ジャンルの垣根を崩すかのように、あらゆる層のリスナーをインスパイアしてきたイギリス・マンチェスターの伝説的バンド、ザ・ストーン・ローゼズ。かつてそのフロントマンで、解散後もソロでコンスタントに活動をしてきたのが、イアン・ブラウンだ。最新作『ザ・ワールド・イズ・ユアーズ』を引っさげて行なわれた待望の来日公演は、イアンの変わらぬメッセージ性の強さと、いい意味で肩の力が抜けたパフォーマンス、そして、イアンを愛して止まないファンたちの熱さをひしひしと感じ取ることができた。
数年前の海外公演や、2005年のサマーソニックでのライヴ時にストーン・ローゼズのナンバーを歌ってみせ、客をあっと言わせたイアンだったが、今回も“アイ・ウォナ・ビー・アドアード”を初っ端から披露。もはやローゼズの楽曲はライヴの定番になっていて、客席からも何度もローゼズの楽曲名が叫ばれていた。イアンは飄々と、お馴染みの「キング・モンキー」ダンスをしながら、ソロ作品から万遍なく代表曲を歌った。
ファースト〜セカンドの頃のかなりチャレンジングな曲も、ローゼズの曲も、まったく同じように(テクニックがということではなく)歌っていたのだが、これはそんなに簡単なことではないと思う。アンコールではローゼズの“ウォーターフォール”と“アイ・アム・ザ・レザレクション”のオープニングで怒号のような歓声が沸いたが、それらの楽曲を懐メロにしてしまうことなく(もちろん楽曲そのものが、あまりに完璧だということもあるだろうが)、加えて、最後に演奏した “F.E.A.R.”には、今の世の中が変わらずに抱える凄惨さや矛盾への憤りが、じつにイアンらしく滾っていたのだった。(羽鳥麻美)
イアン・ブラウン @ 渋谷O-EAST
2008.03.06