まふまふ/メットライフドーム

まふまふ/メットライフドーム - Photos by加藤千絵[ CAPS ]/ 小松陽祐[ ODD JOB ] / 新澤和久 / 堀卓朗[ ELENORE ]Photos by加藤千絵[ CAPS ]/ 小松陽祐[ ODD JOB ] / 新澤和久 / 堀卓朗[ ELENORE ]

●セットリスト
01.輪廻転生
02.ベルセルク
03.立ち入り禁止
04.ジグソーパズル
05.君色々移り
06.サクリファイス
07.恋と微炭酸ソーダ
08.拝啓、桜舞い散るこの日に
09.朧月
10.夢花火~鏡花水月(Acoustic ver.)
11.ナイティナイト
12.廃墟の国のアリス
13.曼珠沙華
14.とおせんぼう
15.彗星列車のベルが鳴る
16.水彩銀河のクロニクル
17.忍びのすゝめ
18.夢のまた夢

(アンコール)
EN01.すーぱーぬこになれんかった
EN02.眠れる森のシンデレラ
EN03.それは恋の終わり
EN04.すーぱーぬこになりたい


近年、マルチクリエイターと呼ばれる人物が増えてきた。その影響もあり、カメラマンならば「動画は撮れないの?」と訊かれ、ライターならば「インタビューをしているのだからトークイベントの司会進行もできませんか?」や「音楽をたくさん知っているのだから、DJもできるでしょ?」、「○○をテーマにしたプレイリストを作ってよ」と言われることもしばしば。ここ数年その傾向が顕著で、それは裏を返すと専門職以外のこともこなせるのが当たり前、という認識が根付いてきているとも言い換えられる。

まふまふという人物は、その「当たり前」の概念を作った、マルチクリエイターの先駆者のなかのひとりと言っていい。2010年に「歌ってみた」を初投稿した彼は、歌唱だけにとどまらず、作詞、作曲、編曲、エンジニアリングまで行い、曲中の多くの楽器を演奏するなど、音楽はもちろん音楽以外にもインターネットを駆使してクリエイティブな活動を続けている。その規模は年数を重ねるほど大きくなり、そのなかでもメットライフドームでのワンマンライブは彼のキャリア史上有数のビッグトピックに躍り出たことは間違いない。

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ワンマンの数日前に約2年ぶりのアルバム『神楽色アーティファクト』を秋にリリースすることを発表し、そのライブでは6月にアップしたばかりの楽曲や、7月より放送されるTVアニメ『かつて神だった獣たちへ』のオープニングテーマ、ニューアルバムに収録予定の未発表曲といった新曲を多数披露した。彼にとってこの日はもちろん特別だっただろうが、記念碑という意味合い以上に、これから様々なことが動いていく前兆として機能していたことが、とても頼もしかった。やはりシーンを切り拓いてきたパイオニア。歴史を背負いながらも、つねに前を追いつづける姿勢を崩さない。

序盤は“輪廻転生”や“立ち入り禁止”といったアグレッシブなファストナンバーを畳み掛ける。衝動と脆さを同時に感じさせるハイトーンボイスは、ひたすらに35000人の観客の胸をかきむしった。“ジグソーパズル”ではまっすぐ駆け抜けるエモーショナルな歌声を響かせ、“君色々移り”では甘酸っぱい空気感を作り出す。凄まじい高音を響かせる“サクリファイス”は、ドラキュラ城を彷彿とさせる舞台セットや火の玉が飛び出る特殊効果の世界観とも非常にマッチしていた。

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バンドメンバーによるインスト曲のあと、“恋と微炭酸ソーダ”ではギターボーカルでパフォーマンスし、繊細なタッチの楽曲を集めたゾーンへ。優しく透明感のあるボーカルで、楽曲の世界により命を吹き込んでいく。楽曲のイメージにあったライティングも相まって、楽曲で描かれている世界観に飛び込んだ心持ちだった。“夢花火”と“鏡花水月”はまふまふのボーカルとキーボーディストの2人編成によるアコースティックバージョン。巨大モニターには花火が打ちあがり、出会った感謝と別れが綴られたピアノ伴奏の“ナイティナイト”も含め、彼の持つ感傷性が火傷のようにじっくりと焼け付いた。

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再びバンドメンバーによるインストを挟み“廃墟の国のアリス”をスクリーン演出でパフォーマンス。続いての“曼珠沙華”で着物+下駄姿の彼が現れた。ちょっとしたダンスを交えながら歌っていたかと思いきや、彼の立っていたステージの一角がせり上がり、それだけならよくある装置であるが、じつはなんとそのステージは可動式。そのまま中央ブロックの観客の上を通って中央部に移動した。たしかに中央の花道がないなんてこの会場の規模で珍しいなとは思っていたが、まさかステージが取り外し可能だとは。しばし目が丸くなってしまった。

「やっほー! 真ん中きたぞー!」と笑顔を見せた彼は軽やかなステップを踏みながらセンチメンタルなメロディが印象的な“とおせんぼう”を披露し、After the Rainの楽曲“彗星列車のベルが鳴る”で再びメインステージへと戻っていく。ワルツのリズムの“水彩銀河のクロニクル”では着物の袂を翻しながら歌い、その様子はまるで妖精だ。忍者姿のバックダンサーとともに“忍びのすゝめ”を披露したあと、「すごく大切な曲」と語り“夢のまた夢”で鮮やかに本編を締めくくった。

アンコールでは巨大まふてる風船が登場したかと思いきや、それは風船ではなく気球。ムービングステージに続き、やることの規模がでかい。グッズの猫帽子を被ったまふまふはそこに乗り込み、“すーぱーぬこになれんかった”を歌いながらスタジアムのグラウンドを1周。予想外の展開に会場中が歓喜した。

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最後の曲の前、彼は「少し真面目な話をさせてください」と、胸のうちを語り始める。自分自身の生い立ちと音楽への想い、活動していくなかでの苦悩などを明かし、メットライフドームでのワンマンライブに向けて友人たちが背中を押してくれたことや、ファンへの感謝を告げる彼の目からは、たちまち涙が零れていく。声を詰まらせながら「苦しい想いもしてきて、流す涙も枯れるくらい泣いてきましたが……。もう一度生まれ変わるときがきたら、僕に生まれたいです。ありがとう!」と語る姿はとても真摯で、胸に迫るものがあった。

涙をぬぐいながら「ごめんね! しんみりさせちゃって! 最後は思いっきり笑って帰りたいから、もう1曲付き合ってください」と言い“すーぱーぬこになりたい”を披露。35000人の観客も彼の熱い想いに応えるようにコールやシンガロングに徹する。最後に全員でジャンプすると、銀テープがドーム一帯に噴射され、大団円を迎えた。

まふまふという人物はつねに高い野望を持ち、新しいことにチャレンジしているが、同じくらい過去を忘れずに大事にしている人だとあらためて思った。どの時代に出会った人々も置いていかないライブができるのも、すべての歩みとすべての出会いが今の自分を作っていることを噛みしめているからだと推測する。マルチに活躍する彼はこの先どのようなビジョンを現実にしていくのか。まふまふの革命は続く。(沖さやこ)

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