2005年11月の大阪城ホール&代々木第一体育館でのライブ以来、実に3年半ぶりとなるオアシス来日! 結果的に「ジャパン・ツアー2日目」となった追加公演のこの日のライブは、実に素晴らしいものだった。と同時に、実に不思議なライブだった。リアムのボーカルは徹頭徹尾トップ・ノート(最高音)が目に見えて出てないし、ノエル曲では当たり前のようにリアムはたびたび袖に引っ込んでしまったりするのだが、それらがファンの熱気に水を差すようなことが1mmもない。リアムに限っては何をやらかしてもおかしくない……というオーディエンスの10数年越しの学習効果の賜物、によるところが大きいとは思う。が、それだけでは、リアムもファンも終始上機嫌で、「オアシスはオアシスであるからこそ素晴らしい」的な懐メロ開き直りモードと一線を画すこの日の空気感の説明はつかない。
18:50、リアムの「グッド・イブニング!」の声と同時に、幕張メッセ7・8番ホールの空間にあふれ返る歓声! そして、ステージの背後にセッティングされた巨大ビジョンに映し出されるメンバーの姿。超短髪――というかほぼ坊主頭にカーキのコートで登場したリアムは、ここ最近の精悍なイメージと相俟って、それこそエミネムかどっかの格闘家か?という佇まい。対して、デビューから15年の時間が年輪のように刻まれたノエルの、達観しまくったような表情。腰を屈めて天空を睨んで歌うリアム。視線を足下に落としながら淡々と弾き歌うノエル。会場の空気をゆっくり呼吸するように音を紡ぐゲム、アンディ。そして、前回来日時にドラムを叩いていたザック・スターキーに代わってオアシスに参加したクリス・シャーロック。そのプレイのアグレッシブさとは裏腹に、時折「モタってるのか?」と思わせるくらいギリギリの後ノリ型ドラマーではあるが、その独特のタイム感が大型トレーラー並みの牽引力をもって、新旧取り混ぜたこの日の楽曲群をぐいぐい前へ前へと押し進めていく。
ジャパン・ツアーはまだ序盤戦なので全曲セットリスト掲載は避けるが、ざっくり言えば最新作『ディグ・アウト・ユア・ソウル』と、現時点での最新ベスト盤『ストップ・ザ・クロックス』を2時間弱のアクトの中に盛り込んだような内容。なので、当然“ロックンロール・スター”と“トゥ・ビー・ホエア・ゼアズ・ライフ”が、“ワンダーウォール”と“アイム・アウタ・タイム”が、そして“モーニング・グローリー”と“ショック・オブ・ザ・ライトニング”が……つまり、自らの長いキャリアにおける過去の名曲群(そしてロック・アンセムとして世界中のファンに血肉化された楽曲)と、最新作の楽曲とが凌ぎを削り合うことになる。
当然、最新作のほうがリアクションは薄くはなるのだが、それでも『ディグ・アウト・ユア・ソウル』の楽曲はこれまでのオアシスとは明らかに違うタフでソリッドな魅力を持っていた。特に、ダルでサイケなブルース感をスタジアム級の巨大なサウンドスケープへと導いていった“トゥ・ビー・ホエア・ゼアズ・ライフ”と、磨き上げられたメロディが大輪の花を咲かせたスロウ・ナンバー“アイム・アウタ・タイム”……都市生活の焦燥や倦怠、諦念といった空気感を振り切るような、潔いほどクリアな演奏を見せていた。というか、この日のオアシスは、過去曲でここぞとばかりに沸き返るオーディエンスをも抱き止めながら、あくまで謙虚に「その先」を提示しているようにも見えた。リアムが引っ込んだ状態で披露した“フォーリン・ダウン”で満場の手拍子に加えて思い出したようにダイヴまで起こっていたのは謎だが、ギャラガー兄弟の位置関係まで含めてオアシス自身がオアシスを定義づけようとしているかのような、実にポジティブなモードに満ちたアクトだったことは間違いない。
この後、オアシスは22日:札幌・真駒内セキスイハイムアリーナ、24日&25日:インテックス大阪5号館を回り、28日&29日には再び幕張メッセ(9-11ホール)に戻ってくる。スマッシュの公式サイトによれば、札幌と大阪は若干当日券も出るようだ。あと最後に、この日(20日)のオープニング・アクトで登場した日本の精鋭=QUATTROの健闘にも触れておきたい。前にフィーダーのオープニング・アクトとして赤坂BLITZで観た時には、そのささくれガレージ・ロック全開でぶっ飛ばしていた彼ら5人だが、この日の大きなステージの、しかもあからさまにアウェイのステージで、その音は実に骨太なロックンロールとして響いていたし、たった20分のアクトで外人客からやんややんやと賞賛の声を集めていた。今年の夏フェスで一気に火がつきそうな予感がびしびしする。28日&29日の幕張公演にも登場予定なので、ぜひ今のうちに目撃していただきたい。(高橋智樹)
オアシス @ 幕張メッセ
2009.03.20