遠藤氏による「ピカピカの新人」という紹介でFUTURE STAGEのトップに立ったのは、武藤昭平 with ウエノコウジ。それぞれにガットギターとアコベを携え、3作目のアルバム『STRANGERS』から“ビートニク・ピエロ”を皮切りに、「ヨッ」「ハッ」と間の手を絡めてパフォーマンスを繰り広げる。武藤のしゃがれ声ヴォーカルと無国籍メロディが、じわりとエモーションを纏うステージだ。FRONTIER STAGEの1番手はPOLYSICSで、ハヤシは「UKFC on the Road 2015 決起集会!」(7/28にスペシャアプリで生配信された)のツイスターゲームで優勝したものの、そこで掴んだトリの座をthe telephonesに譲ったことを説明する。「俺の好感度も上がってんじゃねえの!?」と自分で言ってしまうあたりが惜しいのだがしかし、肝心のパフォーマンスはと言えば、トリだろうがトップだろうが時と場所を選ばないPOLYSICSの爆裂ライヴに他ならなかった。ヘヴィなテクノパンクと共に暴れ回る“怪獣殿下 ~古代怪獣ゴモラ登場~”の「好きなことしかやってない感」といい、フミ(B・Syn ・Vo)が歌ってる間にハヤシがダイヴを敢行する“How are you?”といい、最高のスタートダッシュを見せてくれた。
斎藤雄(Getting Better)がDJプレイをスピッツの曲で締め括ると、ここで交代した木下理樹(ART-SCHOOL/killing Boy)が投下するのはMO’SOME TONEBENDER“nuts”。UKFC2年連続登場のHelsinki Lambda Clubは、演奏は軽やかなギターロックなのだけれども作曲が奇妙にトロピカルだったり眩く広がる音のエネルギーを宿していたり、21世紀のNYインディー勢と共振するような、自由なポップセンスを感じさせる。ヤマサキ セイヤ(Vo・G)曰く「わざわざ今日やらんでいいセトリ」でUKFCへと乗り込んで来たキュウソネコカミは、“Scary song”の直後に赤ラメのジャケットを着込んだセイヤが“伝統芸能”を熱唱するという、トリッキーな笑いをぶち込んで来る。UKプロジェクト・遠藤氏の娘さんがキュウソファンだからということで、「the telephonesが稼いだ金が社長さんに入って、それが娘さんに入って、キュウソのグッズを買ってくれると。素晴らしいUKFC!」と妙にリアルな繋がりについて語り、“DQNなりたい、40代で死にたい”では「アーティストを物理的に支えろ!」とフロアに突入する。完璧にキュウソワールドへと巻き込まれる時間だった。
今年5月にセルフタイトルのアルバムをリリースした5人組のodolは、高度なポストロック/ポストジャズのようでありながら、しっかりとポップな歌モノとして成立した楽曲群を届ける。とりわけ森山公稀(Piano)の音の存在感が際立ち、最後に披露された“生活”からも、その名のとおり生活感に溢れたエモーションの形が見えて来る。サカナクションやKANA-BOONをスピンしていたDJ=西村道男(Getting Better)からK(uchuu,)へとバトンが繋がれると、こちらはスカパラ×民生“美しく燃える森”やダフト・パンク“Get Lucky”で踊らせてくれる。そして、「交流と発展」というテーマのもとthe telephones・石毛がリクエストしたという参加アーティストはdownyだ。触れたら切れそうなほどの超硬質なサウンドと、凄絶極まりないバンドアンサンブルには、背筋に冷たいものを感じるほどであった。広がりのあるサウンドでじっくりと“時雨前”から“黒”がプレイされていたかと思えば、急転直下に“左の種”の尖った爆音が立ち上がってくるから気が抜けない。獰猛であるほどに美しく、アート性の高い映像演出と相乗効果を生み出し続ける、素晴らしいライヴであった。
今春、地元・宇都宮からメンバー全員が上京し、6月にミニアルバム『青、時々、goodbye』を発表した4ピースバンドのpolly。瑞々しいギターポップは鮮やかなハーモニーを纏い、クリアに差し込まれる飯村悠助(G)のギターフレーズがとても心地好い。越雲龍馬(Vo・G)の歌声はとてもナイーヴだけれど、“hello goodbye”をひとりステージに残って歌い切る姿は印象深かった。タロウサイファイ(avengers in sci-fi)のDJがPOLYSICS“カジャカジャグー”をドロップする頃、ライヴフロアをひとりも余さず、という勢いでブチ上げていたのはORANGE RANGEである。HIROKI(Vo)が同世代バンドと出逢いの話を引き合いにしながら、ちょっと真面目なトーンで「次の曲は……《花びらのように散りゆく》……?」と“花”に見せかけた前フリを伝え、「スシに出逢えた喜びを!」と“SUSHI食べたい”に繋いでしまう。要するに、オーディエンスを休ませるつもりが毛頭ない。終盤になっていよいよNAOTOの爆音ギターも荒れ狂い、“チェスト”に“キリキリマイ”というクライマックスは真夏の嵐のようであった。
さて、そんな嵐の直後に、穏やかな陽光の如きファンキーポップを降り注がせる5人組はSPiCYSOLだ。サウンドチェックではMAGIC!“Rude”のグルーヴを見事に再現し、本編も豊かなアフロヘアのKENNY(Vo・G)がリードして心地好いダンスの時間へと誘ってくれる。味わい深いオルガンとトランペットをスイッチして披露するPETE(Trumpet・Cho・Key)のプレイといい、確かな抱擁力の片鱗を覗かせたステージだった。終盤に差し掛かろうとするRIGHTTZA TENTでは、捻りハチマキを締めたゆるキャラのしもっきー(a.k.a.自称下北沢の守り神)が、自らのDJプレイに呂布を招き、ラップとのコラボを繰り広げるという光景が。そしてクローザーとして再び片平実(Getting Better)がブースに収まり、the telephonesや9mm Parabellum Bulletの楽曲でスパートを掛けるのだった。
BIGMAMAは、序盤から“No.9”、“荒狂曲”シンセカイ””、“Swan Song”という『Roclassick』シリーズのえげつない3連打で、オーディエンスの1日の疲れをどこかに吹き飛ばしてしまう。金井政人(Vo・G)は「この夏、いろんなイベントがありましたね。ここは舞浜も近いです。でも、今日このイベントを選んだ人、最っっっっっっ高に趣味がいいです!」と告げて喝采を浴びていた。色とりどりのタオルがフロア一面に翳され、大合唱を導く“until the blouse is buttoned up”。そして「音を出す」ということの意味そのものが眼前に差し出されるような“Mutopia”は、音楽の力って本当に何なんだろうな、と歓喜の中で思いを巡らせてしまう体験であった。そして、FUTURE STAGEのアンカーとして登場したのが、10月7日に初のフルアルバム『スーパーリアリズム』のリリースを控えた4人組=ウソツキだ。このバンド、本当に凄い。「王道歌モノバンド」を標榜しているだけあって、歌心が胸元にまっすぐ投げ込まれるのだが、4人の音、歌詞の響きと意味、すべてが「あるべきところにある」感じ。 “旗揚げ運動”はオーディエンスをまんまと歌詞のとおりに踊らせ、吉田健二(G)がギター一本で車輪の音と汽笛を再現する“新木場発、銀河鉄道”は、新しい物語の始まりにしか聴こえなかった。
「UKFC on the Road 2015」の2日間を締め括るアクトは、the telephonesだ。野太いシンガロングが立ち上がる“I Hate DISCOOOOOOO!!!”の中で、岡本伸明(Syn・Cowbell・Shriek)は渾身のシャウトを連発する。11月3日の「Last Party〜We are DISCO!!!〜」に向けて、the telephonesのラストランは加速する一方だ。石毛輝(Vo・G・Syn)が「UKFCだから、UK.PROJECTから出した曲やります!」と告げて“RIOT!!!”を投下。POLYSICS・ハヤシにトリの座を譲ってもらったことについては「どんな男気だよっていうね。俺たち活動休止するんで、しばらく出ない最後のUKFCになるんだけど、男気を感じて、最後まで全力で盛り上げるから!」と語って有言実行の熱狂を巻き起こす。“Urban Disco”では、ハヤシを招き入れて石毛がギターを委ねる、スペシャルなTOISU&DISCOの一幕だ。4人がハヤシとハグや握手を交わして見送ると、「ニューアルバムから、the telephonesのことを書いた曲をやります」と届けられたのは“Something Good”。石毛は、そのハイトーンヴォイスにありったけの思いを込めて、歌い上げていった。
4人がUKFCのTシャツに着替えてアンコールに応えると、石毛は「馴れ合いみたいなのが嫌いで、レーベルとか事務所とか大っ嫌いだったんだけど、UK.PROJECTに入って考えが変わりました」と語り、自己表現を志す人々に向けて「いい人、いっぱいいるから」とメッセージを投げ掛ける。そして巨大風船の中から無数の風船が飛び出してフロアに舞う“Love&DISCO”では、この日の出演者が次々にステージへと飛び込んで歓喜のクライマックスだ。オーディエンスをバックに全員で記念撮影を行うと、石毛に促された遠藤氏は「音楽って、お腹も一杯にならないし、お金も儲からないけど、でも……何かをやりたいわけ! 本当にありがとうございました!」と熱っぽい挨拶を届け、アーティストたちに胴上げされる。the telephonesの長島涼平(B・Cho)はフロアに投げ込まれ、笑顔のまま2日間のステージは幕を閉じるのだった。(小池宏和)
●セットリスト
【FRONTIER STAGE】
POLYSICS
01. Introduction!
02. シーラカンス イズ アンドロイド
03. Shout Aloud!
04. Dr Pepper!!!!!
05. Let’s ダバダバ
06. 怪獣殿下 ~古代怪獣ゴモラ登場~
07. MEGA OVER DRIVE
08. How are you?
09. Hot Stuff
10. BUGGIE TECHNICA
キュウソネコカミ
01. ウィーワーインディーズバンド!
02. MEGA SHAKE IT!
03. ファントムヴァイブレーション
04. Scary song
05. 伝統芸能
06. DQNなりたい、40代で死にたい
07. ハッピーポンコツ
08. ビビった
downy
01. 葵
02. 春と修羅
03. 時雨前
04. 黒
05. 左の種
06. アサヒヲ見ヨ!
07. 弌
08. 猿の手柄
ORANGE RANGE
01. JIN JIN
02. お願い! セニョリータ
03. イケナイ太陽
04. SUSHI食べたい feat. ソイソース
05. Insane
06. チェスト
07. キリキリマイ
BIGMAMA
01. No.9
02. 荒狂曲”シンセカイ”
03. Swan Song
04. 神様も言う通りに
05. 秘密
06. until the blouse is buttoned up
07. Mutopia
the telephones
01. I Hate DISCOOOOOOO!!!
02. RIOT!!!
03. electric girl
04. Keep Your DISCO!!!
05. Monkey Discooooooo
06. Urban Disco with POLYSICS ハヤシ
07. Something Good
(encore)
08. Love&DISCO
【FUTURE STAGE】
武藤昭平 with ウエノコウジ
01. ビートニク・ピエロ
02. ブエナ・ビスタ
03. ワルチング・マチルダ
04. レッツ・ブーズ・イット
Helsinki Lambda Club
01. All my Loving
02. ユアンと踊れ
03. Lost in the Supermarket
04. メサイアのビーチ
05. しゃれこうべ しゃれこうべ
06. シンセミア
odol
01. あの頃
02. 飾りすぎていた
03. ふたり
04. 欲しい
05. 17
06. 生活
polly
01. ナイトダイビング
02. アンハッピーエンド
03. アマツブニアカ
04. 雨の魔法が解けるまで
05. 知らない
SPiCYSOL
01. AWAKE
02. Around The World
03. PABUK
04. S.K.A
05. Hello Swallow
ウソツキ
01. ピースする
02. 時空間旅行代理時計
03. 旗揚げ運動
04. 春風と風鈴
05. 新木場発、銀河鉄道