ人の双子姉妹ユニットは揃いのブラック・レザー・ジャケットでクールに決め、2000年フジ・ロック以来幾度かの来日経験を嬉しそうに語りながら、総勢6名のバンド・セットで驚くほどエモーショナルに迫るライヴを繰り広げていった。
NANO-MUGEN FES.2014(1日目)@横浜アリーナ - グッドモーニングアメリカグッドモーニングアメリカ
そしてこちらも初出演となる、グッドモーニングアメリカ。ASIAN KUNG-FU GENERATIONにちなんでブルース・リーの黄色いボディ・スーツを纏い、ヌンチャクを振り回しながら姿を見せるたなしん(B・Cho)が「ファイヤー!」コールで煽り立てると、いきなり巨大なシンガロングを巻き起こす“空ばかり見ていた”で4人が熱演をスタートさせる。渡邊幸一(G・Cho)は、コンピCDをリリースしてライヴ・イヴェントを開催する、という点で「NANO-MUGEN FES.」と共通した活動を行うグドモに触れながら「NANO-MUGEN FES.」のスケールの大きさと歴史にリスペクトの思いを寄せ、“拝啓、ツラツストラ”“未来へのスパイラル”といった楽曲でアップリフティングかつエモーショナルなパフォーマンスを加速させるのだった。

一方アリーナ4Fに設営されている「Kiyoshi’s Bar GUESTReALM」では、この日最初となるアクトのArisa Safuが出演。ビートルズを泥臭くカヴァーする“Come Together”やオリジナル曲と、「ブルースが大好きなんですよ」と自ら語る通りの本格派ブルース歌唱&ギターがカッコいい。この後にも同ステージには、中嶋康孝(BIGNOUN)やHi,how are you?らが出演した。
NANO-MUGEN FES.2014(1日目)@横浜アリーナ - ストレイテナーストレイテナー
MAIN STAGEに戻ると、「NANO-MUGEN FES.」では長年の共闘バンドと呼ぶべき存在になっているストレイテナーが、ホリエアツシ(Vo・G・Piano)の「音楽の嵐を吹かせに来ました!」という第一声とともに放つ“Melodic Storm”でスタート。広大な会場を一気に掌握するアリーナ・ロックの信頼感は抜群で、4人の演奏スキルが緩急自在に場内の空気をコントロールしてしまう。激しい渇望感をその歌詞に乗せ、新たな視界を目指すハイブリッド・ロックンロールの新曲“Super Magical Illusion”や、ホリエの美しいピアノが壮大な展開を導く“MARCH”、トドメに“ROCKSTEADY”と、フェスと共に歩むドラマティックなライヴであった。アジカン・喜多が紹介していた新設エリアの「Ken’s CAFE Sunday in Brooklyn」では、Ropesに続いて岩崎愛が登場である。ユニークな歌詞フレーズとメロディを伝える“どっぴんしゃーらー”など、優しくも力強い歌世界に引き込んでくれた。この後にも同ステージでは、タオル一丁を頭に巻いたアコギ弾き語りでエモーショナルな歌詞を浮き彫りにする猪股 and the Guitarの熱演が繰り広げられていた。

さて、喜多&山田がお揃いのグッズTシャツ姿で「潔が最初にハマった」「小さなお子さんでも楽しめる」と紹介するのは、米ミネソタ出身のアダム・ヤングによるプロジェクト=アウル・シティーだ。つい先頃の7/9には『ザ・ベスト・オブ・アウル・シティー』もリリースされたが、ネクタイにベストを合わせた出で立ちのアダムを中心に、バンド・セットの華やかなシンセ・ポップでステージを繰り広げる。“Fireflies”ではオーディエンスにがっつりとコーラスを預け、音楽性の豊かさとヒットを同時に狙う楽曲デザインの数々には目眩を起こしそうだ。最後には“Good Time”を放ち、オリジナル音源でデュエットしていたカーリー・レイ・ジェプセンの代わりに女性キーボード奏者もリード・ヴォーカルをとって見事なクライマックス感を描き出していた。
NANO-MUGEN FES.2014(1日目)@横浜アリーナ - LOSTAGELOSTAGE
そんなアウル・シティーのエレクトロな華やぎとは好対照に、ギラッギラの重厚な男気3ピース・ロックが凄まじかったLOSTAGE。いきなり『NANO-MUGEN COMPILATION 2014』に収録された“FLOWERS / 路傍の花”からの新曲連打で、たった3人の轟音シンフォニーと呼ぶべきサウンドを五味岳久(Vo・B)の歌声が搔い潜って来る。その岳久は「ロック・バンドをやるということにね、出来れば人に頭を下げずにやっていきたいんだけど」「今日はこういう時間を作って頂いて、本当に感謝しております」と語り、この8月にリリース予定のニュー・アルバム『GUITAR』も告知。アリーナ・サイズに映えるどころか、アリーナをなぎ倒さんばかりの強烈なステージであった。

NANO-MUGEN FES.2014(1日目)@横浜アリーナ - くるりくるり
そして、MAIN STAGEに立ったのは山本幹宗(G)と福田洋子(Dr)をサポートに迎えた5人編成のくるりである。“Morning Paper”の新たな物語を語り始めるような決定的にドラマティックなアンサンブル、そして“ワールズエンド・スーパーノヴァ”のしなやかで滑らかに響き渡るグルーヴと、ヴァラエティ豊かな楽曲群にヴィヴィッドな演奏が映えるステージを描き出していった。美しいメロディと歌詞に震える“Loveless”、一方でエスニックなフレーズが次々に飛び出しながら押し進めるストレンジなゴッタ煮ロックの“Liverty & Gravity”といった、くるりの現在地が垣間みられる新曲群の披露も嬉しい。「ゴッチの方が眼鏡はかっこいいけど、俺の方が目は悪い」(岸田繁/Vo・G)と笑いも振り撒きながら、最終ナンバー“東京”まで、くるりの音楽世界にどっぷりと浸る時間であった。
NANO-MUGEN FES.2014(1日目)@横浜アリーナ - THE YOUNG PUNX(with special guests RedNPink)THE YOUNG PUNX(with special guests RedNPink)
この後、ELECTRIC STAGEには海外勢にしてお馴染みのTHE YOUNG PUNXが登場。ハル・リットソンが前線でいきなりSOIL&”PIMP”SESSIONSのタブゾンビ(Trumpet)&元晴(Sax)を連れ立ち、ホーン・サウンドが吹き荒れるブレイクビーツでオーディエンスを跳ね上がらせる。1日の終盤戦に追い込みをかけるようなアゲっぷりはさすがで、スペシャル・ゲストとしてセクシーな女性ヴォーカル・デュオのRedNPinkも加わるわ、フロアには巨大バルーンが投入されるわ、ステージに炎が炊かれるわの狂騒ぶり。ハルはギターを抱えたままぶっ倒れていたが、この後深夜には渋谷のSOUND MUSEUM VISIONでイヴェント出演することも告げ、変わらぬパーティ野郎ぶりを見せていて最高だった。

NANO-MUGEN FES.2014(1日目)@横浜アリーナ - The RentalsThe Rentals
喜多&山田がここで再びのコンビMCというところに、アコギを携えて後から登場したゴッチ。結局、ギターは弾かずに喜多に預けて、その場で恒例のゲン担ぎといった印象の四股を踏む。オーディエンスが一斉に「ヨイショー!」の声と拍手喝采を送ったところで、この日トリ前の出演となるザ・レンタルズの出番だ。「NANO-MUGEN FES.」には2011年以来の出演となるザ・レンタルズだが、ゴッチ主催のonly in dreamsから実に15年ぶりとなるアルバム『Lost in Alphaville』をリリース予定(会場では特別先行販売も)であり、喜多&山田が語っていたようにアッシュのティム・ウィーラー(G・Vo)、OZMAのライアン・スレガー(G)、AFIのハンター・バーガン(B)という豪華メンバーを率いるマット・シャープ(Vo)である。新作曲“Thought Of Sound”を皮切りに、“Please Let That Be You”やヒップ・ホップ・マナーを取り入れた“Big Daddy C.”など名パワー・ポップ・チューンの数々を飛び跳ねながら繰り出してゆく。女性キーボード奏者2名によるコーラス・ワークも華やかで、終盤にはティムにリード・ヴォーカルを預けてのアッシュ“Girl From Mars”(マットはここでベースをプレイ)も披露されるなど、世代と出身地を越えてパワー・ポップの魂を繋ぐスペシャルな一幕であった。

NANO-MUGEN FES.2014(1日目)@横浜アリーナ - ASIAN KUNG-FU GENERATIONASIAN KUNG-FU GENERATION
さあ、いよいよこの日のクローザーを務めるASIAN KUNG-FU GENERATIONの登場である。一日の疲れも見せずに盛大な歓声を送るオーディエンスを前に、さっそく4ピース・アンサンブルの深部を見せつける“サイレン”、そして“Re:Re:”。極彩色の可動照明(ゴッチのMCによれば、今回も太陽光蓄電池によるライティングが大活躍。一日を通して本当に美しい演出を加えていた)に包まれながら熱演を繰り広げる。“暗号のワルツ”や“桜草”といった『ファンクラブ』期の楽曲群も届けるとゴッチは、「やっぱり、『NANO-MUGEN』のステージは気が引き締まりますね」「新しい技術をステージに持ち込んだりとか、そういうふうに舵を切ったら世の中が良くなるんじゃないかな」「だから、もっと求めてください。もっといい曲書けや、とか。書くから」と頼もしい言葉を残し、その言葉の証明と言わんばかりの新曲“スタンダード”(『NANO-MUGEN COMPILATION 2014』収録)を繰り出すのだった。そして疾走感に満ち溢れた“リライト”や、ゴッチの歌声が伸びた先で雄々しい咆哮を上げるような“ソラニン”といった名演の果てに、“マーチングバンド”で本編ラストを飾る。

NANO-MUGEN FES.2014(1日目)@横浜アリーナ - ASIAN KUNG-FU GENERATIONASIAN KUNG-FU GENERATION
アンコールに応えて再登場すると、ゴッチの両脇を固めるようにマット・シャープとティム・ウィーラーの姿が。この2人が四股を踏んで「ヨイショー!」の掛け声を浴びる姿には、何を教えてるんだと突っ込みたい衝動に駆られたが、この後には2人を加えた6人編成でウィーザー(マットは以前このバンドに在籍していた)の名曲“Undone - The Sweater Song”をカヴァーする。ゴッチはタンバリンを振るい、山田はアコースティック・ギター、マットがウィーザー時代同様にベースを担当する編成で、喜多とティムの楽しげで熱いギターの交錯も素晴らしかった。そしてマットとティムを見送ると、アジカンの4人は最後に目下の最新シングル“今を生きて”を披露して大団円へと向かっていった。若手から共にキャリアを重ねて来た戦友たち、そして世界から憧れのバンドを招き、遂には彼らの新作リリースまでサポートしてしまう。アジカン・メンバーによる、ありとあらゆるバンドマンのロマンと情熱が詰まった「NANO-MUGEN FES.」は本当に素晴らしい。あらためて、そう痛感せざるを得ない一日であった。とはいえここでようやく折り返し地点。2日目にはどんなドラマが待ち受けているのか、楽しみだ。(小池宏和)
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