開演時刻になり、SEが鳴り響き、ステージに姿を表したluki。バンドはドラム、ギター、キーボードという編成だ。最近はドラムレスでリズムは打ち込み、という形でライヴをやってきたので、まずその「形」自体が新鮮。しかしそんな見た目の新鮮さは、あっという間に音の迫力によって打ち消されることとなる。
続いてはギターに合わせてlukiがハーモニカを吹き鳴らすインストナンバー“深淵の揺らぎ”。ブルージーでもあり、でも同時にものすごくポップでもある彼女のハーモニカは、いつ聴いてもlukiというアーティストの本質にとてもよく似合っている。言葉にならない想いや、言葉を超えていく想いを、lukiはハーモニカの音色に託す。それはときに、どんな歌声よりも饒舌に、情景や感情を描き出していくのだ。
振り返ってみれば完全にこの日のライヴのハイライトとなっていた新曲ゾーンを抜け、しっとりと落ち着いたバラード“モノクロームの恋人たち”へ。あの新曲たちのインパクトから、少しずつ回復していくような時間である。しかしここでもやはり、lukiの歌にはこれまでにない力が宿っている。その力がいちばん如実に出たのは、続いて披露された“東京”だった。『東京物語』のリード曲であり、lukiが初めてEDMを取り入れた楽曲である“東京”。この日もVJによる映像と組み合わされたハイパーなパフォーマンスとして展開されたが、この日はまぎれもなく「歌」がど真ん中にいた。そこに込められたメッセージがこれまでにないほどの強度をもって伝わってくる。
自身が趣味としているランニングについてのMCをはさみ、ヘヴィなギターリフがドラムと絡み合うluki流グランジ・ナンバー“四角い箱にいた頃”、そして本編最後の“KISS OR KILL”へ。ハードエッジな音と、バンドの重厚感。それと拮抗するlukiの歌。あらゆる感情がないまぜになって押し寄せてくるようなすさまじいクライマックスだ。曲が終わったあとも、心の奥がしびれるような感覚がいつまでも消えなかった。
『東京物語』から約半年。lukiは大きく進化を遂げている。その進化は、この日披露された新曲に、ヴィヴィッドに反映されていた。この先、どんな展開が待っているのか。楽しみでしかたがない。(小川智弘)
[SET LIST]
01.100年後のあなたへ
02.スイッチ
03.曖昧なファンタジー
04.白い月
05.まだ間に合うから
06.深淵の揺らぎ(inst.)
07.ハイエナ(新曲)
08.解けないパズル(新曲)
09.温室の薔薇(新曲)
10.モノクロームの恋人たち
11.東京
12.四角い箱にいた頃
13.KISS OR KILL
(Encore)
14.イコール(新曲)