【来日レポ】マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン @ 豊洲PIT公演

【来日レポ】マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン @ 豊洲PIT公演

5年ぶりの来日公演。金曜深夜のソニックマニアでも出演が決まっているが、会場は完全ソールドアウトの超満員だった。

僕がマイブラを見るのは2013年のフジロック以来。その時は夕方5時半という中途半端な登場時間に加え、何かの間違いじゃないかと思うぐらい音が小さく、おまけに演奏もどこか投げやりでやっつけ気味。なんとも中途半端で、不完全燃焼だった。今回は音が拡散せず照明や映像も完璧にコントロールできる屋内。前回のようなことにはならないだろうと思っていたが、案の定彼らの美点が存分に発揮された見事なライブだった。

定刻を15分ほど遅れて始まったライブは、思いのほか音は大きくなく、音圧も感じなかった(あくまでもマイブラ基準では)。耳栓が配られたライブだったが、個人的に必要性はまったく感じなかった。最初は、高域がモコモコして中低域のアタックばかりが強く、かなり聞きづらかったが、徐々に高域も出てバランスが良くなってくると、いよいよマイブラの本領発揮だ。轟音ノイズが全身を揺さぶり、微かに漂う甘美なメロディが麻薬のように脳内を巡る。鼓膜の奥が痒くなってくるような(だが決してうるさくない)爆音が心地よい。曲によってはサイケデリックな浮遊感や幻惑感というよりは、予想外に激しく攻撃的な演奏だったのが今回印象的で、特にリズム・セクションの荒々しさはハードコアさながら。決して巧いわけではなく、時々演奏のタイミングが合わずやり直したりしていたが、それでも全体の流れは損なわれず、唯一無二のマイブラのオリジナルな世界がそこにあったのである。

客席から声がかかり、笑いが起こったり、メンバーがそれに答えたりする場面も。以前のライブはもっと張り詰めた緊張感があって、観客の側も息を呑んで見守っていたような記憶があるが、今回はかなりリラックスしたムードが漂っている。それは観客の態度が「伝説のバンドをようやく見られる」という肩肘張ったものから、もっとフラットに、エンタテインメントとしての「マイブラらしさ」のようなものを期待するようになったからだろう。彼らはそれにプロフェッショナルとして完璧に応えてみせた。そこに「新しさ」や「驚き」はなかったが、彼らにEDMやフォーキーな歌ものや今どきのエレクトロニックR&Bなど誰も期待していないはずである。

聞き覚えのない新曲も2曲演奏されたが(近々リリースの噂もあるニュー・アルバムの曲か?)、定番・鉄板とも言える名曲ばかりの流れの中でまったく違和感がなかった。つまりマイブラはどこまでもマイブラだった。22年ぶりのアルバム(そして今のところ最新作)『m b v』でもそれは同様だった。22年の葛藤と煩悶の末にそうならざるをえなかった「業」のようなものなのか、それともある種の開き直りや割り切りの結果なのか、それはわからない。だが彼らがシューゲイザーのオリジネイターであり象徴であることに違いはない。それは他の誰が望んでも決して得られない、彼らだけの称号なのだ。彼らはその称号に相応しいパフォーマンスを、観客の期待通りに手堅く提示して見せた。それは紛れもなくプロの仕事である。

終曲“You Made Me Realise”の後半のお馴染みホロコースト・ノイズ大会は9分程度。最短でも20分ぐらい続く超絶体験を期待していたので意外とあっさり終わったという印象だったが、やりすぎず、全体にコンパクトなセットリストにすることで、「マイブラらしさ」を誰にでも了解可能な形でわかりやすく提示してみせたのだろう。そういう意味でも納得・満足のライブだった。(小野島大)

<SETLIST>
I Only Said
When You Sleep
New You
新曲
You Never Should
Honey Power
新曲
Cigarette In Your Bed
Only Tomorrow
Only Shallow
What You Want
Nothing Much To Lose
Who Sees You
To Here Knows When
Slow
Soon
Wonder 2
Feed Me With Your Kiss
You Made Me Realise

※ライブ写真は後日公開予定です。
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