「908 FESTIVAL 2015 前夜祭」@日本武道館

「908 FESTIVAL 2015 前夜祭」@日本武道館
4年目の「908 FESTIVAL」にして、KREVA10周年イヤーの最後の日でもある、9月7日の武道館。「クレバの日」前夜祭という位置づけで、この日はKREVAとKICK THE CAN CREWのスペシャルな2マン(KREVA曰く1.5マン)が繰り広げられる。これまでにもフェス出演や、昨年末の「KICK THE WORLD BEAT」などはあったけれど、KICK THE CAN CREWというクレジットでのライヴは、やはりどうしようもなく心が踊る。

まずはKREVAのソロセットであり、この日は47都道府県ツアー「UNDER THE MOON」の前半戦で行われていたDJ&MPC(熊井吾郎)+DRUMS(白根佳孝)という編成だ。イントロが鳴り響く中にKREVAがステージ下からリフトで登場し、揺らめくトーチの中でメジャーデビュー曲“音色”を切り出す。ブルゾンからパンツまで、黒を基調にしたクールな装いだ。生ドラムによるフィルインがじっくりと間を取って打ち鳴らされ、KREVAの歌声と共にグルーヴを構築してゆく。「やっぱいいな、武道館はねえー! わざわざ前夜祭まで来るみんな、大好きです!」とご機嫌に言葉を投げ掛けていた。

この2日前ぐらいに思いついたという今回の「908 FESTIVAL」のテーマは、「繋がり」だそうだ。スキルが映えるシングル曲群をノンストップミックスのように畳み掛ける。「ここまでが男のための時間だとしたら、こっからは女の子のための時間。でも、音の繋がりを楽しんで欲しい」と“It's for you”からはメロディアスな展開に持ち込み、「つまり! 《君のために/君のためにだけ生きられるよ》」と歌詞の意味を繋げるように“王者の休日”が披露される。甘いヴァイブを保ちながらこんな技巧を見せつけてしまうところに、KREVAの豊かなソロキャリアが滲み出ていると言えるだろう。

「908 FESTIVAL 2015 前夜祭」@日本武道館
「正直、長かった〜、10周年」と感慨を漏らして、火柱が吹き上がる中での“トランキライザー”からスパートをかけると、ソロ編のクライマックスは“KILA KILA”だ。「この曲の《行けるなら絶対行っとけ》っていう歌詞は、KREVAの歌に何度も出て来ている歌詞で、言わばKREVAの代名詞みたいな歌詞なんだけど、でも元々はKREVAの歌詞じゃありません。ここに集まってる人なら、もう分かってるよな? 誰の歌詞なのかは、ステージが証明してくれます!」と告げて、彼は一旦ステージを後にするのだった。

そして繰り出されるドリーミーなイントロ。ステージ中央には、LITTLE、MCU、KREVAの3人がリフトで揃って姿を見せる。KREVAが自身のヴァースで届ける《いけるなら絶対いっとけ! だって俺らは現在進行形!》という歌詞は、そう、“タカオニ2000”だ。この曲、実は2004年6月の日比谷野音、キック活動休止前の最後のライヴで、最後に披露されたナンバーである。横並びで拳を掲げる3人。ちょっと、ドラマティック過ぎるだろう。

そして“スーパーオリジナル”ではMCUによる昂った速射砲ラップに嬌声が上がり、LITTLEの言葉は“カンケリ01”に青春の熱とノスタルジアを持ち込む。「KREVAです!」「MCUです!」「LITTLEです!」「3人合わせて!」「KICK THE CAN CREWです!!」という自己紹介の一幕はご愛嬌だが、“BREAK 3”でのMCUは《40代の粋なMyフレイバー》とラップし、それこそシュガーヒル・ギャングばりの華やかなディスコラップを繰り広げる“GOOD TIME!”では、ノリノリになるほどキレを増すキックらしさが全開になっていった。

「今日はノーギャラでありがとう。雄志くんだけノーギャラ」(KREVA)「え、そうなの!?」(MCU)とふざけあいながらも次の瞬間には男気溢れる“ONEWAY”が繰り出され、星空のような照明演出と共に“ユートピア”(近年のライヴでも重要なアクセントを担っている)を披露すると、「言ったら、昔ライヴで一言も喋んなかったんだから。そんなLITTLEが、軽く踊るぐらいですよ! 皆さん、負けてらんないですよねえ」と煽り立てる。“地球ブルース~337~”ではMCUの《来年で43です》に場内がどよめき、“マルシェ”に繋ぐという流れは、どう見ても「前夜祭」の盛り上がり方ではないだろう。

「いやあ、やり切ったねえ!」と立ち去ろうとするKREVAとMCUに、LITTLEが(ちょっと照れ臭そうに笑いながら)浴びせかけるのは「《まだ何も終わっちゃいないぜ》!!」のキラーな1ラインだ。大歓声を巻き起こしながらの“イツナロウバ”で、MCUも《だがまた晴れたら この仲間で/あの時間に クレフェスで》と歌ってみせる。そしてDJ+生ドラムの抑揚がエモーションを増幅させる“sayonara sayonara”と、痛くて甘いモラトリアムを今日に伝える“アンバランス”によって、本編は締め括られたのだった。

「終わるかと思っただろ! んなわけない。だって今日は、《終わらない前夜祭》!!」というKREVAの声が響き渡り、アンコールはなるほど、という“クリスマス・イブRap”だ。分厚いダウンジャケットを着込んだ3人が、結晶のまま降る雪のCGアニメーションを背景にこの曲を届ける(もちろん、終わったらすぐにダウンジャケットを脱いでいた)。MCUは、何度かKREVAに妨害されながらも「こんな長い時間やるの久しぶりで、なのにみんな曲を覚えててくれてて。もっといい事言おうかと思ってたけど、感謝しかないです。ありがとう!」と挨拶し、LITTLEは「908フェスでどうかなって言われたときに、こちらこそ、1曲でも多くやらせてくれって、思ってました。言ってないけどね(笑)。またこうして武道館でやるときは、もっとガッチリやりたいと思うんで、みんな遊びに来てください!」と告げていた。

そして2人を見送ると、KREVAは最後にオーディエンスとの「繋がり」を求め、“Na Na Na”の大合唱で一夜のステージを締め括る。この10周年イヤー最後の日に、LITTLEとMCUはそれぞれ花束を携えて再登場し、KREVAに贈呈。ステージ上の5人は手を組んで挨拶するのだった。何度も書くようだけれど、これ、前夜祭なのだ。ペースも趣向も盛り上がりも異常な前夜祭を終えて、翌日のクレバの日には、何が待ち受けているだろうか。(小池宏和)

●セットリスト

KREVA

01. 音色
02. THE SHOW
03. BESHI
04. 基準
05. 挑め
06. ストロングスタイル
07. 成功
08. It's for you
09. 王者の休日
10. ビコーズ~今夜はブギー・バック~ビコーズ
11. I Wanna Know You
12. トランキライザー
13. Have a nice day!
14. C’mon, Let’s go
15. KILA KILA

KICK THE CAN CREW

01. タカオニ2000
02. スーパーオリジナル
03. カンケリ01
04. BREAK 3
05. GOOD TIME!
06. ONEWAY
07. ユートピア
08. 地球ブルース~337~
09. マルシェ
10. イツナロウバ
11. sayonara sayonara
12. アンバランス
(encore)
13. クリスマス・イブRap
14. Na Na Na(KREVA)
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