高橋優@秋田県民会館

高橋優@秋田県民会館
2014年10月からスタートしたツアー「LIVE TOUR 2014-2015『今、そこにある明滅と群生』」。約5ヶ月という高橋優史上最長のツアーの最後を飾るのは、秋田県民会館での追加公演である。

秋田といえば、言うまでもなく高橋の地元。加えてツアーファイナルということもあって、開演前から会場を覆う熱気がものすごい。会場内に流れるBGMに早くから手拍子が巻き起こり、注意事項などを告げるアナウンスが行われる頃には、観客は総立ちで今か今かと開演を待ち構えているのだ。秋田県民会館は1800人ほどを収容するホールだが、その熱量からするととてもそんな人数とは思えない。

開演予定時刻を5分回った頃、ついにバンドメンバーと高橋がステージに登場すると、割れんばかりの大歓声。高橋が「ファイナルだぞ、秋田ー!」と叫んで始めた1曲目“裸の王国”に、オイ! オイ!と凄まじいコールが起きる。「秋田のみなさんの声を聞かせてくれー!」と高橋が煽るまでもなく、すでにヴォルテージは最高潮だ。

“(Where’s)THE SILENT MAJORITY?”ではホール全体が揺れるような盛り上がりを見せ、曲が終わっても一向に歓声がやまない。それに応えるように高橋が叫ぶ。「会いたかったよ、秋田ー! ただいま!」。地元ということでMCも秋田弁混じり、しかし「秋田の人、こんな明るかったっけ?」と天井知らずの観客のテンションに高橋自身も驚いている様子を見せる。さらに、今日は佐竹敬久秋田県知事が来場していることを告げ、2階席で観ていた知事がステージに向かって手を振りながら「いいぞ、優さん!」と絶叫する一幕も。なんだかすごいことになってきたぞ、秋田。

『今、そこにある明滅と群生』というアルバムで表現されていた人と人のつながり、そしてその先にある光を、高橋優はツアーを通して全国に伝えてきた。希望に満ちた“BE RIGHT”のノリも、“犬”や“旅人”の歌の説得力も、ピアノとバイオリンのみで奏でられる“おやすみ”の美しさも、目の前のお客さんと交わることで何倍もの広がりを見せる。そんな心強い観客の存在を前に、高橋もいつも以上にオープンで楽しげ。MCでは親友の結婚式で秋田に帰ってくるときに、気合い入れすぎて変なスーツを買ってしまったという珍エピソードを惜しげもなく披露したりしている。

オーディエンスを着席させてじっくり聴かせるセクションを経て、「ここから一緒に熱くなろうぜ秋田!」とぶちかました“パイオニア”から再びアグレッシヴに攻めていく高橋。観客も待ってましたとばかりにテンションを上げていくなか、「さあ、秋田のみなさん、この時間がやってまいりました」と始まったのは全編にわたって秋田弁が駆使されたあの曲、“泣ぐ子はいねが”である。コール・アンド・レスポンスの練習の段階ですでに完璧な秋田のオーディエンス。アドリブでしょっつる鍋やババヘラアイス、さらには「小倉さん」(秋田出身の小倉智昭さんのこと)まで秋田名物を挟み込んでくる高橋にも完璧に応じている。
ステージの上も下も全力を注ぎ込んだ“泣ぐ子はいねが”が終わった後、高橋が静かに語り出す。「今日1日通して、秋田のみなさんの光、あったかさを体いっぱいに感じることができました。いろんなことがある日常です。いいことばっかりじゃないかもしれないけど。昨日より今日、今日より明日、明日より明後日がよくなっていきますように」。そして演奏されたのは“明日への星”。優しく温かな希望の歌だ。

高橋優@秋田県民会館
アンコールでは“オモクリ監督~9時過ぎの憂鬱を蹴飛ばして~”に続いて“現実という名の怪物と戦う者たち”でもうひと盛り上がり。そして歌い終えると、6月10日にシングル、さらに7月22日にはメジャーデビュー5周年を記念したベストアルバムをリリースすること、そのリリース記念のフリーイベントを7月25日に秋田で開催することを発表。歓声はもちろんだが、客席からバンザイの声が上がったのには驚いた。あの感じ、アーティストとファンというより、もはや家族のようである。地元だから、ツアーファイナルだから、それも大きな要因だが、同時にアルバムとツアーで高橋が訴えてきたメッセージが、そこに詰まっているような気がした。その後歌われた“同じ空の下”がいっそうの実感をもって響いたのは、たまたまではないだろう。

終演のアナウンスを聞いてもまったく帰ろうとしない観客を前に、三たび登場して最後に“福笑い”を歌ってこの日のライヴを終えた高橋。心ゆくまでのびのびと、この凱旋を楽しんだようだった。(小川智宏)

■セットリスト

01.裸の王国
02.蝉
03.(Where’s)THE SILENT MAJORITY?
04.BE RIGHT
05.WC
06.犬
07.旅人
08.同じ日々の繰り返し
09.サンドイッチ
10.あなたとだから歩める道
11.未だ見ぬ星座
12.おやすみ
13.パイオニア
14.頭ん中そればっかり
15.太陽と花
16.こどものうた
17.泣ぐ子はいねが
18.明日への星

(encore)
19.オモクリ監督~9時過ぎの憂鬱を蹴飛ばして~
20.現実という名の怪物と戦う者たち
21.同じ空の下

(encore 2)
22.福笑い
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