luki@Shibuya LUSH

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2014年11月に初のフルアルバム『東京物語』を、そこから1年と間を置かず2015年9月にフルアルバム『黒うさぎ』を発表したシンガーソングライター=lukiのワンマンライヴ。「『黒うさぎ』と『東京物語』を中心に、あと新曲をいくつか。」と語られていたように、早くも新曲が次々と披露されるステージになった。

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バンドは、このところお馴染みとなっているハーフエレクトロニックの4ピース編成であり、アレンジも担当する円山天使(G)、マニピュレーターとしての役割もこなす山本哲也(Key)、そしてハリーさんこと張替智広(Dr)という顔ぶれ。まずは重厚なシンセベースにビートとディストーションギターが折り重なり、lukiのハスキーな美声が現代社会の荒野に鳴り渡るような“ハイエナ”からスタートだ。彼女は次第次第に大きく身を揺らし、エモーショナルに楽曲へと没入する。続いて、スリリングな愛の駆け引きに身を委ねる“KISS OR KILL”を届けると、演奏中とは打って変わって穏やかな口調で「今日はとっても冷たい風が吹いていました。そんな中、お越し頂いてありがとうございます」と挨拶する。

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孤独な魂を抱えて生きる人々を鼓舞する“都会の漂流者”が勇壮に鳴り響くと、今度は柔らかく優しいサウンドスケープの中からガーリーな歌声で“世界が水玉になる日”が披露される。ここでlukiは、先頃発表された2016年アカデミー賞に触れ(彼女は、山田ルキ子のペンネームで『Cut』誌にコラムを連載するほどの映画ライターとしても知られる)、「大きな映画も好きなんですけど、インディー映画も好きで。フィリップ・ガレルとか、何が言いたいんだか分からないけど何か好きという、そういう曲が作りたいと思って、次にやる曲を作りました」と“モノクロームの恋人たち”へと向かう。フレーズの絡み合いといい、歌詞の情景描写といい、一貫して物悲しいトーンだけれども豊かな名演だ。

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バンドサウンドが歌を乗せて押し寄せるような“黒うさぎ”や“爪痕”を経て、「以上、私の暗黒3曲と呼ばれております」と笑いを誘う。「価値があるんじゃないかなあと思って頑張っておりますが、時代はワクワクするようなものを求めているんじゃないか、とも思いまして、そういう曲も聴いてください」と、華やかに、力強く舞い上がる新曲“虹色のファンファーレ”を繰り出す。現状を越えて踏み出してゆくイメージの楽曲だ。いずれにしても、彼女は剥き出しになった生命力の強い迸りを描いているのであって、表現の陰と陽は遠くかけ離れたものではなく、物事の裏と表だ。そのブレのなさに唸らされる。

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「次の曲も新曲で、いつまでも少年の心を持った男性というのは魅力的で、そういう人と出会いたいなと思っているのですが、なかなかいません」「男の人は収集癖があるじゃないですか。道具とか、カメラとか、スニーカーとか。何なんでしょうねあれ。まったく理解できません」と毒っ気を交えながら語り(こういう本音の語り口はいつもおもしろくて、つい吹き出してしまう)、シリアスに突きつけ糾弾するようなるロックチューン“コレクション”へ。男として言い訳させてもらうと、収集癖は少年の心の裏返しだと思うのだが、どうだろうか。さらに、円山の情緒豊かなギタープレイをバッキングにした新曲“オムレツ”は、村上春樹のエッセイや『ノルウェイの森』にインスパイアされたという、男心のややこしさに触れる一曲である。映画や本からのインプットを咀嚼・消化し、しっかり彼女自身のマインドとしてアウトプットする、lukiの本領と言える一幕だ。

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エモーションが激しく渦巻く“四角い箱にいた頃”で自らブルースハープを吹き鳴らし、5月24日に今回と同じくShibuya LUSHで開催される次回のワンマンライヴを告知すると、本編は荘厳なサウンドに美しいピアノがなびく、強い願いを宿した“イコール”で締めくくられる。さらにアンコールに応えると、軽やかなボサノバ歌謡に甘い狂気が滲む“銀の星”を披露。「今日、皆さまに会えたことは奇跡ですが、奇跡で終わらせてはいけません。明日に繋げなければいけないと思います」と告げ最後に披露されたのは、またしても新曲、確かな意志を降り注がせるような“奇跡の続き”だ。必死に生きることこそが、真の豊かな生活に最も近い。彼女の肉体性をもった表現が、そんなメッセージとして受け止められる気がした。(小池宏和)

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●セットリスト

01. ハイエナ
02. KISS OR KILL
03. 都会の漂流者
04. 世界が水玉になる日
05. モノクロームの恋人たち
06. 黒うさぎ
07. 爪痕
08. 虹色のファンファーレ (新曲)
09. コレクション (新曲)
10. オムレツ (新曲)
11. 解けないパズル
12. 四角い箱にいた頃
13. イコール
(encore)
14. 銀の星
15. 奇跡の続き (新曲)
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