在日ファンク@EX THEATER ROPPONGI

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ハマケンこと浜野謙太(Vo)率いる7人組ファンク集団=在日ファンク。結成7年を迎えた今年、晴れてメジャー・デビューを果たした彼らによるメジャー第一弾アルバム『笑うな』発売記念ツアーの最終日である。アルバム収録曲の“根にもってます”がCMソングに起用されるなど、注目度うなぎ上りの現状を物語るように、会場のEXシアター六本木は満員御礼の大盛況。しかし、キャリア最大規模の会場で彼らが見せてくれたのは、いい意味で肩の力の抜けた「これぞ在日ファンク!」なステージだった。

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定刻を5分ほど過ぎた頃、暗転と同時にねっとりとしたホーン音が鳴り響き、ステージを覆う赤いカーテンがオープン。……と、そこにいるのは赤×黒の揃いのスーツで決めたハマケン以外のメンバーだ。仰木亮彦(G)の「皆さん、我々は在日ファンク」という言葉を合図にオープニングの“大イントロ”が立ち上がり、しばらくしてハマケンがオン・ステージ! スタッフ手押しのカートに仁王立ちしてクルリと廻ると、満場のフロアから大歓声が沸き起こる。そして間髪入れずに“百年”へ。スタンドマイク片手にステップを踏み、「ウッ!」「ハッ!」とスキャットを繰り出すハマケンのキレキレっぷりは、まさに和製ジェイムズ・ブラウンと言ったところか。後関好宏(Sax)/ジェントル久保田(Trombone)/村上基(Trumpet)によるホーンの音色が華やかな“ちっちゃい”では、「僕はちっちゃい!」のコールで会場をひとつに。さらに「大事なところを○○で隠して歌っても黒人みたいにエロくならなかった。それは何故か。俺が在日ファンクだからだ!」と己のアイデンティティを語ったバンドのテーマソング“マルマルファンク”を畳み掛け、ねっとりとグルーヴィーなファンク・サウンドで場内のヴォルテージを上げていくのであった。

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「『笑うな』というタイトルをつけてみたものの、笑わないのって難しいですね」と、いきなり自らへの白旗宣言的なファーストMCでオーディエンスを沸かせた後は、“産むマシーン”“笑うな”を連打。カラフルな照明やミラーボールの閃光が駆け巡るディスコティックな雰囲気の中で、永田真毅(Dr)と村上啓太(B)による分厚いビートを土台とした、ファットなアンサンブルが鳴り響く。ワウペダルを駆使した仰木のギターソロ、荒々しくも艶っぽい後関のサックスソロなどメンバー各々の見せ場もふんだんに、続く“場”のブレイクでは、おもむろにステージを這いずり回り、三点倒立をしてみせるハマケン。そんなパフォーマンスの直後に「笑ってんじゃねぇ!」と吠えられても、笑わずにやり過ごすのは到底無理な話である。そして「ツアー先で食費を節約するためにメンバーで自炊をしていた」というエピソードも明かしたトークを経て、「家族的な話をして本当に不甲斐ない」と“不甲斐ない”へ。あくまでJB直系のリズムとグルーヴで特濃のファンクネスを立ち上げながら、こういった極めて日本人的な哀愁やユーモアによって独自のエモーションを生み出しているところも、彼らが「在日ファンク」の名の下に活動を続ける所以だろう。

“嘘”のゆったりとしたホーン・アンサンブルで美しい夕景を描き出し、オオギナ先生こと仰木主導による「キョウト&レスポンス」で一気に弾けた“京都”を終えると、再びトークタイムへ。仰木がパーソナリティーを務める在日ファンクのポッドキャスト番組『オオギナステーション』の紹介と、ジェントルによる恒例のグッズ紹介が行われる。グッズ紹介の合間には、ハマケンがステージ端に持ち込まれた全身ミラーの前で髪を整える一幕も。ジェントルの饒舌なグッズ紹介だけでも十分面白いのに、ちょっとした小芝居を加えてオーディエンスの笑い取るとは、どこまでも「お客さんを喜ばせること」に貪欲な彼らである。ちなみにメンバー各々のコーナーが設けられた『オオギナステーション』もかなり笑える番組になっているので、未聴の人は是非ともチェックして欲しい(http://columbia.jp/zainichifunk/ohginastation/)。

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“ダンボール肉まん”“きず”をメドレー的に繋げてライヴのギアを上げると、“断固すいません”からラストスパート。永田&村上が刻むタイトなビート上で、ホーン隊の華麗なソロ・リレーが冴えわたる。そしてハマケンのビブラートがかった歌声に導かれ、フロア中の腕が上がった“根にもってます”で一気にバースト! 「どうもありがとう!」というハマケンの挨拶と同時にカーテンが閉まったステージに向けて、熱い拍手が送られたところで本編は終了した。

アンコールの待ち時間には、『オオギナステーション』特別篇の音声が流れ、場内は爆笑の渦に。「それでは聴いてください。“恥ずかしい”」という仰木の音声ナビゲーションから“恥ずかしい”の歌い出しの一声が響きわたり、カーテンが開いてアンコールがスタートする。“爆弾こわい”をアグレッシヴにブチかました後も鳴りやまない拍手に応えて再登場したダブル・アンコールでは、まずは来年2月24日に恵比寿LIQUIDROOMで自主企画イベント「在日ファンク presents『ば』vol.1」を開催することを発表。更に、ここEXシアター六本木で大晦日に行われるカウントダウンイベントにも出演することも告知し、“パラシュート”でフィナーレへ。六本木の夜空に溶け込んでいくようなディープかつ繊細な音像を立ち上らせて、2時間弱のステージをしっとりと締め括った。

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冒頭にも書いた通り、己のアイデンティティを伸び伸びと見せつけた「これぞ在日ファンク!」なステージ。SAKEROCKから俳優業まで幅広く活躍するハマケンを筆頭に、演奏からパフォーマンスに至るまで芸達者が揃った彼らだからこそ成しえる圧勝劇だったと思う。日本人特有の湿っぽい感性やユーモアを、濃厚なブラック・ミュージックに乗せて解き放つ在日ファンク。そのキャッチーかつオリジナリティ溢れる音楽が、個性豊かなメンバーによるパフォーマンスによって極上のエンタテイメントに昇華されていくさまは、たまらなく痛快である。メジャーへと活動の場を広げたことで、その面白味をさらにダイナミックに開放してほしい。そう願わずにはいられない一夜だった。(齋藤美穂)

■セットリスト

01.大イントロ
02.百年
03.ちっちゃい
04.マルマルファンク
05.産むマシーン
06.笑うな
07.場
08.不甲斐ない
09.嘘
10.京都
11.ダンボール肉まん → きず
12.断固すいません
13.根にもってます

(encore)
14.恥ずかしい
15.爆弾こわい

(encore2)
16.パラシュート
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