BRAHMAN/日本武道館

BRAHMAN/日本武道館 - Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)


●セットリスト
1. THE ONLY WAY
2. 雷同
3. 賽の河原
4. BASIS
5. SEE OFF
6. BEYOND THE MOUNTAIN
7. DEEP
8. SPECULATION
9. 其限
10. 怒涛の彼方
11. AFTER-SENSATION
12. 終夜
13. ナミノウタゲ
14. A WHITE DEEP MORNING
15. 守破離
16. ラストダンス
17. 不倶戴天
18. ARRIVAL TIME
19. ANSWER FOR...
20. 警醒
21. 今夜
22. 満月の夕
23. 鼎の問
24. FOR ONE'S LIFE
25. 真善美


全てがクライマックスのようにさえ感じた全25曲、アンコールなしの一発勝負。思い返してみれば、最初から最後まで、ステージもフロアもみんな頭のネジが何本もぶっ飛んだみたいに幸せそうな顔をしていた。それも、気持ち良くて仕方がないとでも言うように、手放しに楽しそうな顔なのだ。

BRAHMAN/日本武道館 - Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)
「八面玲瓏」というタイトルが付けられた、BRAHMAN初の日本武道館単独ライブ。19時の定刻を少し過ぎた頃、客電が落ち、真っ暗に。登場SEであるブルガリア民謡が流れ、日の丸が吊るされている天井には「2月9日 日本武道館/八面玲瓏/BRAHMAN」の文字が映し出される。どよめく会場。そして、TOSHI-LOW(Vo)、KOHKI(G)、MAKOTO(B)、RONZI(Dr)が四方から姿を見せると、どよめきは響きを増す。フロアのど真ん中にそびえ立つ八角形のステージで、最初に音を鳴らしたのはKOHKIだった。始まったのは“THE ONLY WAY”。そのまま強烈な爆音を“雷同”へと変化させると、TOSHI-LOWが口を開いた。「上も下もねぇ。右も左もねぇ。前も後ろもねぇ。恨みもわだかまりもねぇ。過去も未来もねぇ。あるのはただこの瞬間、ありのままの俺たちの姿。2月9日、日本武道館。さぁ闘おうぜ、俺たちBRAHMAN始めます!」

BRAHMAN/日本武道館 - Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)
開戦宣言から間髪入れずに“賽の河原”と“BASIS”を投下。そのまま“SEE OFF”から“其限”まで、文字通りの必殺曲を一気に連発していく。ゲストアーティスト1組目として、NARGO、北原雅彦、GAMO、谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)が現れて繰り広げられるのは、ゴリゴリのパンクサウンドに漢臭いブラス音が高密度で織りなされる“怒涛の彼方”。 最新アルバム『梵唄 -bonbai-』より、新曲の“AFTER-SENSATION”を挟み、“ナミノウタゲ”ではゲストコーラスとしてハナレグミがオンステージした。

BRAHMAN/日本武道館 - Photo by Tsukasa Miyoshi (Showcase)Photo by Tsukasa Miyoshi (Showcase)
“守破離”で呼び込まれたKO(SLANG)は、一音一音、一語一語をオーディエンスへ投げつけるかのごとく、ステージを練り歩く。ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)が“ラストダンス”で放つ怒りは、叫びを超えた絶唱だ。その怒りを着火剤に、“不倶戴天”へと音を繋げた4人。“ARRIVAL TIME”でのラスト、TOSHI-LOWはマイクスタンドに手をかけ、しゃがみこんだ。それと同時に、これまでノンストップで振り回されていたマイクスタンドは、綺麗に90度に折れ曲がる。そのおかげか、“ANSWER FOR...”で心なし身軽になった彼は、静と動のコントラストを激しく示すのだった。続く“警醒”で、スタンドの奥まで突き刺してしまいそうな鋭い目つきになり、長髪を大きく乱すKOHKI、MAKOTO、RONZI。会場を埋め尽くしていく音には、喜怒哀楽、それ以上の魂が込められている。

BRAHMAN/日本武道館 - Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)
普段のライブではTOSHI-LOWはフロアに飛び込むが、この日は飛び込まなかった。“警醒”の演奏後、曲を終えると「今日は何かと制約が多い」と笑う。「でも俺たちがここでやれるってことは、そうやってちゃんと守ってきた人たちがいて。物足りねぇ人もいるかもしれないけど、自分たちの代で終わるわけにはいかねぇんだよ」、そう言って、この日本武道館という場所にロックバンドが立ってきたというバトンを渡すための道程であろう、肉体の制限すらも心の底から楽しんでいるように微笑んだ。“今夜”で細美武士the HIATUSMONOEYES)は、一人ひとりと目を合わすようにして会場をぐるりと見回し、マイクをオーディエンスへと向ける。この曲の中で出てくる《あの街》という言葉は、TOSHI-LOWと細美にとっては東北のことを指すのだと、ふたりが抱擁する姿に思わされる。

BRAHMAN/日本武道館 - Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)
23年前に中川敬ソウル・フラワー・ユニオン)と山口洋HEATWAVE)が共作した、“満月の夕”。この曲のなかで、中川は阪神・淡路大震災の被災地の中から見た光景を、山口は外から見た光景を、それぞれ歌った。そして東日本大震災発生後にTOSHI-LOWはこの曲を東北で歌い、バンドでも演奏するようになった。しかし、彼が歌うのはどちらのバージョンでもない。このふたつの歌詞を混在させて歌うのだ。「23年前の阪神・淡路大震災のとき、何もできねぇと言われたミュージシャンが被災地で種を蒔きました。そして17年後、その種は東北で芽を出しました。次はどこへ行くんだろう。大きな木になってほしい。だとするならば、この曲を歌い継いでいかなければならない」とTOSHI-LOW。中川の三味線、山口のギター、うつみようこの囃子、BRAHMAN。この4つが合わさって鳴るのは、美しい再生の音だ。

2011年3月11日の東日本大震災からBRAHMANは変わった。いや、変わったというより、元々持っていた側面が顕著に現れたのだ。考えることまでもが奪われた日常で口を固く閉ざした人間が多くいるなか、彼らは原発や戦争、政治、そして平和のことを語ってきた。この日だってそうだ。誰かから「どうでもいい」と思われていることまで全てを背負う人は、信じられないほどかっこよくて、信じられないほど優しい。“鼎の問”で見せた、4人の表情がその証拠だろう。

BRAHMAN/日本武道館 - Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)
“FOR ONE'S LIFE”を演奏し終えると、この日何度目かの「ありがとう」を口にし、“真善美”のイントロでTOSHI-LOWは八方向に向かって頭を下げた。終盤、曲はまだ終わっていないというのに、KOHKIとMAKOTOは楽器を置き、RONZIは静かに立ち上がって、ステージを後にする。一人残ったTOSHI-LOWは《さあ 幕が開くとは/終わりが来ることだ/一度きりの意味を/お前が問う番だ》と歌い切ると、マイクを落とした。ゴンッ、という鈍い音が鳴り響き、暗転。かつて見たことのない終幕。そして、それに相反するような穏やかな拍手が会場に満ちる。ライブタイトルの「八面玲瓏」という言葉は「どこから見ても透き通っていて、曇りのないさま」、「心中にわだかまりがなく、清らかに澄みきっているさま」を意味する。まさにその言葉の通りのライブ。彼らが今まで幾度となく言ってきたように、明日が本当にやってくるかは分からない。でも、こんな夜があるから「明日も生きていたい」、そう思えるのだ。(林なな)
公式SNSアカウントをフォローする
フォローする