定刻を20分ほど過ぎたころ、館内には、「通常のライヴと同じように、立ち上がり、歓声をあげてお楽しみください」と、アナウンスが流れ出した。キャパシティ400人弱の会場には、後ろ半分はスタンディングの自由席、前半分は指定席で、着席したままの鑑賞できるエリアになっていた。だが、オープニング映像が流れ出すと、すかさず指定席のお客さんも立ちあがり、期待を膨らませてhideの登場を待つ。1曲目から、いきなり“ROCKET DIVE”だった。トレードマークの真っ赤に染めた髪型に、チェックのジャケットとズボンを身にまとったhideがひとりステージに現われると、会場からは「hideー!」と熱い声援が飛んだ。続いて“ピンク スパイダー”。客席からは、入場時に配られたピンク色のサイリウムが、キャッチーなサビのフレーズに合わせて高く突き上がった。
「hide crystal project presents RADIOSITY」は、9月にショーの一部を公開する特別先行のプロローグ公演が行なわれたが、今回の本公演で目玉となったのは、ホログラフィックによるバンドメンバーの登場だ。ギター、ベース、ドラムが加わったバンド編成のステージ。その中央にhideが立ち、独特の動きで奔放に踊り歌い、臨場感のあるパフォーマンスを繰り広げる。そして衣装チェンジをし、テンガロンハットを被ったhideが再びステージに現れると、昨年生誕50周年を記念してリリースされた新曲“子 ギャル”が披露された。ウッ!ハッ!という声に合わせて、お客さんも一緒に踊り、会場が一体となる。
1993年、hideは以下のような予言めいたコメントを残していたという。「CGで完璧なヴィジュアルアーティストを作って、俺はいつのまにかフェイドアウトして、でも、hideって名前でやっていくの。いつのまにかすり替わってんの」と。まさかこの言葉が、20年以上の時を経て実現する日が来るとは。ホログラフィックライヴという、あたかもそこにアーティストが存在するかのような錯覚を作り出す技術によって、ひとつの夢が現実になったのだ。「hide crystal project presents RADIOSITY」は11月15日まで追加公演が決定している。ぜひ、時空を超えて引き継がれたhideの夢を体感してみてほしい。(秦理絵)