ONE OK ROCK/ターミナル 5(アメリカ・ニューヨーク)

ONE OK ROCK/ターミナル 5(アメリカ・ニューヨーク) - photo by Julenphotophoto by Julenphoto
最新作『Ambitions』が、なんとアメリカのiTunesロックチャートで1位を獲得、総合チャートでも4位を獲得する瞬間があったという絶好調な出だしを飾っているONE OK ROCK。グッド・シャーロットからザ・ユーズド、フォール・アウト・ボーイなどそうそうたるバンドが次々に発売告知の応援ツイートをするほど愛されている彼らだが、そんな大注目の中、2017年1月15日にニューヨークで北米ツアーを開始した! それが、感動的だったとしか言いようのない素晴らしいライブだった。アメリカのロックシーンの未来を拓く……とまで先走ったことを言いたくなるような内容だったのだ。

ツアー初日。日曜日の夜だし、気温は0度だし、一体どんなライブになるのかと会場のターミナル5に行ってみたら、まず見たこともない長蛇の列になっていてびっくり。日本に比べたら3000人という会場は小さい。とは言え、ソールドアウトだし、ようやく中に入ったら物販にも多くの人が並んでいた! 観客の割合も、NY在住と思われる日本人ももちろんいたが、8〜9割方が地元アメリカ人だった。彼らは日本のバンドとしては頻繁にアメリカにやって来ているので、本当に実力でひとりひとりのファンを獲得していったように思う。しかも、恐らくファイヴ・セカンズ・オブ・サマーのツアーで彼らを知ったであろうかわいい女子や、普通のアメリカのパンクキッズ、ロックキッズもたくさんいた。彼らを観て気づいたのは、そう言えば、ここ最近アメリカで、新しいエキサイティングなロックバンドって皆無に等しいということ。つまり、ONE OK ROCKがロックキッズの居場所をアメリカで作ってくれていると思ったのだ。グッド・シャーロットなどがツイートしているのもだからかと早速納得できた。彼らは本当に今のアメリカ、ロックシーンの期待の星と言える存在なのだ。

そんな熱気の中、ONE OK ROCKが登場。この日、終始流暢な英語でMCをしていたTaka(Vo)が英語で「おまえら準備はいいか?」と言うと早速大熱狂。「レッツ・メイク・サム・ノイズ!」の後「レッツゴー!」というかけ声からライブはスタート! アメリカのレーベルであるFueled By RamenのYouTubeサイトで10月に公開されて以来なんと1000万回以上試聴されている“Taking Off”では早速《I know I know》が大合唱となっていた。アメリカのロックシーンの流れを組むような強靭なフックがありながらも、曲で最大のハイライトとなっているのは、Takaの非常にエモーショナルな高音のボーカル。そのあまりに表現力が豊かでかつ透き通るようなボーカルが、これまでのロックになかったような、「美しさ」をもたらし、そのしなやかさこそが、新たな自由を獲得していくように響き渡った。この曲こそ、早速アメリカにおいてもロックシーンを先に進めるような未来を象徴しているように思えた。

テンポを上げ、強靭なグルーヴのギターに始まる“Take me to the top”では、なんとハプニングが。Ryotaと(B)Toru(G)がTomoya(Dr)の前に結集してグルーヴのある前奏をかき鳴らしたところで、Takaが「大丈夫?」と言って、演奏をすぐに止めたのだ。一体何が起きたのかと思いきや、観客が盛り上がりすぎて、フロアの中程がカオス状態になっていたようだ。観客に間を空けるようにお願いし、仕切り直しとなった。アメリカの観客は、どんなモッシュでも、何となくのルールをわきまえているので、止めなくてはいけない事態にまでなるのは本当に珍しい。

ライブは、終始、前奏が鳴り響くとともに「キャーーー!!」という歓声が上がり、“Cry out”始め「オーオーオー」の大合唱も何度もあった。アメリカのファンにとって特別だったのは、5SOSのツアーでも披露されていた“Hard to Love”が演奏されたことだろう。Takaはこの曲はアメリカ盤にしか収録されていないと紹介していたから。前半アコギで歌いあまりにエモーショナルな高音を響かせたので、会場からは自然に手拍子が起きていた。そのほか、新作の収録曲や、これまでの楽曲が次々と披露され、フロアは何度もカオス的な盛り上がりを見せた。アンコールでTakaは、「終わる前からもう寂しいよ。絶対今年中にまたアメリカに来るから、サヨナラは言わない。また会おう!」と語り、明るくポップなサウンドでライブを締めくくった。

彼らのNYでのライブを観るのは3回目だが、来る度にバンドはツアーで何かを吸収し成長しているし、観客も自然に拡大しているのでいつも感動する。前回、5SOSのツアー参加時にアメリカの成功の証と言えるマディソン・スクエア・ガーデンのステージに立った時も、彼らは怖気づくこともなく、気負いすぎることもなく、まるで「始めからここに立つつもりだった」と言わんばかりのライブを堂々とやってのけた。今回、「野望」と掲げられた新作を作った彼らは、その道をひた走るためにそこからさらに壮大に表現力、エモーションを広げ、バンドとして成長を遂げて、単独でマディソン・スクエア・ガーデンに立つ日に向かって真っすぐに才能を伸ばしたように思えた。この日のライブからは、今アメリカのロックシーンの延長線上に立つ彼らの前に、ここから何でも始まるという可能性とポジティビティしか見えてこないこれ以上ない最高のツアー初日だった。(中村明美)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする