illion@新木場スタジオコースト

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「FUJI ROCK FESTIVAL’16」のホワイトステージ(22日)で、ついに国内初ライブを披露した野田洋次郎(RADWIMPS)のソロプロジェクト・illionが、25日、初の日本ツアー「illion Japan Tour 2016」を新木場スタジオコーストからスタートさせた。2013年に第1作『UBU』を発表。直後にロンドンの「O2 Shepherd's Bush Empire」で行った初ライブの動画は、YouTube公式チャンネルで公開されているものの、3年を経て、未だ多くのファンはillionのライブを未体験のまま。待ちに待った日本凱旋に、ソールドアウトとなった会場は2階までぎっしり満員で、illionへの期待感、渇望感は凄まじいものがある。
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オープニングアクトのPUNPEEが、ロックテイスト溢れるDJプレイでフロアを揺らし、RADWIMPSの“おしゃかしゃま”から“DADA”へとつないで、一大シンガロングを生み出した後、いよいよillionが登場。全身白のゆったりした衣装を身にまとった野田(Vo・G・Key)は「illionは、今日が本当に一番最初の、日本でのワンマンになります。来てくれてありがとう。最後まで思いっきり飛ばしていこうと思うんだけど、いいかしら、いいかしら~?」と気負いのないリラックスした雰囲気で呼びかけ、オーディエンスもそれに大歓声で迎える。サポートメンバーは、Dean Deavall(Key)、長岡亮介(G/ペトロールズ)、栗本ヒロコ(B/ex.毛皮のマリーズ)、川崎昭(Dr/mouse on the keys)、林田順平(Cello)の5人。
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“LYNCH”でスタートした演奏。透明感ある野田のボーカルが空気を貫き、会場を一気に異空間へ導く。“AIWAGUMA”や“MAHOROBA”では、古い日本の数え歌のような節回しが、やがて強烈なグルーヴを生み出し、“PLANETARIAN”や“FINGER PRINT”では、牧歌的なイノセンスの向こうに人生の残酷さが描かれていく。幻想的な映像も使い、穏やかな日差しの中に雷鳴のようなドラムが轟き、めまぐるしく場面が展開していく“γ”、“BEEHIVE”、“BRAIN DRAIN”などステージ後半の楽曲では、一糸乱れぬバンドの高い演奏能力、無垢な天使性を秘めたハイトーンと地声のリアルな存在感を同時に響かせる野田のボーカリゼーションに圧倒された。この日は、先日配信開始となった新曲“Water lily”ほか、まだタイトルもついていない新曲3曲も演奏。野田が「オレが今、日本で一番カッコイイと思うラッパーです」と紹介した5lackとのコラボ2曲(M9とEN1)は、脱力系の等身大ラップと野田の繊細なボーカル、グルーヴィーなメロディリフがミックスされた、ミクスチャーのさらに先を行くクールな仕上がりだった。10月の新作への期待も高まる。
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ライブ本編ラストの曲“GASSHOW”を演奏する前、野田は、illionを始めた際の思いを切々と語り始めた。「(東北の)震災という出来事で感じたあのもどかしさ、眠れなさ、あの心臓のバクバク、失われたたくさんのもの、やがて忘れてしまうだろうあの瞬間を、どうしたらいいかわからなくて、ひたすらスタジオに入って曲に閉じ込めたのが、illionです。オフな自分で、本当は人に見せるべきものじゃないかもしれないけど、たくさんの人に聴いてもらえて幸せ」と。懐かしさと郷愁を誘う一方、圧倒的な音響の強度と実験性、斬新さを持つサウンド。天界と現実世界、無垢な純粋さとドロドロの不条理を行き来するような歌詞の秘密を垣間見た思いがする。「ここではないどこか」の未踏の音楽を探りあてるため船出した、illionの記念すべき処女航海ライブに立ち会えたことを、会場に集まった多くの人々とともに幸運に思う夜だった。(岸田智)
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●セットリスト
1.LYNCH
2.AIWAGUMA
3.PLANETARIAN
4.MAHOROBA
5.新曲
6.ESPECIALLY
7.Water lily
8.FINGER PRINT
9.新曲
10.γ
11.BEEHIVE
12.BRAIN DRAIN
13.DANCE
14.GASSHOW

EN1. 新曲
EN2. BIRDIE
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