ABEDON@Billboard Live TOKYO

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「今日のプレミアム・ライヴにようこそ! いつもはもっと、マディソン・スクエア・ガーデンとか、そういうところでやってるんだけど(笑)、今日は君たちと生で触れ合いたいということで、しかも日本に来れて、本当に嬉しいです!」と来日スター風に語りかけるABEDONこと阿部義晴に、Billboard Live TOKYO満場のオーディエンスから拍手が降り注ぐ――ABEDON改名後初の音源として3月にリリースされたアルバム『BLACK AND WHITE』を引っ提げて、東京2DAYS/大阪2DAYS/仙台(追加公演)の計5公演にわたって開催されている「ABEDON SPECIAL 2DAYS “BLACK AND WHITE” featuring 八熊慎一, 奥田民生, 木内健, 斎藤有太」の2日目、東京・六本木、Billboard Live TOKYO。着席バースタイルの会場&1日2公演という特殊なライヴながら、ABEDON(Vo・Key・G)に加え八熊慎一(B・G・Perc・Vo/SPARKS GO GO)/奥田民生(Vo・G・B・Dr)/木内健(G・B・Cho)/斎藤有太(Key)といった辣腕陣が一堂に会して響かせるその音楽世界は、やはりどこまでも豊潤で、マジカルで、ポップな多幸感に満ちていた。

ABEDON@Billboard Live TOKYO
フロアのテーブルの隙間を縫うようにして登場、手にしたシャンパングラスを最前列のテーブルに置きつつ「やだぁ、近いから! 香水つけてきたから」と笑いかけて、ただでさえ近い客席とステージの距離を一気に縮めてみせるABEDON。ステージ上の機材を操作して鼓動のようなリズム音を出しては「こんな気持ちだわ。ドキドキだね!」と語りかけたところへメンバーが登場。民生がドラム、八熊がベース、斎藤がキーボード、木内がギターの位置につく……この後に大阪2日間+仙台公演が控えているので、演奏内容についてはここでは一部の楽曲に触れるのみとさせていただくが、雄大なスケール感に満ちた“SUN SET SUN”などアルバム『BLACK AND WHITE』の楽曲のみならず、これまで発表してきたソロ名曲群のピアノ・バラードなど、さらにABEDON作曲によるユニコーン“WAO!”のカバーに洋楽カバーまでがっつり盛り込んで、充実のセットリストを構成してみせていた。

ABEDON@Billboard Live TOKYO
冒頭に書いた楽器クレジットの通り、基本的にはずっとキーボード(稀にカウベル)を担当していた斎藤を除いては、曲によって「ABEDON&八熊のWベース/木内ギター/民生ドラム」「ABEDONアコギ/民生エレキ/木内ベース/八熊ドラム」「ABEDON生ピアノ/民生アコギ/木内シェーカー/八熊パーカッション」と次々にフォーメーションを変えたり、ピアノを前代未聞の形態でセッションするなど、マルチプレイヤー揃いならではの自由自在なステージングを展開していた5人。加えて、「木内健! 福井からやってきました」とメンバー紹介を始めては「奥田民生さんです。そこのトイレからやってきました!」とフロアを沸かせ、生ピアノ弾き語りコーナーの合間に「口数が多い人は音数も多い。男は黙って背中で弾きたいもんですねえ……」と神妙な口調で語ったかと思いきや本当に背中で鍵盤をドジャーンと鳴らし――といった具合に随所に滲むABEDONのサービス精神が、1時間半にわたって観客を1mmたりとも飽きさせない、アットホームなライヴ空間を作り出していた。

ABEDON@Billboard Live TOKYO
そして何より、時に後期ビートルズ直系の名曲バラードだったり、ポップの限界を押し広げるようなアグレッシヴなナンバーだったり、曲ごとに表情こそ異なるものの、音と音、コードとコードを組み合わせ紡ぎ出すことで人の心を抑え難く狂おしく震わせ高揚させる、文字通り魔法としての音楽の快楽と凄味を、ABEDONの楽曲は確かに備えている――ということを、この日演奏された1曲1曲が雄弁に物語っていた。「生ピアノがあるところでライヴをやるのは久しぶりなので、適当に、自由にやろうかなと……」と照れくさそうに語りつつ、グランドピアノ弾き語りの凛とした歌と空気感でオーディエンスを魅了するABEDON。「だいたい僕はですね、日本一鍵盤を触らないキーボーディストなんですけど(笑)。それはなぜかと言うと、ロックが好きだから。ロックにキーボードはあんまり要らないと思うから」と話してはいたが、愛機MOOG Sub Phattyを駆使してひとり多重録音大会を繰り広げたり、斎藤との連弾でジャズ・セッションを繰り広げたりする場面の数々からは、「キーボーディスト・ABEDON」としての才気の奥深さも存分に窺うことができた。

ABEDON@Billboard Live TOKYO
場内総立ちの“WAO!”では、八熊がリズムボックスで鳴らすチープなビートに合わせて、ABEDONが極彩色の祝祭感を描き出すなど、会場丸ごと終始濃密な一体感で包んでみせた5人。アンコールではサービス精神よりはむしろ「自分たちがやりたいんだろうなあこれ」と思わせるほどの無軌道ぶりを見せていったこの日のアクトはしかし、「だがそこがいい!」的なやんちゃな躍動感にあふれていたし、卓越したプレイアビリティを持った大人たちならではの「真剣な遊び」の迫力と楽しさに満ちていた。「ABEDON SPECIAL LIVE “BLACK AND WHITE”」はこの後、9月26日・27日:大阪・Billboard Live OSAKA、10月13日:宮城・仙台retro Back Page公演へと続く!(高橋智樹)
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