今回の来日のきっかけは昨年リリースされた最新作『ライフ、ラヴ&ホープ』で、この日のライヴでも新曲は何曲かプレイされた。しかし、セットリストをご覧いただければ分かるように、往年のヒット曲満載のグレイテスト・ヒット・ショウだった。一筋のスポットライトの下でトム・ショルツがギター・ソロを掻き鳴らしスタートした1曲目は“Rock & Roll Band”。イントロで直径5メートルはあろうかという巨大な銅鑼をぶちかまし、それを合図に4人のプレイヤーが一斉にショルツのギターに音を重ね始める。のっけから驚かされたのはそのハイファイな音の響きだ。ハード・ロックの常套に則って爆音で歪みながらドライヴするギターが、矛盾した言い方になってしまうが、全く歪みを感じないくらい美しい放物線で投げかけられてくる。続く“Smokin’”では文字通りスモークが焚かれ、完璧なコーラスと華麗なシンセ・ソロでさらにハイファイ感を増していく。“Feelin' Satisfied”ではオーディエンスの一糸乱れぬ手拍子がベース、ドラムスに次ぐ殆ど第3のリズム楽器のように効果を発揮しているのが面白い。
中盤は“Don’t Look Back”、“Amanda”、“More Than a Feeling”とスーパー・アンセム連発のセクションで、思わずそれまでのパフォーマンスに見入っていたオーディエンスも合唱と大歓声で応える。 “Walk On”ではゲスト・ボーカルとして米オーディション番組「アメリカン・アイドル」のファイナリストのシボーン・マグナスが登場し、スーパー・ファルセット・ヴォーカルで華を添える。“More Than a Feeling”終盤のジャム・セッションも長大だったが、この“Walk On”はさらに輪をかけて凄まじく、ヴォーカルのトミーは一旦ステージを退出し、器楽的快感に特化した10分近いインスト・パフォーマンスが続く。しかしそれすらも本来の即興性とはかけ離れた見取り図を感じさせるのがトム・ショルツという人の音楽であり、ボストンというバンドのプライドなのだと感じた。
ラストのメンバー紹介で「リード・ギター、キーボード、プロデューサー、エンジニア、そして全ての曲を書いたTom Scholz」と日本語字幕で表示されたのも、本当に徹底したボストンの「頭と身体」のバンド構造を窺わせるものだった。(粉川しの)
1. Rock & Roll Band
2. Smokin'
3. Feelin' Satisfied
4. Last Day of School
5. Life, Love & Hope
6. Peace of Mind
7. It's Been Such a Long Time Interlude
8. Cool the Engines
9. Surrender to Me
10. Don't Look Back
11. Something About You
12. Amanda
13. The Launch
14. More Than a Feeling
15. Instrumental
16. A New World
17. To Be a Man
18. Walk On
19. Get Organ-ized
20. Walk On (Some More)
21. Foreplay / Long Time
En1. I Think I Like It
En2. Party