ドロップキック・マーフィーズ @ duo music exchange

“レッツ・ゴー・マーフィーズ!”
お馴染みのマーフィーズ・コールだが、オープニングを務めたオール・ガールズ・パンク・バンドの秋茜(AKIAKANE)がステージを降りてから、4回も自然に発生していた。それこそが、この日の会場の異常な熱気を一発で物語っていた。昨日はマキシマム ザ ホルモンとの対バンということで、両バンドのファンが入り混じった感じだったけど、本日はマーフィーズ・ファン・オンリー。バンドに対する一途な愛情が会場をいっぱいにしていた。

客電が下がり一際でかいコールが巻き起こる。SEとして流れていたアイリッシュ・トラッドが完全に掻き消されてしまっているのが微笑ましい。そして野郎7人がステージに登場。1曲目は言うまでもなく、マーフィーズのセットには欠かせない定番の“フォー・ボストン”。地元に対する屈託のない愛情を愚直に謳ったこの曲。野球試合の審判の“プレイボール”という掛け声と同じような効果を持ち、そのわかり易いメロディが鳴り響いた瞬間にその場にいた全員の血は一気に沸点に到達。一瞬にして会場はもみくちゃ状態になってしまう。今日の会場のduo music exchangeはご存知のとおりジャミロクワイのJKがプロデュースしたともあって、普段はアーバンでヒップな空気が漂っているのだが、そんなのお構いなしに男臭がプンプンする硬派な曲をマーフィーズは次から次へと演奏。とはいえ、去年リリースされた、ヘルキャットからの移籍後第一弾の通算6枚目『ザ・ミーネスト・オブ・タイムズ』で前から中枢にあったアイリッシュ・トラッドのテイストをさらに濃厚に打ち出したマーフィーズだけに、そんな作品からのナンバーを従来の人気チューンと上手い具合に織り交ぜたセットが実に表情豊かだったのが印象深い。怒涛のハードコアで“男の厳しさ”を表せば、哀愁漂うバッグパイプの音色が“男の悲しみ”を表現。そしてリーダーのケン・ケイシー(B)をはじめ、バンドが客に対する温かいアティチュードは常に“男の優しさ”に漲っている。

MCで「君らの国の優秀な選手を貸してくれてありがとう。おかげでワールド・シリーズに勝てたよ!」と愛するボストン・レッドソックスで活躍する松坂&岡島投手を称えては、そのままレッド・ソックスの公式応援歌になった“テッシー”を演奏し、“ザ・スパイシー・マクハッギス・ジグ”をやれば、女子のみをステージにあげる。もちろん、一旦ステージからバンドが引き下がると、開始前よりはるかにラウドな“レッツ・ゴー・マーフィーズ”コールが沸き起こる。定番だらけのセットだが、逆にそれが気持ちよく、オーディエンスもここぞとばかり、それらの定番に応じてダイブ、モッシュ、片手にビールを掲げて、もう片手で相棒の肩を組んでシンガロングという定番のリアクションを一段と加速させる。最後は男も女も若造も中年も(マジで白髪の人がいた!)ステージはエヴリバディ・ウェルカム状態。驚くことに曲が終わってから、客を残したまま7人の野郎どもはステージを退散したのだが、それはまさに“主役は君たちだよ”というマーフィーズからのメッセージ。本当に美しい光景だった。そして、客電が点き、場内アナウンスが流れているというのに、再び会場は“レッツ・ゴー・マーフィーズ”という掛け声に包まれた。(内田亮)
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