MONOEYES/新木場スタジオコースト

MONOEYES/新木場スタジオコースト - All photo by Viola Kam (V'z Twinkle)All photo by Viola Kam (V'z Twinkle)
「ここで、人生の打ち上げをしよう。きっと明日からまた頑張っちゃうじゃん、見えないとこで歯くいしばって、良い事をしても言わないような奴らはさ。今まで戦ってこれたことの、打ち上げをしよう」。フルハウスの会場は既に熱気と湿気でムンムン。ライブの後半に向かおうというとき、細美武士(Vo・G)はそんなふうに告げていた。7月から全29公演のスケジュール(さらにその間には、各地夏フェスやイベント出演も)で繰り広げられてきた「Dim The Lights Tour 2017」の終盤戦、新木場スタジオコーストの2日目である。

MONOEYES/新木場スタジオコースト
ツアー日程は、福島・いわき(10/17)、沖縄・那覇(10/21)の2公演を残しているので詳細なレポートは控えるけれども、まず驚かされたのはライブの熱狂の「質」であった。スリリングな爆音とともに届けられるキャッチーなグッドメロディは、MONOEYESのデビューイヤーとなった2015年のうちに、瞬く間に多くのリスナーに浸透して「ライブという特別な場所」の意味を共有させた。新作『Dim The Lights』は、寄り添って語らうような、より濃密なコミュニケーションがバンドサウンドとして練り上げられた作風であり、レコード作品としてもどっしりとした聴き応えを感じさせていた。

MONOEYES/新木場スタジオコースト
序盤のうちに“My Instant Song”が届けられてしまうというセットリストの構成は、アルバム2枚分の楽曲群が揃ったからこそだ。そんな「量」もさることながら、熱狂の「質」の部分でショウを成長させること。この点で、ツアーを通して鍛え上げられてきた楽曲たちは、驚くべき成果を挙げていた。一瀬正和(Dr)のビートは前のめり感を帯びて前線メンバーを突き飛ばすように響き渡り、戸高賢史(G)のギターは感情の輪郭をありありと伝えるように熱く迸る。何よりもMONOEYESはステージ上でばんばか飛び跳ねながらパフォーマンスしているのに、4人の音と声はぐちゃっと潰れることなく、それぞれにくっきりと浮かび上がって有機的に絡み合い続けているのである。

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ほとんど野性に近いプリミティブなロックの興奮を伝えながら、そこにはヒューマンな知性と豊かな音楽性が息づいている。それは以前にも増して、「ライブという特別な場所」の意味を深く理解させるエネルギーを育んでいた。止まらない手拍子とシンガロングはその揺るぎない証拠だし、“Roxette”の突き抜けるようなフックを書き上げて歌うスコット・マーフィー(B・Cho)にしても、「曲に思い入れがありすぎて、おれ一瀬さんとレコーディング中に大喧嘩したからね」と語っていたトディにしても、それぞれに「ライブという特別な場所」に携わるための熱い姿勢を剥き出しにしている。

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細美が「来年は曲書きません。ツアーはやるよ」と宣言したとき、ひとりのオーディエンスが「気が向いたら書いて!」と言葉を投げかけ、「……お前、いい奴だなあ。なんか、今の一言で曲書こうかなって気持ちになってきた」と告げられたくだりは、この夜のひとつのハイライトだったろう。より濃密なコミュニケーション。未来を生み出す化学反応。まさに、『Dim The Lights』のサウンドを通してMONOEYESが伝えようとしたテーマが、オーディエンスと共有され、そこにライブの1シーンとして現れていたのである。

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スコットは、「ツアーでこんなに激しく動いたら、痩せると思うでしょ。全然変わらない。行く先々で美味しいものを食べちゃうでしょ。日本は美味しいものがあるからしょうがない。みーちゃんが筋トレして、トディが真面目にギターの練習して、一瀬が変なヨガみたいのして、僕はそれを見ながら1人でお菓子食べてる」と笑いを誘っていた。本当に、楽しいヴァイブが途切れない夜だ。“Get Up”と双璧を成す、どこまでもロマンチックな友愛のナンバー“Two Little Fishes”では、TOSHI-LOW(BRAHMAN/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)がステージに呼び込まれ、トディのマイクでハーモニーコーラスを歌い上げるのだった。

MONOEYES/新木場スタジオコースト
汗と笑顔にまみれながら、そこには一人一人と向き合って深く対話するような時間があった。MONOEYESはこれからも、こんなふうにライブ会場をひとつひとつ、特別な場所にしていくのだろう。そう確信するステージであった。(小池宏和)

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