WRONG SCALE LAST LIVE @ 渋谷O-EAST

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WRONG SCALE LAST LIVE @ 渋谷O-EAST - the band apartthe band apart
WRONG SCALE LAST LIVE @ 渋谷O-EAST - TOYTRAPTOYTRAP
見事なラスト・ライブだった。ロック・バンドというひとつの生命の終焉に向き合うときには、本当にさまざまな、幾つもの種類の感情が渦巻いてなかなか言葉で言い表すことが難しいのだけれど、今回のWRONG SCALEの最後のステージを観て、まず率直に抱いたのは「見事だ」という思いであった。ちょっと乾いた言葉に見えてしまうだろうか?でも、それは真に感動的なものだったのだ。

そもそも、今回催されたイベントそれ自体が「WRONG SCALEのラスト・ライブ」を看板に掲げていない。出演者はステージに登場した順にTOYTRAP、the band apart、そしてWRONG SCALEの3マン。日程としては、彼ら三者が所属するレーベル、K-PLANの代表氏の誕生日であり、しかも入場は完全無料招待制(抽選)という、つまり何がどうスペシャルで、喜ぶべきなのか腹を括るべきなのか悲しむべきなのか祝うべきなのか楽しむべきなのか、それらすべてを同時にこなすべきなのかという、どうにも厄介で忙しい内容のイベントになってしまっていたのである。でも少しだけ勘繰ってみると、ウェブ上の公式ダイアリーで「解散の理由は特にありません」「解散ライブという形は残さず、気のおけない仲間と楽しい1日が過ごせたらと思っています」と発表していたWRONG SCALE側の想いを汲んだ結果、一面的な湿っぽさを回避しようとしてこういう性格のイベントになったのではないか、とも考えてしまう。月曜日にも関わらず、会場はフロア後方の扉開閉に支障をきたすほどの超満員。見届ける側としては尚更、「最期のWRONG SCALE」を意識せざるを得ないというわけだ。

トップ・バッターのTOYTRAPは、エネルギッシュなメロディック・パンク/エモ路線の演奏でスタート・ダッシュを見せてくれた。青く高い空に吹き抜ける風の如し木村の歌声、そしてそんな風景の中に突然雷鳴を轟かせてしまうギター・ソロ。ベーシストの川島は飛び回し蹴りのような激しいアクションで観る者を駆り立てながらも時折豊かなハーモニーを歌いこなし、ドラマーの伊藤はファストなパンク・ビートで2人を支える。耳馴染みがあるようで意外性も忍ばせた、また剛胆なようで繊細なショウを披露していた。更に彼らはこの無料ライブで、自身の2曲入りCDまで配布していたのだった。

続いてはthe band apart。メンバー自らのサウンド・チェックもそこそこに、いきなり“FUEL”から演奏をスタートさせる。普段は盤石で、涼しい顔をして仰天のアンサンブルを聴かせるバンアパだが、今回は心なしかエモーションが前のめりになった演奏になっている気がする。“Take a shit”や“I love you Wasted Junks & Greens”での混沌としたエネルギーの渦は、今にもあてど無く弾けてしまいそうな緊張に満ち満ちていた。原が中学生時代からの後のWRONG SCALE(のドラマー楠)との縁を語ったのち、「こんなん葬式ですよ。バンドが死ぬんです。俺の友達の葬式にこんなに集まってくれて、どうもありがとう」と続けるものだから、不意を突かれてグッときてしまった。そして最後に演奏されるこの美しい曲は……ピノキオの“星に願いを”だ。なんて優しいメロディなんだろう。豊かなハーモニーを聴かせ終えるや否や、荒井は飛ぶようにステージ袖に走り去る。木暮はシンバルをスタンドごと振り回してクラッシュさせていた。フロアは大喜びで囃し立てる人と呆気に取られた人が半々といった様子。やはり今夜は普通の夜ではない。特別な夜だ。

そしていよいよ、オープニングSEと大歓声の中にWRONG SCALEが登場する。晴れ晴れとした表情で手を振り登場した4人は、勢い良く“trace of grief”を鳴らし始める。大西→野田と連なる流れるようなボーカル・リレー。軽やかなギター・カッティングとフロアを沸かすディスコ・ビート。決して激しく感情的になるわけでも、またそれを無理に押さえつけてフラットであろうとするわけでもなく、なんとも「快調」な演奏が“tiny”でのハーモニー波状攻撃、“to the sea”のエモーショナル・メロディと続いた。こんな日に似つかわしくないと言えばまったく似つかわしくないほどに、だ。楠が挨拶を挟み込む。「10年間、いろんな人に支えてもらって、ありがとうの気持ちを込めてやりたいと思います」。そして野田は「今日は社長の誕生日です。おめでとうー!」と会場をリードするように言葉を投げた。あくまでもそういう姿勢を崩さないつもりか。……いや。その後の“G.F.S”でふと気付いたのだが、菊川だけは何かしらの想いを必死で堪えるように、顔全体を紅潮させて、それでも全力でプレイに向かおうとする姿が見て取れた。やはり、一筋縄ではいかない感情の形が、彼らの10年間に、そしてこの会場の至る所に、存在している。とても一言で表現できる類いのものではない。それを承知の上で、彼らはステージ上で何かを形作ろうとしている。

感情のうねりは、他でもない彼らのサウンドの、そしてめくるめくボーカル・リレーの言葉の中にこそあるのだ。或いは“The day changes to the rainbow”の、オーディエンスにまで伝播した豊かなコーラスの中に。WRONG SCALEはラスト・ライブという情緒的な条件に甘えることなく、どこまでもプロフェッショナルに、彼らの楽曲作品そのものに込められた感情を描き出そうとしていた。ミディアム・テンポの美メロから沸々と加熱してゆく“self-confidence”も、変則的ビートから急展開して堰を切ったように感情が迸る“Calling”も、WRONG SCALEの表現は様々な方向に飛び交う感情をそのまま描いたものではなくて、四散してしまいそうな感情を音楽の力で収斂させてエネルギーに転換するアートだ。彼らはこのステージ上で、それを完遂しようとしている。

まったく非の打ち所のないアンサンブル/ハーモニーが駆け抜けた“melt down”の後、野田は言った。「これから世の中に出て、もしかしたら弾かれてしまうことがあるかも知れない。こんな風に送り出してもらえると、励みになります。俺らを、なんとかしてやってください。さっき(the band apartの)荒井が〈前フリです〉とか言って昔の曲ばっかやってたけど、泣かないよ俺。ありがとうございました」。それはまるで、WRONG SCALEの楽曲の力をそのまま説明するような言葉であった。アンコールは2曲、ラストは万感の“p.s.moved out”。ベストの形で成すべきことを成して自らピリオドを打った彼らの姿は、本当に見事だった。フロアに沸き立つような拍手が広がり、いつまでも鳴り止むことがなかった。(小池宏和)

<TOYTRAP>
1.Once, Now and Forever
2.Will My Wish Come True?
3.There\'s No Reason
4.not enough
5.RELOAD
6.Take a trip

<the band apart>
1.FUEL
2.cerastone song
3.fool proof
4.Take a shit
5.Can\'t remember
6.coral reef
7.I Love You Wasted Junks & Greens
8.星に願いを

<WRONG SCALE>
1.trace of grief
2.tiny
3.to the sea
4.G.F.S
5.Things as they are -date 3.12-
6.The day rain changes to the rainbow
7.Self-confidence
8.Always want to be loved
9.calling
10.melt down

En1.1 End of pain
En2.1 p.s moved out
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