トレヴァー・ホーン @ Billboard Live TOKYO

トレヴァー・ホーン @ Billboard Live TOKYO - pic by Masanori Narusepic by Masanori Naruse

サマーソニックで来日したトレヴァー・ホーンの単独公演。1日2回公演で2日間の計4回公演のうち、2日目の第一部を見た。

80年代にロックを聴いていた人なら知らぬ者はいない名プロデューサーであり、コンポーザーであり、アレンジャーであり、ミュージシャンである。バグルスを皮切りにイエスを経てプロデューサーに本格転進し、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、アート・オブ・ノイズ、グレイス・ジョーンズなどを手がけ、時代の先端を行く売れっ子プロデューサーとして一世を風靡し、90年代以降もシール、t.A.T.u.、リアン・ライムスといったアーティストを世に送り出し、今年になって日本のアニメ作品『THE REFLECTION』の音楽を手がけ、同名サントラ盤を初の自身名義でリリースするなど、当年68歳にして今なお第一線のアーティストなのだ。

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わかりきっているようなトレヴァーの経歴を今更ながらおさらいしたのはほかでもない。まさに今回のショウが、彼の長いキャリアを、自身の歌や演奏によって辿っていくような内容だったからだ。トレヴァー自身が当時の制作背景やエピソードなどを語りつつ、前掲したようなアーティストの代表的ヒット曲を次々と惜しげもなくプレイしていくのだから、楽しくならないわけがない。しかもバンドはトレヴァーと付き合いの長い歴戦の腕利きを集めた実力者集団。余裕すら感じるプレイで安定感・安心感は抜群だ。時代ごとに施された様々なエレクトロニックな装飾が控えめになり、フィジカルなバンド・サウンドが強調されることで、楽曲の普遍性がさらに浮き彫りになる。

歌はトレヴァー自身だったり、2人いたコーラスの女性だったり、ギター/キーボード兼任の男性ボーカリストだったりが担当する。この男性ボーカリストが声もよく歌も巧くて、イエスの“ロンリー・ハート”やシールの“Kiss from A Rose”みたいな難曲も見事に歌いこなす実力の持ち主。誰かと思ったら、The 1975のライブやCDでサポート・ギター/キーボードを担当するジェイミー・スクワイヤーだった。トレヴァーのバンドには2015年ぐらいから参加しているようだが、ボーカリストとしてこれほどの実力者なら、それこそトレヴァーをプロデューサーにしてシンガー・デビューすればけっこう話題になるのでは……と思ったり。

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そしてトレヴァー・ホーン・バンドにはもう1人、大物がいる。それが元10CC/ゴドレイ&クレームのロル・クレームだ。トレヴァーがゴドレイ&クレームのシングル『クライ』をプロデュースして以来の付き合いで、共に「プロデューサーズ」というバンドをやる仲間であり、この日もステージ上で仲良しぶりを見せてつけていた。その『クライ』をクレーム自身が歌う場面も。10CCの“Rubber Bullets”もクレームの歌で披露していたし、サマソニなどでは“I'm Not in Love”もプレイしていたようだ。

楽しいヒットパレードも終わりが近づき、最新作『THE REFLECTION』収録曲が2曲続けてプレイされたが、それまでの回顧モード(ショウの性格上、それは当然でもある)が一気に吹き飛び、現役バリバリのプロデューサー/アーティストとしてのトレヴァーが現れたのである。実はこの日のライブで一番の見せ場はここであったし、トレヴァーが決してアーティストとして枯れた存在ではないということが確認できたのが、この日の最大の収穫だったと思う。

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そして最後はフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの“Relax”で盛り上がって幕。1時間半に満たない演奏時間はいかにも短かった。ぜひもっと大きなハコで再度の来日公演をお願いしたい。(小野島大)
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