90年代グラスゴーが生んだ孤高のユニット、アラブ・ストラップ。その「サウンド担当」ことマルコム・ミドルトンが、アラブ・ストラップの解散ツアー以来ぶり、ソロとしては初となる来日公演を行なった。昨年、英国でクリスマスのナンバー1シングルを予想するリアリティ・ショウでの賭けに“ウィ・アー・オール・ゴーイング・トゥ・ダイ”がノミネート、ブログとBBCレディオ1のDJの熱い支持を得て、予想外の展開を見せ、最終的には4位を獲得した。だからと言うわけではないが、マルコムの楽曲は、それだけ多くのリスナーに届きうる「ポップさ」があるのも事実。今日のライブでは、リズムマシーンやシンセは登場せず、マルコムの弾き語りとなり、サウンドの「ポップさ」よりも、「唄」そのものをじっくり聴かせる場となったのだった。
無機質なエレクトロニック・サウンドを重ねても、エモーションはとめどなく溢れてくる、というあの醍醐味を味わいたいという気持ちはあったものの、終わってみれば、弾き語りも貴重な機会だったな、と自然に思える。なんといっても素晴らしかったのがアンコール最後の“デヴィル&ジ・エンジェル”。悪魔と天使が代わる代わるマルコムに話しかける、というストーリーの楽曲だ。「あなたはなにも達成しないでしょう、あなたは何にも秀でていない、あなたの唄は最悪です」――という「悪魔」の言葉は、アラブ・ストラップと同じ自虐とユーモアを醸し出すが、聴き手に温かな手を差し出すような、切ない「優しさ」があるのだ。
全うなシンガー・ソングライターとは決していい難いが、こういう歌は消費されない。だからいいのだ。かつての相方・エイダンのソロでの来日も、実現してほしい。(羽鳥麻美)
マルコム・ミドルトン @ 渋谷O-NEST
2008.05.18
